ベースの音作りにおいて「太さ」は重要です。しかし、太さについてよくわからない人が多いです。この記事では太さの正体、どうすればバランスのよい太い音を作ることができるのかテキスト+画像+音声で詳しく解説しています。
太いベースサウンドを作りたいけど、上手くできないやっぱり高い専用音源が必要??
なくても太い音を作る方法はあるよ!
太いベースは楽曲安定感を作ります。土台がしっかりとすると聞いてるリスナーも安心して音楽を楽しめます。
「ベースを太くって具体的に何をすればいいの?」と思いますよね。今日は太いベースサウンドを作るための方法について解説します。ポイントは次の3つ
ベースとキックの棲み分け
フレーズの見直し
イコライザーとコンプの正しい知識
これらを理解することで音の太さを実感できるようになります。これ以外にも太い音の作り方は存在しますし、人によってアプローチの方法は異なりますが、私はこの方法でベースの音を意識することで曲の中で埋もれない太くてコシのあるベースサウンドを作ってきたので、DTM初心者の人には参考になると思います。
音の太さとは何か?
音の太さとは基音がしっかりと感じ取れる音です。低い音を「太い音」と形容するのは基音に対しての倍音を感じやすいからと言えます。具体的にはベースの最低音はE1(41.023Hz)ですが、オクターブ上の82Hzをベースの最低音と感じている人も大勢います。
これは基音ではなく倍音を聞き取っているからです。このときベース処理で定番のローカットを100Hzまで入れてしまうと当然E1の基音である音はカットされます(実際ゼロにはなりませんが)これで太い音の定義である「基音+倍音」の音にはなりません。
DTMではこの低音を正しく処理することで太い音が手に入るだけではなく楽曲の印象もメッセージ性も強くなるので、低音の意識をもつことを強くオススメします。
今回はDTMのベース音源での太さについて言及していますが、ベースで宅録し音作りをする人も基本的には同じ考えです。
倍音と基音の関係ってすべての音に言えることですか?
その通り良いところに気がついたね!
何も低い音だけではなく、高い音でも当然基音と倍音の関係をもって太い音と言えます。だから何も低い音=太い音というわけではありません。ただ、低い音の方が倍音を感じやすいため、より低域が認識しやすいことから太い音という表現できます。
ちなみにヒップホップなどで使われるサイン波だけのベースはほぼ基音のみ※(サイン波は倍音をもたないので)だから地をはような太い音と形容されるわけです。
(※実際はエフェクトプラグインなどの影響で倍音が発生してしまうこともあります。)
太いベースサウンドを作るために必要なこと(基礎編)
①超重要「音色決める」
太いベースサウンドはイコライザーやコンプで作るものという感覚があるかもしれませんが、それはあとの話です。まずはお互いがどのような音色にするかという視点が大切です。
ここでは「ベースの太さ」がテーマなので、ベースが目立つような音色にする必要があります。これが究極に重要な答えです。
えっ?たったそれだけ
多くの人は「あとでエフェクトプラグインでなんとでもなる」という意識からか音色決めることが多いのですが、実はどうにもならないことの方が圧倒的に多いです。しかも作業がある程度進んでしまっている状態で違和感を感じたときに遅く、知識が乏しい段階でそこからの解決しようとプラグインを触りまくっても結局何も変わらない。
という経験をした人は多いと思います。
こうならないためにも音色決めは時間をかけてでもやるべきであり、そこがベースの太さにもつながるよ。
つまり、ベースの太さを求める曲なのか、それともキックの太さを求めるなのか?実はここから問いかけることが大切です。
この問いかけがない状態ではイメージする太いベースサウンドにはなりません。単体で聞くとかっこよく聞こえたベース音源であっても、キックと一緒に鳴らしたり、ミックスの中で埋もれたりするのはこのイメージが弱いからだと思ってください。
②アレンジ視点「フレーズを見直す」
ベースの太さを強調するためには、ベースのラインを見えやすく(聞こえやすく)することが大切です。そもそも「この曲のベースは太いなー」と感じるのはその太さを感じられる理由があるからです。
例えばベースがルートを弾いているときは当然ベースの役割は楽曲のボトムを支えるのが主な仕事ですが、フレーズ的に動く場合はそのフレーズが見えるアレンジにする必要があります。
例えば、そこにギターが鳴っていたり、タムがドカドカとなっていたらそのベースのフレーズは他の楽器でかき消されてしまいます。耳で感じにくいベースの領域をイコライザーでハイを上げてアタックを目立たせるなどの方法もありますが、それよりも前に、そのフレーズ等が見えるアレンジになっているのかどうかを見直しましょう。
アレンジの譲り合いの精神から音の太さは生まれる
太いベースサウンドを作るために必要なこと(エフェクトプラグイン編)
上記の内容を守るだけで十分に太いベースサウンドを得ることが可能です。そのうえで、イコライザーやコンプの知識を身につけることで、さらに洗練された音の太さ得ることができます。
ベースサウンドだけで聴いているときにはそれなりに良くても、ドラムや他のパートがのってくると途端に聞こえが悪くなるという経験をしたことってあると思います。なのでベースの音作りで「太さ」を求めるのならば常にキックと一緒にするのが良いです。そうすることで最低でも、キックとの棲み分けは可能になります。
ではベースのイコライザーです。ベースは多くの人が誤解しているのですが、ベースの一番低い音は(実音)は40Hzあたりにあります。
つまり闇雲にローカットで100Hzくらいまで切ってしまうとこの実音部分も切ってしまうので、注意が必要です。
以下の画像はベースとドラムを同時に鳴らしたものをスペクトラム・アナライザーで表示したものです。
緑がキック、ベースが白です。
このキックはすでにある程度作られているのですが、緑と白がかぶっていない部分がありますよね。その部分がベースの抜けの部分です。この部分にキックがかぶさってくればくるほどベースのらしさは感じられません。
この画像では、ベースの実音40Hzあたりはキックとかぶっていませんし、倍音であるオクターブ上の80Hzあたりの音もキックより抜けています。つまり太いベースがキックに邪魔されていない状態です。
そしてキックはキックで50Hzあたりをピークにしながらも、キックのアタック感である5kHzあたりも確保されているので、両者とも非常にバランスの良い状態になっていると言えます。
イコライザーでこのよう形にする簡単な方法は、キックの150Hz〜300Hzあたりを5dBくらい削ることでベースの帯域を譲ってあげるとこのような棲み分けになりやすいです。
dtmベース太い音を作るコンプの設定
コンプについてはイコライザー棲み分けをしたあとに音量差を整える程度で大丈です。エフェクトのプリセットを参考にしてもいいですが、大切なのはこのキックとベースの音量的な棲み分けをキレイに作ることが目的なので、プリセットを使ってそのままではなく、ボリューム調整をしっかりとするようにしましょう。
基本的にはゲインリダクションが-3dB程度になるようなセッティングです。ここで大切なのはコンプのプリセットを使っても必ずしも-3dBのゲインリダクションにはならないということです。なぜならばコンプにとって重要なのは入力される量で決まるからです。入力される音をどれだけコンプ(圧縮)するかはスレッショルドとレシオで決まります。
参考記事
コンプの使い方はスレッショルドを理解すれば簡単に使いこなせる
太いベースサウンドを作るために必要なこと(音色エディット)
ベースを2トラックに分ける
ベース単体では思った太さがでない、コンプをかければ抜けが悪くなるだけ、このような問題も出てくると思います。そういう場合は。ベースを2トラック用意するという方法があります。なぜ2つのベーストラックを用意するのかというと
ベーストラック1 | エフェクトプラグインを使わない(DRY) |
ベーストラック2 | エフェクトプラグインを使う(WET) |
この方法は生のベースを録音するときに、DIとアンプの2つで録音する部分と通じるところあります。
このDIとアンプによる音作りは老舗ベース音源TrilianやモデリングベースのModoBassでも使われている方法です。
あれ?じゃあこれらの音源はトラックを2つに分ける必要は無いの?
その中で自分が望む音になるのならば、無理して分ける必要はないよ。用意した音をもっと太くしたいけれど、どうにもならないっていう場合の対処の1つだから
DAW付属のベース音源でこの方法試す場合はDI系のベースであることが望ましいです。
DIとはアンプを通さずにベースから直接ラインで録音したベースのことです。
アタックであるDRYとコンプやイコライザー等で処理されたWETこの2つをMIXすることで、ベースの音作りの幅が広がり太いベースサウンドに仕上げることができます。
ではデモ曲を聞きながら確認していきます。
デモ曲1シンプルにドラムとベースだけ
ベースはEXS24のPick Electric Bass
ドラムはDrumkit SoCal Kit です。
これらをノーマルの状態でならすと
まぁこんな感じですよねーっていう音質です。
ここで先程ベースのトラック分けをします。このとき注意したいのはEXS24のBUS送りをプリフェーダーにします。こうすることでEXS24のメインフェーダーをゼロにすることができます。
なぜゼロにするかというと、EXS24にエフェクトプラグインをかけるとそのままそれがBUSに送られてしまいます。そのため、何もかけていな音をBUSに送る必要があるためプリフェーダーを選択します。
プリフェーダーの選択方法
センドのところでBUSを選択後BUSボタンを右側あたりをクリックすると上記の画像の項目が出てくるのでプリフェーダーを選びます。デフォルトではポストパンが選択されています。
プリフェーダーを選ぶとセンド量が青色に変わります。
こうすることでEXS24のフェーダーをさげてもセンド量できめた分だけBUSに出力されます。そして先程決めた1トラックをDI1トラックをアンプといった感じにするためプラグインエフェクトかけます。
DI側はアバロンのDIを意識したと思われるDIとエキサイターをかけることでDI特有の高域が抜ける音を作ります。次にアンプ側は任意で選んでいいと思います。
そしてこの2つのトラックさらにBUSにまとめて最終的にダイナミクスを調整します。
そうやって出来たものがこちら
1トラックだけのものと比べると気持ちのよいドンシャリ傾向になっています。そしてもし必要であれば、ここに原音であるEXS24のフェーダーをあげてもいいかもしれません。
デモ曲2 歪んだステレオギターとベースとドラム
次の曲では1つはプラグインを何も使わず、もう一つにはオーバードライブとアンプシミュレーターを使って、それらをバスチャンネルでまとめて軽くコンプで叩くだけでも良い雰囲気になります。
使っているギターはPromiyのV-Metalにロジックのアンプシミュを通しています。
まとめ
ぶっちゃけてしまえばこれはライブやレコーディングでよく使われる方法です。DIの抜けの良いサウンドとアンプの低音をミックスすること出来上がったベースサウンドはかなりリアルな低音感になると思います。
ベース音源で有名なTrilianやModoBassを始めリアリティを追求するベース音源の多くはこの手法が使われています。
よいベース音源を使えばそれでもいいのですが、そういう音源がないのであれば創意工夫!見よう見まねでやったことが案外上手く行くのもDTMの面白いところです。