DTMでヘッドホンについて調べると「3万以上がデフォルト」「2万以下はあまり音に期待できない」という情報を見てヘッドホンの敷居が上がってしまっていたりしませんか?
結論から言うと3万以上のヘッドホンはたしかにそれなりの機能で細かい音をチェックできる音質を持っています。
しかし、だからといって2万以下が悪いということではありません。
ヘッドホンをもっていない。ヘッドホンによるチェックと言ってもそこまで専門的なことはできない。けれど、デザインがよくて、装着感もよい、それでいてそれなりの音質があるヘッドホンを探している!という人には2万円クラスでも十分に活躍できるヘッドホンはいくつもあります。
今回紹介するのはAustrian Audio Hi-X15というヘッドホンで、価格は2万以下です。それでいて作曲するのには申し分ない音質や機能性を備えています。
この記事ではAustrian Audio Hi-X15の魅力や使い勝手などを解説しながら、プロヘッドホンのスタンダードと言われているSony MDR CD-900STのスペックと比較しながらAustrian Audio Hi-X15のレビューを行っていきます。
- 心地よいフィット感
- メタルを基調したかっこいいデザイン
- フラットな特性をもつプロレベルの音質
- ケーブルが少しじ短い
Austrian Audio Hi-X15 概要
メーカー | Austrian Audio |
製品名 | Hi-X15 |
特徴 | 44mm Hi-Xドライバー搭載 優れたフィット感の低反発PAD オールメタル製ヒンジ 折りたたみ&回転機構 |
仕様 | 周波数レンジ:12Hz〜24kHz 感度:113dBspl/V インピーダンス:25Ω 入力電力:150mW ケーブル(交換式):1.4M 端子:3.5mm サイズ:250 x 170 x 80 mm 質量(ケーブル除):255g |
価格 | |
備考 | AKGのスタッフが作り上げたオーディオ会社 メーカー保証1年 |
Austrian AudioのHi-X15は、プロフェッショナルなオーバーイヤーヘッドフォンで、ハイエクスカーション技術によるクリスタルクリアで正確な音響体験を日常的な使用にもたらします。スタジオ、ステージ、リハーサルルーム、ツアー、自宅での練習など、あらゆる場面で完璧なパフォーマンスを発揮します。
Austrian Audioは2017年7月1日にオーストリアのウイーンで創業したブランドで、AKGに在籍していた22名でコアとなるエンジニアリング・チームによって構成されています。
Hi-X15は、この価格帯では珍しい洗練された折りたたみデザインを採用しており、収納や持ち運びが容易です。全金属製のヒンジとボウにより、非常に堅牢な構造を持っています。閉鎖構造と良好な絶縁性により、Hi-X15は多くの使用シーンで活躍します。スタジオでのレコーディングセッション、ステージでのモニター、リハーサルルームでの信頼性の高いパートナーとして、その強みを発揮します。
また、自宅で音楽を楽しむとき、プロジェクトスタジオで次のヒット曲を書くとき、新しいキーボードをマスターするとき、ツアーに出るときなど、Hi-X15はあなたのそばを離れません。オーストリアで設計・製造されています。
これらの特徴から、Austrian AudioのHi-X15は、音質の信頼性、耐久性、そして多様な使用環境に対応する能力を求めるユーザーにとって、非常に魅力的な選択肢と言えるでしょう。
Austrian Audio Hi-X15 レビュー
それでは具体的なレビューをしていきたいと思います。レビュー内ででの帯の色には次のような意味合いがあるので参考にしてください。
- 青帯はメリット
- 赤帯はデメリット
- 緑帯はその中間
音質
3.5
44mm Hi-Xドライバーによるプロフェッショナル・クオリティサウンド
Austrian Audio Hi-X15の音質はSony MDR CD-900STと比較すると落ちついた印象です。
中低域の解像度も同価格帯と比較しても落ち着きがあり、効きやすい印象です。ただ、低域の再生能力に関しては若干足りない感じもします。
この辺りは好みのレベルであって、圧倒的に足りないという印象はありません。高域に関しては高域に作り込まれたような派手さはないものの、Austrian Audioらしさともいうべき、癖みたいなものがありますがサウンド全体として聞き疲れしないサウンドという印象です。
機能性
4
デザイ感とカラーリングがおしゃれ
ヘッドホンの特徴として見た目的なデザインを重視する人も多いでしょう。多くのヘッドホンは黒を基調としているものが多いです。Austrian Audio Hi-X15も基本は黒基調ですが、シルバーとシルバーレッドのパーツがによるカラーバランスが非常にかっこよく、ちょっとテンションがあがります。
また箱のデザインや、付属しているベロア調のポーチなども高級感があって良い感じです。
ヘッドホンは一度装着すれば、デザインやカラーリングなどは目に入らないため、そこまで気にする人はいないかもしれませんが、机の上に置いているときに自分の中で「映える」デザインがあるとワクワクしますよ。
好みの音質を追い込めるリケーブル
Austrian Audio Hi-X15は、その機能性と耐久性において評価できます。特に、折りたたみ可能なデザインは、持ち運びや収納を容易にし、ユーザーの利便性を高め全金属製のヒンジとボウは、頑丈さと耐久性を提供し、長期間にわたる使用にも耐えることができます。
付属しているケーブルは1.4M(3.5mm)DTM上で使用する分には問題ありませんが、レコーディング等となると少し短い印象です。ケーブルの柔軟性はよく音質面でも問題はありませんが、自分好みにしたい、または断線してしまった場合でもリケーブルができるので安心です。
ケーブルタイプは3.5mm(プレーヤー側)、2.5mm(ヘッドホン側)なので、ケーブルを購入するときは少し注意が必要です。
2.5mm | 3.5mm | 4.4mm | 6.35mm |
往年のウォークマンのリモコン部分やカード型ラジオのイヤホン端子 | ポータブルオーディオの主流(PCのイヤホンアウト) | ほとんど使用されていない | ギター・ベース(オーディオインターフェイスのヘッドホン端子) |
全体として、Hi-X15はその堅牢さと多機能性により、プロフェッショナルな音楽制作から日常的な音楽鑑賞まで、幅広い用途に対応するヘッドフォンを求めるユーザーは購入検討の価値があるように思いました。
操作性
4
圧倒的な装着感
Austrian Audio Hi-X15の音質をよりよいものにしてくれているのが耳全体をすっぽりと覆ってくれるイヤーカップです。
イヤーカップは割りと深めに作られているので、ヘッドホン特有の側圧が弱く、長時間装着していても耳が痛くなるようなことがありません。
ちなみにSony MDR CD900STは長時間つけているとかなり痛くなります。(個人的意見)
また深めに作られたイヤーカップのおかげで一定の遮音性も確保できるため、楽器録音のヘッドホンとしても使えます。
折りたたみ可能で直感的な操作性
Austrian Audio Hi-X15は、そのシンプルで直感的な操作性が評価できます。特に、ヘッドバンドの調整機能はスムーズで、ユーザーが自分に最適なフィット感を簡単に見つけられ、折りたたみ可能なデザインは、使用後の収納や持ち運びを容易にします。
全体として、Hi-X15はそのシンプルさと直感性により、初めてプロフェッショナルなヘッドフォンを使用するユーザーや、複雑な操作を避けたいユーザーにとって、魅力的な選択肢となるでしょう。
安定性
4.5
Austrian Audio Hi-X15は、その堅牢な構造と高品質な素材ゆえに安定性は高いように感じました。。全金属製のヒンジとボウは、頑丈さと耐久性を提供し、長期間にわたる使用にも耐えることができます。また、折りたたみ可能なデザインは、使用後の収納や持ち運びを容易にし、ヘッドフォンの安全性を確保します。
頭の大きさによってはAustrian AudioのHi-X1の密着度が高いという人もいるようですが、私にとっては抜群のフィット感があり、音楽を作りながら首を動かした程度では外れるようなことはありませんでした。
価格
4
Austrian Audio Hi-X15は、5万円クラス以上の音がする!というようなハイコストパフォーマンスな製品ではありません。個人的には価格相応でバランスのとれたヘッドホンのように感じました。
定価は20,900円ですが、現在は5周年記念ということもあり17,800円で購入できます。
また、その価格は、初めてプロフェッショナルなヘッドフォンを購入するユーザーや、予算が限られているユーザーにとっても魅力的です。これにより、高品質な音楽体験を求める多くのユーザーが、Hi-X15を手に入れることができます。
DTMヘッドホンのスタンダードとして認知されているSONYのMDR-CD-900STと機能面で比較すると、再生周波数帯域等ではMDR-CD-900STの方が上ですが、これはあくまで開発段階における測定数値の結果であり、実際この帯域の音をすべて聞き取れるわけではありません。
もちろんそれでもそれだけ幅広い再生周波数を確保出来ていると、倍音等の聞こえ方も変わってくるので違いはありますが、その領域を徹底機に聞こえる使い方をするならばそもそもこの機種はあまりオススメできないので、最低でも5万以上のヘッドホンの購入を検討するのがよいでしょう。
音質面で影響があるとすればインピーダンスです。Austrian Audio Hi-X15はMDR-CD-900STと比較すると低インピーダンスですが、オーディオインターフェイスのヘッドホンの多くは低インピーダンスのヘッドホンでも十分な音質を
MDR-CD-900ST | Austrian Audio Hi-X15 | |
形式 | 密閉型 | 密閉型 |
ドライバーユニット | 40mm、ドーム型(CCAW採用) | 44mm Hi-Xドライバー |
最大入力 | 1,000mW | 150mW |
インピーダンス | 63Ω | 25Ω |
音圧感度 | 106dB/mW | 113dBspl/V |
再生周波数帯域 | 5~30,000Hz | 12Hz〜24kHz |
コード長 | 2.5m | 1.4M |
コードの太さ | Φ4.0mm | 明記なし |
プラグ | ヘッドホン側(非着脱) プレイヤー側(ステレオ標準プラグ) | ヘッドホン側 プレイヤー側(3.5mm) |
質量(コード含まず) | 約200g | 255g |
価格 | 15,800円 | 20,900円→17,800円 |
メーカー価格は20,900円ですが、大手ECサイトでは17,800円くらいで購入でで、また限定的にさらに価格が下がる場合もあるので、気になる人は随時チェックするのが良いでしょう。
ヘッドホンのインピーダンスについて
インピーダンスとは、電気信号が回路を通る際の抵抗力のことを指します。この値が大きいほど、電流は流れにくくなります。ヘッドホンの場合、インピーダンスは音響信号の伝達に大きな影響を与えます。
ヘッドホンのインピーダンスが高いと、より多くの電力(ボルト)が必要となります。これは、高インピーダンスのヘッドホンが電流の流れをより抵抗するためです。その結果、高インピーダンスのヘッドホンは、より強力なアンプ(増幅器)を必要とします。これにより、音の細部をより精密に再現することが可能となります。そのため、オーディオフィール(音質に敏感な人)の間では、高インピーダンスのヘッドホンが好まれることが多いです。
一方、低インピーダンスのヘッドホンは、少ない電力でも十分に動作します。これは、電流の流れをあまり抵抗しないためです。そのため、スマートフォンやパソコンなどの一般的なオーディオデバイスから直接駆動することが可能です。しかし、音の細部の再現性は高インピーダンスのヘッドホンに比べて劣る可能性があります。
これらの違いから、ヘッドホンの選択は使用するオーディオデバイスや、求める音質によって変わります。高品質な音を求めるオーディオフィールは、高インピーダンスのヘッドホンと強力なアンプを選ぶことが多いです。一方、手軽に音楽を楽しみたい人は、低インピーダンスのヘッドホンを選ぶことが多いです。
インピーダンスは水道のパイプ
インピーダンスとは何かを理解するために、水道のパイプを想像してみてください。パイプが太ければ太いほど、たくさんの水が一度に流れることができますよね。逆にパイプが細ければ細いほど、少ない水しか流れません。これが電気の世界でも同じで、電気が流れる道(回路)が広ければたくさんの電気が流れ、狭ければ少ない電気しか流れません。
この電気が流れにくさを「インピーダンス」と呼びます。ヘッドホンの場合、インピーダンスが高いと電気が流れにくく、低いと電気が流れやすくなります。
それでは、なぜインピーダンスが音質に影響を与えるのでしょうか。それは、ヘッドホンが音を出すためには電気の力(電流)が必要だからです。電流が強ければ強いほど、大きな音を出すことができます。しかし、インピーダンスが高いと電流が弱くなり、音が小さくなってしまいます。逆にインピーダンスが低いと電流が強くなり、音が大きくなります。
ただし、音が大きいだけが良い音質とは限りません。インピーダンスが高いヘッドホンは、電流が弱いために細部の音を丁寧に再現することができます。そのため、音楽の細かな部分を聴き取りたいときには高インピーダンスのヘッドホンが適しています。逆に、大きな音を出したいときや、音楽を大勢で楽しみたいときには低インピーダンスのヘッドホンが適しています。
これがヘッドホンのインピーダンスと音質の関係です。どんなヘッドホンを選ぶかは、あなたがどんな音を楽しみたいかによります。
Austrian Audio Hi-X15に関するFAQ
- Austrian Audio Hi-X15の主な特徴は何ですか?
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Austrian Audio Hi-X15は、クリスタルクリアで精密なリスニング体験を提供することで評価されているオーバーイヤータイプのヘッドフォンです。44mmのHi-Xドライバーを搭載し、周波数レンジは12Hzから24kHzまでカバーしています。また、感度は113 dBspl/V、インピーダンスは25Ωです。
- Austrian Audio Hi-X15の音質はどうですか?
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Austrian Audio Hi-X15はクリアで開放的な音質を持っています。POPSやROCKなどでは十分なリスニング体験を提供し、特にボーカルやスピーチを明確に聞き取ることができます。
ただダイナミクスの激しいクラシック系では少し物足りない印象に感じるかもしれません。 - Austrian Audio Hi-X15のコンフォート性(安心感、快適性)はどうですか?
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Austrian Audio Hi-X15は長時間のセッションでも快適さを維持します。耳の形状は人によって異なりますが、ソフトでゆっくりと形状を保持するメモリーフォームが使用されています。また、軽量で折りたたむことも可能なので持ち運びやすいです。
- Austrian Audio Hi-X15と AUSTRIAN AUDIO HI-X25BTの違いは?
-
AUSTRIAN AUDIO HI-X25BT Austrian Audio Hi-X15 形式 密閉型 密閉型 ドライバーユニット 4mm Hi-Xドライバー 44mm Hi-Xドライバー 最大入力 150mW 150mW インピーダンス 25Ω 25Ω 音圧感度 113dBspl/V 113dBspl/V 再生周波数帯域 12Hz〜24kHz 12Hz〜24kHz コード長 1.4M 1.4M コードの太さ 明記なし 明記なし プラグ デジタル・オーディオ&充電用:
1.2M USB-C <-> USB-C
アナログ・オーディオ用:1.4M USB-C <-> 3.5mmステレオミニ(標準変換アダプター付属)ヘッドホン側
プレイヤー側(3.5mm)質量(コード含まず) 270g 255g 補足 約30時間(リチウム・ポリマー内蔵/USB-C充電)
Bluetooth対応コーデック:
SBC
Bluetooth対応プロファイル
A2DP、AVRCP、HSP、HFP
Bluetoothコントロール(静電容量式タッチ操作)価格 28,600円→24,200円 20,900円→17,800円 スペックの違いはほぼなく、デジタル/ブルートゥース接続が可能かどうかが大きな違いです。
海外フォーラムでは「デジタル接続だけの違いではなく、音質がそもそも違う」という話もありますが、これに関しては公式サイトにも詳しい情報はありません。なので、
まとめ
少し前までは2万クラスのヘッドホンはそれなりの性能と言われていましたが、近年では物価の上昇もあり3万クラスがそれなりの性能クラスと言われています。
Austrian Audio Hi-X15のコンセプトはAustrian Audioのサウンドがいつでもどこでも、そしてリーズナブルなので、携帯性がよく、フィット感があり、一日中つけていたくなるそんなヘッドホンを目指して作られたように思います。
しかし、手軽さを売りにしながらも、Austrian Audio Hi-X15は音質、性能、機能性、安定性、価格、の面で頑張っているヘッドホンだと感じました。
特につけ心地に関してはかなり良く、遮音性もそれなりにあるので、レコーディング時のモニターヘッドホンとしても使えます。(爆音を遮音できるわけではありません)
何より、ブラック、シルバー、シルバーレッドのカラーリングはかなりかっこいいです!
またリケーブルして好みのケーブルで音質をチューニングするのも楽しいです。
シビアな音質チェックとなるとやはり1ランクから2ランク上のヘッドホンの方が安心できますが、まだヘッドホンをもっていない。ヘッドホンによるチェックと言ってもそこまで専門的なことはできない。けれど、デザインがよくて、装着感もよい、それでいてそれなりの音質があるヘッドホンを探している!という人にはオススメできる一品です。
ここまでの解説を見て「いや私はやっぱりSONYのMDR-CD-900STを使いたい!」という人はそれでもオッケーだと思います。大事なのは自分にとってベストなものを選ぶ基準です。