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Techivation M-Compressorレビュー 破綻しないダイナミクスを作り出す!

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音楽制作での最大の課題の一つは、音量の大きな変動を自然にコントロールし、クリアでプロフェッショナルなサウンドを実現することです。

色々なダイナミクスプラグインを使っても。平面的で音楽的なダイナミクスが破綻しているという人にとってTechivation M-Compressorは有用な解決手段になりえます。

M-Compressorは上向きと下向きの圧縮を繊細に調整することで、この問題をシンプルかつ迅速に解決します。音の小さい部分を適切に引き上げ、大きな部分をしっかりと抑えることで、バランスの取れた美しい仕上がりを実現します。

この製品はTechivation様より提供いただき記事を作成しています。

UG
  • 元ゲーム音楽屋(NintendoDSなど)
  • 作曲歴20年以上
  • DTM記事執筆500以上
  • ショートアニメ、CM、企業PV音楽を制作
  • 詳しいプロフィール
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Techivation M-Compressor 概要

メーカーTechivation
製品名M-Compressor
特徴具体的に4つ(短文)改行で最大8
システムWindows
7 and up as 64-bit VST and VST3, and 64-bit AAX (PT11 and up).
Mac OS
10.9 (OS X Mavericks) and higher as VST, VST3,
AU, and AAX. Intel processors, and Native Apple Silicon Chips.
認証方式シリアル認証
認証数2
マニュアル日本語/英語
価格$149
備考アンインストール場所
MAC OS
AU: /Library/Audio/Plug-ins/Components/
VST: /Library/Audio/Plug-ins/VST/
VST3: /Library/Audio/Plug-ins/VST3/
AAX: /Library/Application Support/Avid/Audio/Plug-Ins/ その他のデータ: ~/Library/Application Support/Techivation
WINDOWS
VST: Custom path from installer
VST3: \Program Files\Common Files\VST3\
or \Program files(x86)\Common Files\VST3
AAX: \Program Files\Common Files\Avid\Audio\Plug-Ins\

M-Compressorは、上向(upward)きと下向き(downward)の圧縮を提供するスペクトルオーディオコンプレッサーです。個々の周波数を対象にしたスペクトルしきい値を使用し、信号のスペクトル輪郭に基づいて動的に調整します。

これにより、歪みのないダイナミックな処理が可能で、原音のトーンバランスを維持しつつ、全体のサウンドに透明感をもたらします。

“upward compression” と “downward compression”は「信号がしきい値を下回ったときに増幅する処理」および「信号がしきい値を超えたときに減衰させる処理」を指します。

通常のコンプはdownward compression方式になり、しきい値を下回ったものを大きくするのがエクスパンダーがupward compression方式になります。

Techivation M-Compressor レビュー

音質4
機能性(オリジナル性)4.5
操作性(使いやすさ)4
安定性(CPU負荷)4
価格4
総合評価4.1

音質4

スペクトラルコンプならではの明瞭感あふれる音質!

M-Compressorはコンプレッサー失われがちな明瞭度を保ちクリアなダイナミクスが得られるスペクトラルコンプレッサーです。

スペクトラルコンプと通常のコンプの違いについて

通常のコンプレッサーは、音楽全体に対して同じように効果を適用しますが、マルチバンドコンプレッサーは音楽を3〜4つの異なる周波数帯域に分けて、それぞれに個別の圧縮を行います。これにより、低音部や高音部など、特定の帯域の音量を調整できます。

一方、スペクトラルコンプレッサーはさらに進んで、これらの帯域をより細かく分割して処理します。各帯域が非常に細かいため、音楽の細部まで精密にバランスを調整し、より自然で滑らかな音質を実現することができます。これにより、例えば楽器同士の重なりが多い部分でも、各楽器がクリアに聞こえるように調整することが可能です。スペクトラルコンプレッサーは、その高い柔軟性と精密さから、最新の音楽制作で非常に重宝されています。

その理由は、上向き(upward)と下向き下向き(downward)の両方の圧縮機能が搭載されているためです。

上向き圧縮によって静かな部分の音量を増やし、全体のサウンドに豊かさを加えます。一方、下向き圧縮によって大きな音を適度に抑えることで、全体のバランスを整えます。これにより、音源全体に均等なエネルギーが行き渡り、聴感上の厚みや深みが増します。

例えば次のようなドラムに使うとわかりやすいです。

このドラムにまずは、通常と同じ下向き(downward)だけの設定をしたM-Compressorを通してみます。赤くなっている部分が圧縮されている部分になります。

画像

つぎに、上向(upward)の設定を加えたM-Compressorを通してみます。緑色になっている部分がupward(ブースト)されている箇所です。

画像

高域、とくにハイハットが大きくなっているのがわかります。これは上向(upward)で設定されたレベル以上の音がブーストされていることになります。

従来のコンプレッサーは、全体の音量が設定したしきい値を超えた「ピーク」に反応して音量を抑制しますが、M-Compressorはそれに加えて、特定の周波数帯域に焦点を当てた処理が可能です。

これにより、ユーザーは高域や低域など、特定の周波数帯域のみをターゲットにした圧縮や拡張(エクスパンダー機能を使用して信号を増幅)を柔軟に行うことができます。この機能は、意図しない圧縮による高域の減少や低域の過剰な圧縮を避け、より細かく音質を調整するのに役立ちます。

M-Compressorでは、各帯域の圧縮率(Down Ratio)と拡張率(Up Ratio)を独立して設定することができ、これにより非常に精密なダイナミックレンジのコントロールを実現します。この高度な機能により、ミックス内での各楽器の明瞭度を保ちながら、全体のバランスを最適化できるため、音楽制作やマスタリングのプロセスで非常に有効です。

また、この上向(upward)をリバーブに使うと、リバーブのテイル(残響感)を調整できます。この機能を使えば埋もれがちになったリバーブにスポットライトがあたったようなサウンドになります。

では実際比較してみます。まずはスネアにたっぷりのリバーブをかけた音源です。

これにM-Compressorをかけてみると次のようになります。

この結果が良いか悪いかは意図によって異なると思いますが、楽曲の中で埋もれがちになるリバーブをうまく持ち上げクリアな奥行き感的な部分を演出することができるのでこのアプローチ方法もおすすめです。

他にもアコースティックギターのソロパートをレコーディングしているとします。自然なプレイスタイルのため、演奏中には音量の大きなバリエーションが存在します。M-Compressorを使用すると、静かなパッセージを自然に持ち上げ、一方で強く弾かれた部分は適切に制御されます。結果として、リスナーはギターのすべてのノートをクリアに聞き取ることができ、演奏の感情表現が豊かに伝わります。

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機能性4.5

上向きと下向きの圧縮機能について

一般的なコンプレッサーの機能: 伝統的なコンプレッサーは、オーディオシグナルが設定したしきい値を超えると、信号を抑えることで音量を一定に保ちます。このプロセスは主に大きな音を制御するために用いられ、全体の音量のピークを減少させることに注力します。

M-Compressorの進化: M-Compressorは、従来の下向き圧縮に加えて、上向き圧縮を導入しています。上向き圧縮は、信号が特定の低いしきい値以下になったときに音量を自動的に増加させる機能です。これにより、音の小さい部分が適切に前に出るように調整され、全体の音のバランスが向上します。

圧縮カラーを決定するTilt・Tilt Centre

機能面においては、上向(upward)きと下向き(downward)の圧縮が可能なのがM-Compressorの最大の特徴ですが、それと同じくらい重要なのがTilt・Tilt Centre機能です。

Tilt機能は高域と低域の圧縮のバランスを傾斜させることができます。

例えば、Tiltを正の値に設定すると、高域のしきい値が低くなり、低域のしきい値が高くなります。これにより、高域がより強く圧縮される

Tilt Centre機能はTiltが適用される周波数の中心点を設定します。この値によって、傾斜が影響を与える周波数範囲が変わります。

なおM-Compressorは従来のモデリング的な位置づけのコンプではないため、色付け的な意味合いで使うことは不向きなコンプです。もしハードウェアのモデリング的なコンプを使用したい場合は、M-Compressorで整えたあとに意図するコンプを使用するのがおすすめです。

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操作性4

機能性の理解には時間が必要

操作性においてはそこまで複雑ではありません。触っていればその効果は割とわかりやすいのですが、M-Compressorは基本的なコンプの用途に、上向(upward)きと下向き(downward)の理解が求められるのとスペクトラルコンプの特性についてもある程度の知識があったほうがより効果的な使い方が可能です。

もちろん、それがなくても、使用することはできますが、「普通のコンプとの違い」を理解してはじめてM-Compressorは強い味方になってくれるように感じます。

豊富なプリセットやGUIサイズの変更

画像

Techivation製品はそこまでプリセットは多くありませんがM-Compressorはそれなりのプリセットを揃えており、その効果は初心者〜上級者まで効果がわかりやすく即戦力になる印象がありました。

なので、まずは一通りのプリセットを試してみるとM-Compressorの魅力が十分に堪能できます。

GUIサイズの変更はTechivationの製品に搭載されているので、こちらも任意のサイズの変更が可能です。ただ、個人的にはGUIサイズのバランスが良いので基本は100%のまま使っています。

これもまたすべてのTechivation製品に言えることですが、登録メールアドレスが表示されてしまうため、個人情報保護の観点から見るとこのあたりは非表示にしてほしいところです(画像では@マークが表示されている部分にメールアドレスが記載されています)

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安定性4

CPU負荷はそこまで高くない

M-CompressorのCPU負荷はそこまで高くありません。

オーディオトラックに一つだけM-Compressorを挿した場合の負荷ですが。マルチコア分散がよく効いているのかそこまで高い負荷ではありません。

画像

ただ複数のトラックに挿していくとそれなりに負荷は高くなり、マスタートラックに使うと左端のCPU負荷だけが高くなる傾向がLogicでは見られました。ソフトシンセと併用時には注意が必要かもしれません。

CPU負荷計測環境

パソコン  Macmini2018

CPU  Intel Corei7(i7-8700B)6コア 

HT使用時12コア 3.2GHz/ターボブースト(TB)使用時4.6GHz

メモリ 32GB

システム OS12.6.1 Monterey

Audio/IF Focusrite RED 8PRE

バッファー 256

DAW   LogicPro10.7.7

48kHz/24bit

再生ストレージ SSD

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価格4

価格は為替レートに影響します。

通常セール
価格$149$74.50

価格考察(購入のポイント)

M-Compressorは、高度なスペクトル処理とダイナミックレンジの制御を提供するプロフェッショナルグレードのオーディオプラグインです。

価格を考慮した購入ポイントとしては、その独自の上向きおよび下向き圧縮機能、精密なスペクトルしきい値調整が挙げられます。これにより、より洗練された音質と詳細な音のコントロールが可能になり、プロのミックスやマスタリングに必要な柔軟性と効率性を提供します

$149というのは高くみえるかもしれませんが、これ一つあれば従来のモデリングコンプでは得られない自然なダイナミクスを手にすることができます。

そういった意味で「セールで安くなっているプラグインを2つ程度我慢」すれば購入できるわけですから、その費用をこちらに回す価値は十分すぎるほどあると考えられます。

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Techivation M-Compressorは誰におすすめ?

ここまでのレビューからみて、M-Compressorをおすすめする人とそうでない人を解説します。

おすすめする人:

  1. 高度な音質調整を求める音楽プロデューサー: 細かなスペクトラルコントロールが必要な音楽プロジェクトを扱うプロデューサーには、M-Compressorが提供する上向き・下向き圧縮やスペクトルしきい値の調整が有効です。
  2. マスタリングエンジニア: マスタリング段階での詳細なダイナミックレンジの調整や周波数帯の微調整が必要な場合、このプラグインの精密な機能が役立ちます。
  3. サウンドデザイナー: 映画やビデオゲームなどのサウンドデザインにおいて、細かな音のニュアンスを調整する必要がある場合、M-Compressorの詳細な設定が非常に役立ちます。
  4. オーディオ教育者や研究者: 高度なオーディオ処理技術を教えたり、研究したりする際に、実例としてこのプラグインの機能を示すことができます。

あまりおすすめできない人:

  1. 基本的なコンプレッサー機能を求めるユーザー: シンプルな音量調整や基本的なダイナミックコントロールを求めている場合、M-Compressorの高度な機能は過剰かもしれません。
  2. 予算が限られているミュージシャンやスタジオ: 高価なプロフェッショナル向けプラグインに投資する余裕がない場合、もっと手頃な価格のオプションを検討するのが良いでしょう。
  3. コンプレッションの基礎を学んでいる初心者: 複雑な機能が初学者にとっては扱いにくく、学習曲線が急なため、よりユーザーフレンドリーな入門用コンプレッサーの方が適している可能性があります。

これらの点を踏まえると、Techivation M-Compressorは特に音質に敏感で、細かい調整を必要とするプロフェッショナルな環境での使用が最も適していると言えます。

まとめ

音質4
機能性(オリジナル性)4.5
操作性(使いやすさ)4
安定性(CPU負荷)4
価格4
総合評価4.1

M-Compressorは、高度なオーディオ処理のニーズに応えるプロフェッショナル向けのプラグインです。

初心者でも使えないことはありませんが、やはり基礎的なコンプの知識を持ちたわせている使用用途を的確にすることができるでしょう。

やはり最大限の魅力として上向き圧縮と下向き圧縮機能を通じて、サウンドのダイナミクスを細かくコントロールすることができる点にあると感じました。

静かなパートを適切に引き上げながら、突出したピークを抑制することで、トラック全体のバランスを保ちます。この精度は、特にダイナミックレンジが広いアコースティック楽器やボーカルの処理において、クリアでバランスの取れたミックスを実現します。

音質の向上と効率的なワークフローを求めるすべての音楽制作者に、Techivation M-Compressorの導入を強く推薦します。このプラグインは、制作過程で直面する多くの課題に対して、実用的な解決策を提供します。M-Compressorを使用することで、あなたのトラックはよりプロフェッショナルなサウンドへと変貌を遂げるでしょう。

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