SSL Native Bus Compressor 2は伝説のSSLバスコンプレッサーを精密に再現し、アナログサウンドの魅力をデジタルで体験できます。
高度なサイドチェーン機能と直感的な操作で、細かなダイナミクス調整も簡単。プロフェッショナルなサウンドを自宅で手軽に実現し、音楽制作の質を一段階アップさせるこのプラグイン、
SSL Native Bus Compressor 2 サウンドレビュー
Glue効果(音を密着する)も自然でアタックもフォーカスしてくれるので、今までバス・トラックを使ってもまとまらないと感じていた人には本当に助かるバスコンププラグインだと思います。実際楽曲の中の使ってみるとどのような感じになるのか聴いてみましょう。
まずはSSL Native Bus Compressor 2を使っていない状態
次にSSL Native Bus Compressor 2をドラムトラックに使った状態
使っていない状態ではスネアが目立ちバランスもちぐはぐな感じでしたが、SSL Native Bus Compressor 2を使うと、ドラムが1つの塊のように感じたと思います。
サイドチェインを通した場合とそうでない場合の音の違いをかんたんに比較してみます。
最初がサイドチェインがOFFの状態
続いてサイドチェインがONの状態ここでは周波数を80Hzくらいで設定しています。
サイドチェインがOFFつまりすべての周波数にコンプがかかるような状態であると、真っ先に反応するのが低域です。
しかし、そこでコンプが反応しすぎてしまうと一体感のあるバストラックにはなりません。
この塊という部分がバスコンプ特有の「Glue(接着)効果」と呼ばれています。
音質面では、他のメーカーのバスコンプとSSL Bus Compressor 2 と比較すると若干腰高な印象があり纏まりを作りながらスピード感を得ることができます。
別途リリースされているSSL Native Channel strip 2と一緒に使用することで、SSLコンソールの操作性と質感を手にすることができるため、プロの間では「音質もいいがそれ以上に使い慣れた操作性で仕事が進められるのは大きなメリット」と高い評価を得ています。
バスコンプはメーカーによって音色の違いがあり、SSLのバスコンプはその中でもオーソドックスな音質で親しまれています。なので最初のバスコンプとしては基準となる音質感もあってオススメです。
機能性および操作性
SSL Native Bus Compressor 2の基本パラメータースペックは以下の通りです。
THRESHOLD | ゲインリダクションが導入されるレベルを制御 -20〜+20dB |
MAKEUP | 圧縮によるレベルの低下を補償するゲインステージ -5dB〜+15dB |
ATTACK | しきい値を超えた後の圧縮開始の応答時間を制御 20 ms オプションは Bus Compressor 2 で導入 |
RELEASE | レベルが通常に戻るまでの時間 0.4、0.8、1.2 秒はBus Compressor 2 導入 |
RATIO | 圧縮の程度を制御 1.5、3、10、20、 “X “は Bus Compressor 2 で導入 X は – 20 より大きく実質リミッター的なモノ |
S/C HPF (Bus Compressor 2 導入) | コンプレッサーのサイドチェーンにハイパスフィルター 20Hz〜185Hz |
MIX (Bus Compressor 2 導入) | パラレル処理 DRY-MIX |
OVERSAMPLING (Bus Compressor 2 導入) | OFF、2、4 DAW では少量の遅延が発生 |
PLUG IN MIXER (Bus Compressor 2 導入) | SSL 360°がインストールされているとSSL 360°が開く |
EXTERNAL S/C (Bus Compressor 2 導入) | サイドチェインを外部から供給 |
MIX LOCK (Bus Compressor 2 導入) | プリセットシステムから MIX コントロールを除外 |
バージョン2になってからかなり多くの機能を追加されました。ここではその中でも実際使ってみて便利だと感じたものを深掘りしていきます。
ドライ/ウェット並列処理コントロールとサイドチェーン ハイパス フィルター
SSL Native Bus Compressor 2に限らずドラムでコンプを使う場合に苦戦するのが意図しないコンプの動作です。ベースやドラムなどをまとめたときにはどうしても低域でコンプが作動してしまい、コンプを深ければ深けるほど音像が見えなくなってしまいます。そのような場合に使えるのがサイドチェイン HP(以下S/C HPF)です。
S/C HPFは設定した帯域より上の帯域にコンプが動作するようにしたもので、厳密には違いますが、キックやベースの帯域をスルーしてくれるものと思ってください。
例えば、S/C HPFで100Hzに設定するとそれよりの下の帯域ではコンプが作動しなくなり、低域のエネルギーを潰しすぎることなくコンプレッションできるようになります。
ちなみにサイドチェインを通すとアナライザーでは次のようになります。
白が、サイドチェインを通した状態、黄緑が通していない状態です。なのでもしSSL Native Bus Compressor 2をバス・トラックで使ってみてもいまいち意図しない結果になった場合はサイドチェインを調整してみましょう。
SSL Native Bus Compressor 2は、パラレルコンプ機能を活用してトランジェントを保ちつつ音色を調整できます。DRYでコンプなし、WETでコンプありと設定可能で、50〜80%のWET寄りが最適です。また、DAWのバストラック名がプラグイン上にも表示され、視覚的にわかりやすいのが便利です。
RATIOのXは正直なところそこまで差を感じない
SSL Native Bus Compressor 2になってから搭載されたオプションがいくつかありますが、公式的に目玉の1つとしているのがRATIOのXです。
これは、1:20よりさらに圧縮比を高めたリミッター効果を得られるものですが、計測してみてもその違いは誤差レベルなのでは?という感じがしています。
もっとXを有効活用できる設定があるのかもしれないので、引き続き使い込んで何かわかりましたら追記します。
A/B比較にデフォルトプリセットも装備!
使ってみてわかるのはとにかくシンプルイズベストのGUI(操作画面)です。不要なパラメーターは一切ないので操作性で悩むことはありません。
また設定の比較をするときに便利なA/Bボタンも装備、また前後の設定に素早く変更できるUNDO REDOボタン、そして私が大好きな初期設定に一発で戻れるdefaultプリセットも装備しています。
どのプリセットも質が高く、さすが本家SSLのバスコンプに搭載されるだけはあるプリセットです。このようなプリセットを使っても上手く行かない人のアドバイスとして、プリセットをそのまま使うのではなく、スレッショルドを調整してメーターが4〜8の間で動くようにすると、必要以上にコンプレッションがかかることなく、SSL Native Bus Compressor 2 の音質を堪能できるので一度試してみてください。
コンプの使い方ははスレッショルドを理解するのが近道です。
以下の記事ではスレッショルドについて詳しく解説しているのでよければ参考にしてください。
CPU負荷について
ドラムのステムミックスにSSL Native Bus Compressor 2を1つ挿した状態の負荷です。
まったくと言っていいほど負荷はありません。名前がBus Compressorなのでバス・トラック以外使わない方がよいのかな?と思う人もいるかもしれませんが、好む結果になるのであれば単体トラックで使っても問題ありません。
実際VCAコンプはベースやキックにもよく使われるので、私はそのような使い方をすることも多いです。
CPU負荷計測環境
パソコン Macmini2018
CPU Intel Corei7(i7-8700B)6コア
HT使用時12コア 3.2GHz/ターボブースト(TB)使用時4.6GHz
メモリ 32GB
システム OS12.6.1 Monterey
Audio/IF Focusrite RED 8PRE
バッファー 256
DAW LogicPro10.7.7
48kHz/24bit
再生ストレージ SSD
Solid State Logic SSL Native Bus Compressor 2に関するFAQ
- SSL Native Bus Compressor 2はどんなコンプレッサーですか?
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SSL Native Bus Compressor 2はVCAタイプのコンプレッサーです。
はVCAタイプのコンプレッサーは電圧を制御して音量を調整します。電圧が高いと音が大きく、電圧が低いと音が小さくなります。VCAコンプレッサーは一般的に高速で反応し、音質への影響が少ないのでバス・トラックでも使いやすいです。
- SSL Native Bus Compressor 2のRATIOのXとはなんですか?
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レシオ20以上のリミッターになります。しかし、測定してみた結果、20とXの違いはそこまで明確ではないように感じます。(うすくピンクに見えるのがX)
- バスコンプと普通のコンプの違いはなんですか?
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バスコンプとは個々のトラックをまとめたバス・トラックに使うことを想定したコンプでまとめられたトラックを1つの塊として処理することで音楽的なダイナミクスを管理することを目的としています。
一方で普通のコンプは、単体トラックのダイナミクスを調整する(ドラムであれば、キックやスネアだけ)ことを目的としています。
- SSL Native Bus Compressor 2のオーソライズ方式は?
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オーソライズはiLokアカウント認証でUSBキーなどは必要ありません。認証数は最大で2つです。
Solid State Logic SSL Native Bus Compressor 2使い方動画
バスミックスの5つのポイントについて解説しています。直接SSL Native Bus Compressor 2の使い方の動画ではありませんが、SSL Native Bus Compressor 2を使う上で参考になるポイントが多いです。
こちらはWwavesのバスコンプレッサーの使い方の注意点について書かれていますが、SSL Native Bus Compressor 2と使い方は基本同じなのでこちらの動画も参考になると思います。
まとめ
メーカー | SSL (Solid State Logic) |
製品名 | SSL Native Bus Compressor 2 |
システム | Mac macOS 11 Big Sur – macOS 13 Ventura Intel Dual-Core Mac running at 2.4GHz or higher 4 GB of RAM minimum (8 GB of RAM recommended) AU, VST2, VST3, AAX Native Windows Windows 10 – Windows 11 (64-bit only) Intel Core 2 (or comparable) CPU running at 2.4GHz or higher 4 GB of RAM minimum (8 GB of RAM recommended) VST 2, VST3, AAX Native |
認証方式 | iLok認証 |
認証数 | 2 |
マニュアル | 英語版のみ |
価格 | 329.99ドル(メーカー価格) |
- Glue効果とはなにかが学べるサウンドを得られる
- 操作がかんたん
- 実機にはないサイドチェインを搭載
- リミッター効果も得られる
私はハードウェアDSP(duendeと呼ばれるシステム)時代からSSL Native Bus Compressor 2を使っています(当時はバージョン1ですが)やはり、色々なメーカーがSSL Bus Compressorをエミュレートしていますが、使い勝手の良さと音質が優れているところから最終的にはSSL Native Bus Compressorを使用することが多いですね(もちろんプロジェクトによっては使い分けることもありますが)
今回改めて使い込んでみると、パラレル処理のためのドライ/ウェット信号の混合や、低域のポンピングを減らすためのサイドチェインハイパスフィルターは本当に便利で、よりババスミックスのクオリティに貢献していることがわかりました。
また、SSL Native Bus Compressor 2は、SSL UC1ハードウェアコントローラと連携して動作し、より詳細なプロセッシングを可能にするとのこと、最近はSSLはコントローラー等にも力を入れているので、ぜひそちらも使ってみたいところです。