音楽制作をする上で、音質の良いDTMモニタースピーカーは欠かせない存在ですが、ホームスタジオでの音楽制作に適したモニタースピーカーを選ぶことは、簡単ではありません。
サイズだったり好みの音質だったり要素が色々すぎる
スピーカーを選ぶときは再生環境に左右されますが、できるだけ大きいサイズ=低音が再生されやすいというのが目安です。
低音と高音がはっきりとわかりやすいのが欲しい!
そこで今回は、プロミキシングエンジニアでも使える「FLUID AUDIO FX80」をご紹介します。
Fluid Audio FX80はペアで10万以下という価格ながらクラブミュージックの特徴である超低域まで余裕をもって再生できる同軸スピーカーです。
おそらく10万以下という価格帯では最強のコストパフォーマンスで、自分のスピーカー環境を改善しよとと情報を集める熱心なDTMユーザーからプロユーザーまでおすすめです。
ホームスタジオでの音楽制作に最適なモニタースピーカーであるFLUID AUDIO FX80。この記事では、FLUID AUDIO FX80の特徴や音質、設置方法、使い方などについて詳しく解説します。あなたの音楽制作の質を格段に向上させるために、ぜひFLUID AUDIO FX80を検討してみてください。
- 同軸スピーカーによる高解像度なサウンド
- 35Hzのローエンドも再生可能
- 価格が安い
- 個体が軽い
- 若干ヒスノイズが聞こえる
Fluid Audio FX80 概要
メーカー | Fluid Audio |
製品名 | FX80 |
特徴 | 8インチと1インチの同軸スピーカー 再生周波数帯域が35Hz – 22KHz広い 消費電力を抑えた性能とより消費電力を抑えられるスタンバイ機能 |
スペック | 形式 2-way バスレフ型 バイアンプ方式 ニアフィールド・スタジオモニター 再生周波数帯域 35Hz – 22KHz クロスオーバー周波数 2.4kHz 定格出力 110W(LF:60W/HF:50W) S/N比 90dB (Typical A-weghted) ドライバー 8インチ(約20cm)ペーパーコーンウーファー 1.2インチ(約3cm)シルクドームツイーター キャビネット ラミネート MDF (中密度繊維板) 入力インピーダンス バランス接続:20kΩ アンバランス接続:10kΩ 入力端子 XLR (バランス) TRS (バランス、アンバランス) RCA (アンバランス) ※XLR端子とTRS端子は排他利用 電源入力 100V~240V( 50/60Hz) カラー/型番 ブラック(FX80) 幅 (W)254mm 奥行 (D)340mm 高さ (H)295mm 質量7.8 kg |
価格 | 36,531円(メーカー価格) |
FLUID AUDIO FX80は、8インチの同軸スタジオモニターです。ミックスやマスタリングに必要な正確さと解像度の高さが強みです。前回書いたFLUID AUDIO FX50よりドライバーのサイズが大きいため、低音の再生がよりズムーズでナチュラルになり、精度の高いローエンドの処理を施すことが可能です。
21世紀の同軸モニターFluid Audio 同軸スピーカーの設計は、従来の同軸設計とは著しく異なります。50 年代と 60 年代の同軸モニターはウーファーの後ろに高周波ドライバーを配置し、ウーファーのボイスコイル開口部から高周波を「移植」していました。この設計では、ウーファーのコーンを導波管またはホーンとして効果的に使用しました。ウーファーのコーンは絶えず動いているため (低音域を再生するときに劇的に変化する場合もあります)、高周波がウーファーのコーンから放射されると、かなりの量の相互変調歪みと可聴スミアが発生します。Fluid Audio FX および FPX シリーズの同軸設計により、高周波デバイスがウーファーの前に配置され、固定ポストに固定されます。ツイーターは、高周波が途切れることなく流れるようにする硬質プラスチック製のウェーブガイドに取り付けられているため、ウーファーの動きによるオーディオのにじみはありません。オンボード DSP を使用することにより、オクターブあたり 48 および 36db の Linkwitz-Riley スロープは、低周波数と高周波数を完全にブレンドするだけでなく、同軸設計に固有の音響異常を除去するためにも使用されます (ツイーターはフルサイズではないため)。これらのユニークな利点に加えて、ユーザーは、同軸ドライバーの既知の他のすべての利点を得ることができます。ソース」デバイス、これにより、ドライバー間の位相コヒーレンスが向上し、非常にリアルなイメージングが得られます。直立でも横置きでも、Fluid Coaxial 設計は同じように機能し、スタジオの配置がより簡単で使いやすくなります。
引用元:Fluid Audio FX80
それでも、より正確にローエンドを確認したい場合は20Hzまで再生可能なサブウーファーであるFluid Audio FC10Sを使用するのが良いかもしれません。
Fluid Audio FX50同様しっかりとした外箱と化粧箱の二重構造ですが、この外箱はメーカーへの発送用になるので、店舗で購入する場合はついてこない可能性があります。
化粧箱はシックで高級感のあるブラックでよい雰囲気が漂っています。
Fluid Audio FX50と同じように化粧箱を開けると、同メーカーのオーディオインターフェイスSRI-2ののちょっとした広告。ちょっと試してみたくなりますね。
付属品はFluid Audio FX50と同じで、電源ケーブル、マニュアル、注書きになります。
それでは具体的なレビューをしていきたいと思います。レビュー内ででの帯の色には次のような意味合いがあるので参考にしてください。
- 青帯はメリット
- 赤帯はデメリット
- 緑帯はその中間
Fluid Audio FX80 レビュー
音質
4.5
明瞭度の高いローエンドを得られる
基本的にはFluid Audio FX50と性能は変わらないため出てくる音質は同じです。
しかしウーファーのサイズがFluid Audio FX80は8インチとFluid Audio FX50と比べると3インチ大きく、そのため再生周波数特性は35Hz – 22KHzとなり、Fluid Audio FX50の49Hz〜22kHzと比較して、より深く明瞭度の高い低音感が得られます。
一般的なセッティングとしてスピーカーとの距離が70cm程度離れたくらいのデスクの上に設置しても、8インチのウーファーの恩恵は大きいです。また、スピーカーから2m程度離れた位置くらいで聴くと、同軸の定位感も加味されて全体的にトーンバランスや高いダイナミックレンジ、広い音場感を感じることができます。
フラットな音=つまらないという印象を持つ人もいるかもしれませんが、プロスタジオで使われるモニタースピーカーに求められるのはフラットな再生音です。Fluid Audio FX80はフラットでありながらどこか音楽的な音もするので聴いていて楽しいスピーカーのように思いました。
ヒスノイズが若干聞こえる
耳を済ませるとわずかにヒスノイズが聴こえます。もちろん音楽を邪魔させるようなものではありませんが、気になる人は少し気にしてしまうかもしれないレベルです。
ノイズの質としてはIk Multimediaのi LoudMicroMonitorより周波数的に少しだけ高い印象であり、ノイズの音量的な部分で言えば、ドライバーの大きさも手伝っているのかわずかに大きく感じました。
ただこれをFluid Audio FX80の弱点とし、「駄目なスピーカー」と決めつけるのは少し早合点なように思います。その部分に目を潰れるだけの再生音の質は保っているように感じました。
機能性
3.5
ディップスイッチの可変幅はFX50と同じでなくても良いと思う
これはあくまで個人的な感想ですが、ウーファーのサイズが変われば再生される周波数帯域が異なるため、セッティング時のルームアコースティック処理も異なります。
Fluid Audio FX80とFX50は両方にディップスイッチによる簡易イコライザーがついてますが、その両方が同じ設定数値なため、ユーザーの環境によっては「もう少しFluid Audio FX80のイコライザーで追い込めれば…」と思う人がいるかもしれません。
しかし、ルームアコースティックへの対処はそれこそ終わりなき沼ですし、Fluid Audio FX80やFX50に搭載されているイコライザーで機能に頼るのは酷な話なので、やはりあくまで気持ち程度の機能として割り切るのが良いように思います。
操作性
3.5
8インチサイズであっても軽い
Fluid Audio FX50もそうでしたが、Fluid Audio FX80は8インチサイズであっても個体の重量7.8 kg
使用しているADAM A7Xが7インチで9.2kg、TANNOY Gold8が14.0 kgと見ると軽い部類に入ります。
重量が軽いため持ち運び、セッティングは楽です。しかし、やはり軽いことによる音質の影響は否めません。特にローエンドのリリースが長いキック等では個体が揺れます。FX50での対処法にも記載しましたが、重り等やインシュレーターを使ってチューニングすることで望みの音質に調整した方がよいかもしれません。
また、デスクの上で使えるスタンドとしてFluid Audio DS8 があります。
個人的にこのスタンドはスタンドによる共振防止というよりは、高さを調整するのが目的のように見えます。
純正だからなんとなく選んでしまいたい人もいるかもしれませんが、サイズど重量があっていれば他のスタンドでも問題はないと思います。
価格
4.5
8インチ同軸スピーカーとして最安値
8インチサイズの同軸と来ると思い浮かぶのがTANNOYのGold8ではないでしょうか?
ドライバーの違いやアンプタイプの違いはありますが、Fluid Audio FX80は再生周波数帯域が35Hz – 22KHz、一方のTANNOY Gold8は54 Hz -20 kHz、Fluid Audio FX80の方が数値的にローエンドまで再生することが可能です。
Fluid Audio FX80 | TANNOY Gold8 | |
---|---|---|
アンプ | クラスD | クラスAB |
ユニットサイズ | 1インチシルクドームツイーター 8インチペーパーコーンウーファー | 1インチチタンツイーター 8インチのDual Concentricドライバー |
再生周波数 | 35Hz – 22KHz | 54 Hz -20 kHz ± 3 dB |
定格出力 | 110W | 300W |
入力端子 | XLR (バランス) TRS (バランス、アンバランス) RCA (アンバランス) | XLR, (バランス) TRS, (バランス) 3.5mm ステレオミニジャック |
サイズ | 幅 (W)254mm 奥行 (D)340mm 高さ (H)295mm 質量7.8 kg | 幅 (W)274 奥行 (D)336 高さ (H)429 質量14.0 kg |
備考 | バイアンプ方式採用 | 独立性の高/低周波数リミッター |
価格 | 35,894円(一本) | 61,000円(一本) |
購入サイトへ | 購入サイトへ |
そしてTANNOY Gold8は一本の価格が61,000円に対して、Fluid Audio FX80は一本が35,894円とほぼほぼ半額に近い価格です。できるだけ大きなウーファーで同軸スピーカーを求めるのであれば、Fluid Audio FX80のコストパフォーマンスは高く、音質面でも頼もしい相棒になってくれると思いました。
Fluid Audio FX80のQ&A
- Fluid Audio FX80の最適な設置方法について
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Fluid Audio FX80は、近接壁面に設置しすぎると低音域のレスポンスが望ましくないものになるかもしれないので、近接壁面から30cm以上離してそこから微調整するのがオススメです。
またスタンドに設置する場合は、安定したスタンドに載せないと安全面でも音質面でも好ましくないので、重量のあるスタンドを選びましょう。また、スピーカー面の角度によっても音の聴こえ方が異なるので、普通に設置して満足できない場合は角度を調整してみましょう。
白い部分はスピーカーを内側に寄せて計測したもの - Fluid Audio FX80の音質について
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Fluid Audio FX80は、リニアな周波数特性と高解像度が強みで高音域と中音域の詳細な表現力を得意とします。また耳に優しい音色で長時間の再生でも聞きやすい音を届けてくれます。
- Fluid Audio FX80と他の製品と比較
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リーズナブルな価格帯で低音感も余裕をもって再生できる同軸スピーカーなので、音のフォーカスに重きを求める玄人なユーザーであっても満足できます。
- Fluid Audio FX80とIK MultimediaのiLoud Micro Monitor どちらがヒスノイズが大きいですか?
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個人的にはFX80の方が若干大きく感じますが、それでも音楽を再生すると気になりません。それ以上に同軸と8インチのドライバーから得られる低音の量感方がはるかにメリットが大きいです。
関連動画
Fluid Audio FX80 ユーザーの評価
After using sonarworks my fx80s sound better than any other coaxial speakers I have tried and in some ways sound better than my Adam A7X especially in the imaging.
sonarworks を使用した後、私の fx80s のサウンドは、私が試した他のどの同軸スピーカーよりも優れており、特にイメージングでは、いくつかの点で私の Adam A7X より優れている。
また、私自身ADAM A7Xユーザーであるため、上記のコメントには共感できます。ぱっと聴いた印象ではその雰囲気は近く、コストと機能性を考えると今からどちらをオススメするかと言われるとFluid Audio FX80を勧めたくなるように思いました。
これ以外にはやはりヒスノイズを気にしている人も多いのが目に付きました。ただ私を含め試されたユーザーの多くは「そこまで気にならない」という結論に行き着いています。
そんなことよりもやはり、10万円を切る8インチ同軸スピーカーを手にすることのメリットの大きさを強調していました。
まとめ
Fluid Audio FX50と比較して思ったのはローエンドの余裕感です。再生環境さえ許すならばFluid Audio FX80の方がイメージしている音に近づく可能性が高いです。
8インチクラスのウーファーは6畳程度の部屋では性能を活かしきれないという話を聞くことがあると思います。それは間違いではありません。スピーカーのスペックはどこまで大きい音で高音質に鳴らせられるか?という部分を一つの指標にしているからです。ただ、良いスピーカーは小さい音で再生しても良い音で鳴ります。
Fluid Audio FX80はホームスタジオでは小音量であっても正しい位相と高解像度なのでイメージする音を確認するのには一役買ってくれます。
Fluid Audio FX50でもお伝えしましたが、実機がおいてある店舗の情報はこちらで確認できます。「FLUID AUDIO FX50」の取扱い販売店やサポートについて
コストの高い同軸スピーカーはいくらでもありますが、それらとFluid Audio FX80を比べるのはあまり意味がないように思います。それよりは十万円以下でこれだけの同軸スピーカーが購入できるというポイントに目を向けてその価値を正しく認識、購入を検討するのが一番良いように思います。