音楽制作やマスタリングの過程で、ビンテージの温かみと現代の精密性をどう組み合わせるかという悩みは、多くのプロデューサーとエンジニアが共有する問題です。このような独特のニーズに応えるために複数のプラグインやハードウェアを駆使する必要があり、その結果として作業が煩雑になることが多かった。
しかし、”RZ062 Equalizerを使用すると、この悩みは一気に解消する方向に動き出せます。このプラグインはKlangfilmのビンテージEQモジュールを精緻に再現し、ボーカル、ベース、ドラムなど、どの音源にも深みと温かみを与えることができます。左右(L/R)と中側(M/S)の独立したコントロール機能により、ステレオイメージも微細に調整できます。さらに、入力と出力のレベル調整が可能なため、音のバランスを精緻にコントロールできます。
このように、RZ062 Equalizerは一つのプラグインで複数の問題を解決し、音楽制作の新たなスタンダードを確立する力を持っています。
この記事ではRZ062 Equalizerの音質やRZ062 Equalizerのコアとなるサチュレーションの質感などを実例を交えながら解説していきます。
- KlangfilmのビンテージEQモジュールを再現
- TYPE-AとBの二種類のイコライザーを用意
- M/S処理が可能
- 動作が不安定な場合がある
Audified RZ062 Equalizer 概要
メーカー | Audified |
製品名 | RZ062 Equalizer |
特徴 | 2 つの EQ プラグインがバンドルに 精密なバルブ回路モデル 左/右および中央/側面のコントロールと変換 較正 入出力レベル制御 自動出力パラメータ(リンク) 最もスムーズな EQ サウンドが利用可能 |
システム | macOS 10.11 – macOS 12 Monterey (Intel / M1 Apple Silicon 対応) (64 ビットのみ) AAX、AU、VST2、VST3 ウィンドウズ Windows 7 ~ Windows 11 (32 / 64 ビット) AAX、VST2、VST3 |
バージョン | v2.1.0(2023-09-07) |
認証方式 | シリアル認証 |
認証数 | 表記なし |
容量 | 451.9MB |
マニュアル | プラグイン内に搭載、英語版のみ |
価格 | 108.90ドル |
備考 | 体験版あり、 アンインストーラー装備 リリース日2017-08 |
Audified RZ062 Equalizerは、1950年代にSiemensによって作られたバルブEQ(イコライザー)を忠実に再現したものです。このプラグインには「A」バージョンと「B」バージョンがあり、それぞれが異なる特性を持っています。元々はKlangfilmシステムの一部として設計され、非常に高い品質基準で製造されました。
このプラグインは3つのEQバンドを提供しており、外側の二つのバンドは固定された周波数範囲をカバーしています。中央のバンドは、RZ062AとRZ062Bで異なる特性を持っています。例えば、RZ062Aの中央ダイヤルは「ティルトEQ」として機能し、650Hzを中心に周波数応答に傾斜をかけます。
Audified RZ062 Equalizer レビュー
それでは具体的なレビューをしていきたいと思います。レビュー内ででの帯の色には次のような意味合いがあるので参考にしてください。
- 青帯はメリット
- 赤帯はデメリット
- 緑帯はその中間
音質
3.5
実機に通じる音質と空気感
Audified RZ062 Equalizerは真空管ベースのイコライザーサウンドです。デジタルのような鋭さはありませんが、その分全体的に包容力に溢れた音質で、好みのトラックをブラッシュアップできます。
それでは実際どのような音質なのかを確認してみましょう。
設定は以下の通りです。
Audified RZ062 EqualizerのAとBでは基本同じパラメーターなのですが、音が全然違います。Bの方がより明るい印象があります。詳しくは後述しますが、これはAとBによって特性が異なるためです。なので、このあたりの特性を理解したうえで使い分けをするのが重要です。
では次に、drum RZ062 Equalizer Aのミッドコントロール聴いてみましょう。
drum RZ062 Equalizer A のミッドは650Hzを中心にEqualizerのかかり方が反対方向に増減するタイプです。
使ってみると意外と悪くない印象です。もちろんロー側が持ち上がるとかなりモコモコなサウンドになりますが、いい塩梅にするとローの密度感が心地よくなります。
では次にサチュレーションサウンドを確認してみます。設定はA/Bともに-16.9dBにしています。
まずこのサチュレーションですが、ABでかかり方が異なるため、深くかけすぎるとすぐに飽和するので注意が必要です。
しかしながら、効果としては絶妙な心地よさがあり、嫌味にならない程度に音に明るさも加えられるので、エキサイターのような中毒性があります。
両者ともに特徴がありシチュエーションによって使い分けができるでしょう。またサチュレーションは設定次第でさらに音を作り込めるレベルです。
機能性
3.5
両者の違いについて
赤がB薄紫がAになります。イコライザーを設定しない状態でもすでに、10kHz以上が2〜3dBほどブーストされています。実機の特性がそうなのかはわかりませんが、当時は高域を持ち上げることが良いサウンドの1つの目安になっていので、そのような特性を再現している可能性もあります。
Audified RZ062 EqualizerのAとBではデフォルトでの高域の出方が違う(Bの方が高域が強い)ので用途別に使い分けるのが良いでしょう。
ただ、個人的に2つのプラグインに分けるのではなく、1つのプラグインにしてスイッチで切り替える方がユーザービリティは高いものになった気がします。
低域に関して
定期に関しては同じパラメーターの数値を操作しても結果は大きく異なります。例えば、中央ノブの一番下、これはイコライザーのローの成分を操作するパラメーターです。
赤がB薄紫がAになります。
同じようにパラメーターを動かしても基本的にはタイプAとBは同じ挙動になります。
ただ、デフォルトで立ち上げた段階で高域の持ち上がってしまってそれにより出力される量も異なるはゲイン調整においては注意が必要です。
RZ062は高域と低域がシェルビングなのはAB共通です。ただ注意がAでは650Hzを軸として、増減するユニークなタイプです。Bは1.4kHz、2kHz、2.8kHz、4kHzのベルタイプのイコライザーになりますがQ幅は変更できません。
コントロール種類 | 周波数範囲 | dB範囲 | その他の特性 |
---|---|---|---|
高音コントロール | 1 kHz ~ 10 kHz | +12 / -18 dB | |
低音コントロール | 40 Hz ~ 1 kHz | +12 / -20 dB | |
ミッドコントロール(RZ062A) | N/A | N/A | 中間周波数(650 Hz)で全体の周波数曲線を回転 |
プレゼンスコントロール(RZ062B) | 1400, 2000, 2800, 4000 Hz | 0 ~ 4.8 dB | スケールの各四半期で0~6の単位、0.8 dB単位で調整 |
操作性
3.5
プリセットはA32、B30
Audified RZ062 EqualizerのAとBで用意されているプリセットの数は違います。それでも両者平均30近いプリセットがあり、Audified U73b Compressor 同様少数精鋭の印象です。
また、Audified U73b Compressor やU87 Saturatorにあったオーバーサンプリングは廃止されています。Calibrationをデフォルト設定にできる機能はRZ062 Equalizerにも搭載されています。
安定性
2.5
CPU負荷はイコライザーとしては少し高め
高いと言っても使えないレベルではありません。オーディオトラックにAudified RZ062 Equalizerを1つだけ挿した状態のCPU負荷です。A/Bの両方の負荷は次のようになります。
負荷自体は低いわけではありません。それなりに負荷をかけているのがわかります。なのでソフトシンセとの併用については少し注意が必要なレベルかもしれません。
不安定な動作をする場合がある
これはあくまで私の環境だけの可能性もあることを理解していただきたいのですが、私の環境ではAudified U73b Compressorと同様にRZ062 Equalizerを他のプラグインスロットに移動する場合や、プリセットを変更するときなどにDAWが落ちるなどの経験をしました。
また、ブラウザソフトを使用しながらDAWを動かしているとレインボーカーソルが数秒回るという動作も体験しました。
なのでAudified U73b Compressorを使用する場合はいつも以上にこまめなセーブを心がけるのがオススメです。
基本、LogicのAU環境は個人的な印象としてあまりプラグインが安定しないイメージがあるので話は参考程度にとどめていただければと思います。
CPU負荷計測環境
パソコン Macmini2018
CPU Corei7(i7-8700B)6コア
HT使用時12コア 3.2GHz/ターボブースト(TB)使用時4.6GHz
メモリ 32GB
システム OS12.6.1 Monterey
Audio/IF Focusrite RED 8PRE
バッファー 256
DAW LogicPro10.7.7
48kHz/24bit
再生ストレージ SSD
価格
3.5
Audified RZ062 Equalizerの価格は108ドルです。この価格帯に意味を見いだせるのは中級者以上と言えるでしょう。個人的には、Audified RZ062 Equalizerの質感を好んで使う人でないと、コスパが良い買い物として解釈するのは難しいかもしれません。
単体では108ですがAudified RZ062 Equalizerの他に、U73b Compressor、U78 Saturatorを含んだBoutique Studio Bundleでは218ドルで購入できる魅力的なセットもあります。
PluginBoutiqueで購入すると月替りプラグインが無料でもらえます。無料と行っても100ドル相当に売っているプラグインがもらえるのでかなりお得です。
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まとめ
Audified RZ062 Equalizerはシンプルで使いやすイコライザーです。パラメーターの少なさから使うことをためらう人もいるかもしれませんが、かかり方と音質、とくにキャリブレーションと併用したときの音質は癖になります。
音質:Audified RZ062 Equalizer A/Bともに音質はほどよくクリアで、サチュレーションの質感が気持ち良い
機能性:Audified RZ062 EqualizerのA/Bそれぞれでデフォルトの音が違う。Bの方が高域が強い、低域と高域のパラメーターは同じだが、音質は違う
操作性:画面の拡大、キャリブレーションのデフォルト設定、プリセットの数などとくに問題はない。Audified RZ062 Equalizerからオーバーサンプリングはなくなった。
安定性:不安定な挙動をするときがある
価格:108ドル、初心者にかんたんにおすすめできる価格ではない。中級者から上級者がAudified RZ062 Equalizerの音質と機能性を理解したうえで購入するのが良い。
Audified RZ062 Equalizerは初心者でもかんたんに扱うことはできますが、使いこなすとなるとマストイコライザーを所持し、他のイコライザーの音質の違いやイコライザーの基本的な知識を持ち合わせている方がより深く使い込めると思います。