世界でもっとも使われているイコライザーの1つがMANLEY ( マンレイ ) / Massive Passive Stereoです。そしてそれをとてつもないレベルでエミュレートしたのがPulsar Audio MASSIVEになります。
音は感動ものです。音の明瞭度や解像度など抽象的な世界観を具体的に提示してくれるサウンドに心底惚れてしまいました。しかし、これをDTM初心者やミックスに不慣れな人にオススメできるか?と言われたら少し悩むほど、使い手を選ぶVSTプラグインです。
なので「セールだ安い!とりあえず買っておけ!」と飛びつく前に、どんな音でどんなことができるのか?を考える手助けになれればとこの記事では思い使い方や音質等の違いについて解説しています。
- 無理がない自然なイコライジング
- 高品質なパッシブトーンを再現
- トランスの切り替えができる
- Analyzer画面の表示に違和感
- 負荷が高い
Pulsar Audio MASSIVE 概要
メーカー | Pulsar Audio |
製品名 | MASSIVE |
特徴 | MANLEY Massive Passive Stereoをハイクオリティで再現 真空管イコライザーの音質 ビジュアルカーブ編集 ミッドサイド処理 オーバーサンプリング メータリング&スペクトラムアナライザ スマートGUI |
システム | マック MacOS 10.8 – 11.1 (M1 Appleシリコンをサポート)(64ビットのみ) Core i3 / i5 / i7 / Xeon 4GBのRAM GPU: OpengGL2.0互換GPU モニター: 解像度:最小1024×768 ウィンドウズ Windows 7SP164ビット/Windows8.164ビット/Windows1064ビット Core i3 / i5 / i7 / i9/XeonまたはAMDクアッドコア最小 4GBのRAM/1GBの空きディスク容量 OpengGL2.0互換GPU モニター: 解像度:最小1024×768 |
バージョン | v1.2.7(2023-04-30) |
認証方式 | iLokアカウント認証 |
容量 | 453.8MB |
マニュアル | 英語版のみ |
価格 | $149(メーカー価格) |
備考 | 体験版あり 14日間使用可能(機能制限なし) |
MASSIVEはエミュレート力で高い評価を得ているPulsar AudioがMANLEY ( マンレイ ) / Massive Passive Stereo をエミュレートした高品質なイコライザープラグインです。
実機のMassive Passive Stereo を使用したエンジニアからは「ナチュラルでオーガニックなアコースティックトーン」と評価され、世界中の有名スタジオに導入されています。
つまり、MASSIVEを手にするということは世界最高峰クラスのイコライザーを手にするのと同じになります。
ちなみに実機では通常版とマスタリング版の2種類が存在しています
詳しい機能についてMASSIVE機能の項目で詳しく解説しますが、MASSIVEではその両方の機能を補うことが可能です。
パッシブイコライザーを使うメリットについて
Pulsar MASSIVEはパッシブイコライザーはになります。パッシブイコライザーの特徴は電子的な増幅素子を使わないため、音色に色付けがなく、元のある音を正しくブーストカットすることができます。
しかし、パソコン内部だけで完結するならばパッシブやアクティブは関係ない?と思うかもしれませんが、再現しているイコライザーがパッシブである場合、ましてそれが優れたエミュレートであればパッシブ特有の音質を手にすることができます。
MASSIVEではパッシブ特有のクリーンと真空管特有のサチュレーションが非常に高いレベルで融合されているので、音の解像度を求める人にとっては有効だと言えます。
Pulsar Audio MASSIVE レビュー
音質
4.5
音質比較にはSoftubeが開発したPassive EQを使用します。Passive EQもMANLEY ( マンレイ ) / Massive Passive Stereoをエミュレートしています。まずはLOWで10dBブースト、Bandwithは中央、周波数は47Hzという同じ設定で音質を聴き比べてみます。
キック
47Hz帯域を10dBブーストするというのはあまりないとは思いますが、音がスッキリしているのが分かると思います。
まずこの時点でMASSIVEは非常に地味なかかり方をしているのが分かります。そしてこの地味さに価値を求められる人がMASSIVEを使うことで喜びを得られる人になります。
ちなみにLogicのデフォルトのイコライザーを近い設定にするとこのような感じになります。
一聴するとLogic のChannel EQが一番音が太いように感じるかもしれません。もちろんその捉え方は間違ってはいません。しかし、私がここで求めるのはローエンド付近の明瞭感です。Channel EQでは音量感は増えますが、そこに明瞭感があるかと言われるとそうは感じません。
続いてスネアに使用してみます。設定はMASSIVEのプリセットSnare Top1の値をPassive EQに合わせています。
スネア
こちらもMASSIVEならでのこもりすぎずに解像度を保ち、芯があっても耳にいたくない音質になっています。Passive EQの方が少し軽い感じになります。
どちらが良いという話ではなく、これらの音質の違いから「どちらが自分に適しているか?」をしっかりと見極めることが大切です。
ドラムミックス
ドラムのバスチャンネルにかけてみました。設定はMASSIVEのMix Buss MS Magicl!です。名前からして良い感じにしてくれそうです。ですがPassive EQ等にはDrive等やM/S処理がないのでその部分はカットしてあります。
ミックスにまとめると明瞭感がさらに分かるように思います。またPassive EQではどうしても腰が高くなってしまいますが、MASSIVEはどっしりとした安定感を確保しています。
ちなみに、Passive EQに合わせるためにM/S処理と、Drive機能をカットしていましたが、本来のプリセットは次のような音になります。
より品のあるドラムミックスが施されています。まさにマジカル!と言ったところでしょうか
ベース
ベースはPassive EQのElectric Bassのプリセットの数値をMASSIVEに入力しています。
MASSIVEでは弦のこすれる辺りが気持ち前に出てくるような雰囲気があります。
ギター
クランチ系のカッティングギターで比較してみます。
作り込まれた音なのでかなり音色が変化します。
Passive EQの方が高音域が耳につく印象です。元々Passive EQは通しただけでも高域が若干持ち上がる傾向にあるので、その部分が作用しているように思います。
スピード感が欲しい場合はPassive EQの方がよい結果を得られるケースもありそうです。
ミックス
最後にドラム、ベース、ギターをミックスした状態での比較を行います。
プリセットはMASSIVEのClarityを使用しPassive EQで同じ数値を入力しています。
Passive EQでは中低域が削れドンシャリ気味になってしまいますが、MASSIVEはさすがです。すべての音にフォーカスがあたりながらしっかりとイコライジングの結果が反映されています。
めちゃめちゃ気持ち良い音になりました。
さいごに、Logic EQ(Channel EQ)で同じような設定にするとどういう音になるかを聴いてみます。
ハイは突き刺さり、ローエンドは見えにくい印象です。やはり専用のイコライザーとDAW付属のイコライザーではまったくと言っていいほど音質が異なります。
機能性
4
Pulsar Audio MASSIVE | Massive Passive | Massive Passive マスタリングバージョン | |
---|---|---|---|
ゲイン幅 | 20dB ブーストカット | 20dB ブーストカット | 11dBブーストカット |
マスターゲイン | -12dB〜+12dB | -6dB〜+4dB | -2.5dB〜-2.5dB |
フィルター幅 | ローパスフィルター 6kHz〜18kHz OFF ハイパスフィルター 22Hz〜220Hz OFF | ローパスフィルター 6kHz、7k5、9kHz (18dB / octave) 12kHz (24dB / octave) 18kHz (60dB / octave) OFF ハイパスフィルター 22、39、68、120、220 Hz (18 dB / octave) OFF | ローパスフィルター 15kHz、20kHz、27kHz、40kHz (18dB / octave) 52kHz (30dB / octave) OFF ハイパスフィルター 12、16、23、30、39 Hz (18 dB / octave) OFF |
真空管 | 12AU7 x2、6414 x4 | 12AU7 x2、6414 x4 | |
トランス | 切り替え方式 | 自社オリジナル | 自社オリジナル |
機能的には実機の無印とマスタリング版の両方をカバーできる機能になっているのがわかります。実機にはない機能として搭載されているのが次の3つになります。
TRNSFO
Drive
Auto Gain
興味深いのがトランスを切り替え方式にしているところです。
トランスは音に強く影響する箇所です。だからこそMANLEYは世界最高のスタッフでオリジナルの電源回路を制作したわけです。これがMANLEYサウンドのコアと言っても過言ではありません。
当然Pulsar AudioのMASSIVEもトランスの影響を正しく再現しているわけですが、「もし世界最高のMANLEYのトランス部を切り替えることができたら」こんな遊びココロをPulsar Audioは持ってしまったのかもしれません。
さてこのトランスですが、1はマンレイオリジナルのエミュレーションで、2がPulsar Audio独自のもの、そしてOFFにするとトランスの影響を受けていないサウンドになります。
しかし、このトランス音の変化が良い意味で少ないです。そのため、普通に切り替えただけではその音質差はあまり感じられません。
ではどうすれば感じられるのかというと、Driveを11dBブーストすると倍音が発生しトランス影響を音として感じられるようになります。
このドライブに関しても非常に歪みにくくいのですが、ドライブ=安いサチュレーションみたいな歪みがなく、少なくても10dBはクリーンな音質を保ってくれます。
ではトランスがどのような音質になるのか比較してみます。ここではドライブを20dBに設定しています。
Trans2の方がスッキリしている印象ですが、すこしドライすぎる感じもあります。TUBE感を出したいならば私はトランス1を選択します。
ちなみにDriveをマックス(40dB)にするとこのような歪み方になります。
ここまで歪ませるのに40dBのマージンがあるというのはある意味すごい気がします。
操作性
4
Pulsar Audio MASSIVEの素晴らしいところは音質だけはなくかゆいところにピンポイントで手が届く操作性にあります。
その中で私が多様する機能をいくつか紹介します。
アンドゥ・リドゥ+A/B比較機能
地味ながらものすごく使えるのがアンドゥ・リドゥ機能です。DAWなどでやり直し等をするための機能でお世話になったことがない人はいないと思います。
しかしこれがエフェクトプラグインに搭載されているのは割と珍しいです。Pulsar Audio MASSIVEはアンドゥ・リドゥが無限(プラグインを立ち上げてから変更したものすべてに適用)なので「あのときの設定に戻りたい!」というときに便利です。
そして設定を一瞬で変更できそれらを比較できるA/B機能これもかなりの時短に繋がります。
地味ながら一度使うと元には戻れないほど便利な機能です。
パラメーターロック機能
Pulsar Audio MASSIVEで便利だと思うのがパラメーターロック機能です。これのおかげで特定のパラメーターを固定したままプリセット等を変更することが可能です。
ロック機能を使うには固定したいパラメーターの上でコントロールを押しながらクリックすると以下のようなウィンドウが開くなでLock Parameterを選択します。
またイコライザーをフラットにした場合はイコライザーカーブが表示されているウィンドウ内の数字(赤ならば1)をオプションを押しながらクリックすることでフラットにできます。
特段すごい機能ではありませんが、操作性をシンプルかつ合理化することで作り込みたい音までの経路を最短にしてくれます。こういうところに目がいくメーカーのエフェクトプラグインは信用できます!
これ以外にもパラメーター上にカーソルを合わせると数値が現れます。数値はテンキーによる入力も可能なので、ノブで気になる数値をあわせるために細々とした作業する必要がないのも素晴らしいです。
ここまでは非常に私好みの操作性なのですが、スペクトラム表示は少し苦手な部分があります。
これは60Hzのサイン波を入力した画像ですが灰色で入力されている部分はたしかに60Hz付近なのですが、1と書かれたイコライザーの周波数は131Hzとなっています。また2、3,4,はすべて同じ周波数にしているのにも関わらず、スペクトラム表示上では同じ位置になりません。
これはFREQUENCY Hz書かれたノブの周波数が優先されるためだと思われますが、スペクトラム表示上での示されている周波数の場所と違うのは少し落ち着きません。
安定性
4
CPU負荷はそれなりに高く20%〜25%程度を消費します。SoftubeのPassive EQは最大でも23%くらいなのでMASSIVEの方が若干高い感じです。
また、MASSIVEはオーバーサンプリングを最大で4倍まで設定できますが、その場合はCPU負荷がかなり上がります。
ここで1つ裏技ではないのですが、MASSIVEはスペクトラムアナライザーをOFFにすることが可能です。
すると僅かながらCPUの負荷を抑えることが可能になります。
ただ私の環境がMacmini2018でグラボが搭載されていない状態での計測なのでグラボを搭載している。またはAppleシリコン等のマシンではこの辺りの負荷はまた変わってくる可能性があります。
CPU負荷計測環境
パソコン Macmini2018
CPU Corei7(i7-8700B)6コア
HT使用時12コア 3.2GHz/ターボブースト(TB)使用時4.6GHz
メモリ 32GB
システム OS11.6.5Big sur
Audio/IF APOGEE Symphony Ensemble
バッファー 256
DAW LogicPro10.7.3
48kHz/24bit
再生ストレージ SSD
音質面を考えるとCPU負荷は決して高すぎるという印象はありませんでした。
価格
4
PASSIVE EQ | MASSIVE | PASSIVE EQ(※) | |
---|---|---|---|
メーカー | UAD | Pulsar Audio | native-instruments |
価格 | $299.00→$149(¥18,876) | $163.89→$97.90(¥12,464) | ¥13,400 |
サイト | UAD公式サイト | PluginBoutique | native-instruments |
PASSIVE EQは単体販売を終了しpremium-tube-seriesに統合されています。
Pulsar Audioのプラグインはクオリティもさることながらコストパフォーマンスが良いです。今回もリリース価格は$163と機能面や音質面から行っても高すぎる印象はありませんが、イントロセールということで$97はお買い得といえます。
また、PluginBoutiqueの場合は月替りのおまけプラグインもついてくるので、そのおまけが欲しいものであれば、さらにお買い得感は増えるでしょう。
プラグインでこれだけよいとやっぱり実機が欲しくなります.
MANLEY ( マンレイ ) / Massive Passive Stereo 関連動画
われらが和田さんが実機と、Massive Passive StereoをエミュレートしたUAD,とSoftubeのプラグインとの比較動画です。
まとめ
しっかりと触ってみると経験値にみあった量だけ答えを返してくれるイコライザーです。
音質に関しては好き嫌い等もありますが、私は好きな音質ですし、何よりも真空管的な質感が他のプラグインではあまり得られない領域で再現しているように感じました。
DTM初心者ミックスに不慣れな人がこれをかったらマジックで瞬時にミックスがかっこよくなるタイプではありませんが、音の明瞭度を確保しながら低域をクリアに見せたり、ハイをブーストしても耳が痛くなるようなことはない、
など、とにかく高品位なミックスを提供してくれます。
DAW付属のイコライザーの音質の特性をある程度理解したうえでよりレベルの高い音作りやマスタリングをしたいのであれば
セール中に買うのはオススメです!