音楽制作のデジタル化が進む中で、多くのクリエイターが一つの問題に直面しています:デジタル音源の「冷たさ」。アナログ機器が持つ温かみや厚み、ハーモニックの質感がデジタル環境ではなかなか再現できないのです。この問題に対する究極の解決策が、Solid State Logic(SSL)から登場した「SSL Fusion Vintage Drive」プラグインです。
このプラグインは、アナログの温かみをデジタル環境で忠実に再現します。その根拠は、SSLの長い歴史と業界での高い評価にあります。特に注目すべきは、独自の「Density」と「Drive」機能。これらは、非線形のサチュレーションとハーモニック飽和を絶妙にコントロールし、透明感と自然さを保ちながらも、アナログ機器特有の質感を提供します。さらに、プロフェッショナルなプリセットとEco ModeによるCPU負荷の軽減は、このプラグインが業界標準の品質を持つ証拠です。
また、このプラグインはオールインワンソリューションとしても優れています。トラック作成からマスタリングまで、一つのプラグインで多様な音作りが可能です。これにより、複数のプラグインを組み合わせる手間が省け、作業効率が大幅に向上します。
SSL Fusion Vintage Driveは、アナログとデジタルの最良の特性を融合させ、音楽制作における新たなスタンダードを築きます。このプラグインが提供する高度なサウンドシェイピングと操作性の簡便さは、初心者からプロフェッショナルまで幅広いユーザーに対して、音楽制作の新たな可能性を広げることでしょう。
- 透明感と自然さを保ちながらも、アナログ機器特有の質感を提供
- ゲイン調整を自動で行うオートゲイン機能
- UIのサイズ変更ができない
SSL Fusion Vintage Drive 概要
メーカー | Solid states logic(SSL) |
製品名 | Fusion Vintage Drive |
特徴 | SSL Fusion Vintage Driveセクションをモデルを再現 ノンリニア・サチュレーション回路 DENSITY と DRIVE は相互作用して倍音、ソフトクリッピング オリジナル信号と並行してブレンド AUTO GAINによるゲインを自動調整 UNDO/REDO サポート |
システム | すべてのテーブルタイポグラフィはMサイズにする |
バージョン | v1.1.4(2023-09-27) |
認証方式 | iLok認証 |
認証数 | 2 |
容量 | 311.4MB |
マニュアル | 英語版のみ |
価格 | $218.90→$32.99 |
備考 | 体験版あり(14日間期間限定) |
SSL Fusion Vintage Driveは、Solid State Logic(SSL)が開発したプラグインです。このプラグインは、SSLの高評価を受けたFusionハードウェアのVintage Driveプロセッサーをデジタルでエミュレートしています。主な特長としては、優れたDSP設計、非線形の飽和回路、そしてオリジナルのアナログ回路設計に基づいてモデリングされています。
このプラグインは、穏やかなハーモニック飽和(harmonic saturation)とソフトな圧縮(soft compression)を生成することができ、アナログハードウェアを”アナログのスイートスポット”まで駆動させるような効果を模倣します。また、より強力なアナログ歪み(analogue distortion)も再現可能です。このようにして、トラック、グループ、ミックス、マスターにオーガニックなアナログ感を加えることができます。
考察内容
- アナログとデジタルの融合: SSL Fusion Vintage Driveは、アナログの質感をデジタルで再現することができるとされていますが、これはどのような音楽制作のシーンで特に有用なのか?
- 多様な用途: このプラグインはトラックからマスタリングまで幅広く使用できるとされていますが、どのようなジャンルやスタイルに特に適していると考えらるのか?
- 価格と性能: このプラグインは$199.99(税別)が現在32.99$になっているが、この価格帯で提供される性能と機能は、他の類似プラグインと比較してどうなのか?
SSL Fusionプラグインはこれ以外にも以下の4つがああります。
機能名 | 役割・特徴 |
---|---|
SSL Fusion Transformer | 音源に特定の「色」を付け、厚みや温かみを追加。全体的な音質を豊かにする。 |
SSL Fusion Violet EQ | 非常に精密な周波数調整が可能なイコライザー。多くのバンドと幅広いQ設定で、微妙から大胆な調整が可能。 |
Fusion Stereo Image | ステレオフィールド調整、視覚化ツール |
SSL Fusion HF Compressor | 音源の高域に対するダイナミクスの制御。高域が耳障りにならず、明瞭性とプレゼンスを高める。 |
SSL LMC+ | SSL 4000E コンソールの Listen Mic Compressor を再現 |
すべてを揃えると、ハードウェアのFUSIONと同等の機能を手に入れたことになります。
上記で4つ書いたのは、機能的には4つなのですが、ハードウェアのFusionでは、HF コンプレッサーセクションの “IN” ボタンを 5秒間押し続けることでLMCコンプモードに変化させられます。”X OVER” は Wet と Dry のミックスコントロールとなります。
このLMCコンププラグインまで揃えると、ソフトウェアFUSIONとして使い切ることができます。
SSL Fusion Vintage Drive レビュー
それでは具体的なレビューをしていきたいと思います。レビュー内ででの帯の色には次のような意味合いがあるので参考にしてください。
- 青帯はメリット
- 赤帯はデメリット
- 黒はどちらでもない
音質
4.5
音の質感を絶妙に整える高品質なサチュレーション
SSL Fusion Vintage Driveを一言で言うならば上品なサチュレーションです。DRIVEをあげても派手に歪むようなタイプではなく、音の密度を保ちながら程よく飽和する印象でどことなくハードウェアの質感があり、さすがSSLクオリティといえます。
素材はボーカル、ギター、ベース、ドラムと素材を選ばない万能タイプですが、むやみに使うと飽和感が目立つので、ドライブを抑えめにするか特定のトラックだけに使うのが良いでしょう。
では実際のサンプルで確認してみましょう。
この曲のドラムをまとめたバス・トラックに使って効果を確認してみます。設定は画像の通りです。
全体的に天井が広がった印象があり、よりダイナミックスで迫力のあるサウンドになりました。
印象的にはKush AudioのOmega458Aと似た効果ですが、MODEL458Aは高域のプッシュ感が強く派手に聞こえますが、SSL Fusion Vintage Driveは中高域付近を上品にプッシュしてくるので、私にとってはこちらの方がまとまりやすく使い勝手が良いです。
SSL Fusion Vintage Driveでユニークなのは、各パラメーターの効果です。詳しくは後述しますが、DRIVEとINPUT TRIMの関係はかなり密接で、サチュレーションの幅は大きく異なるので、パラメーターの数以上の音作りが可能です。また、その中でDensityはMIN〜MAXまですが、想像以上に音が変わります。
トランジェントを強調したような音になり、調性になれるまでには多少時間を技術を必要とするパラメーターですが、ただのサチェレーションではないおもしろい効果です。
SSL Fusion Vintage Driveを使うと使用したトラックの画角を見やすくするような形になり。音像感もはっきりとします。ですが派手すぎることないためトラックの存在感を隠し味的にブラッシュアップするという使い方ができるようになります。
SSL Fusion Vintage Driveは、ヴィンテージサウンドの再現からマスタリング、アコースティック楽器の録音、ヒップホップとR&B、電子音楽制作、ライブ録音、ミックスダウン、そしてサウンドデザインまで、多様な音楽制作のシーンでアナログの温かみと質感をデジタル環境で忠実に再現します。
このプラグインは特に、質感や温かみが重要な要素とされるプロジェクトでその価値を発揮し、アナログとデジタルの最良の特性を融合させることで、音楽制作における新たな可能性を広げます。
機能性
4.5
「Density」と「Drive」による奥深い音作りが可能
SSL Fusion Vintage Driveプラグインには「Density」と「Drive」という二つの主要なコントロールがあります。これらは連携して働き、ハーモニクス、ソフトクリッピング、そして自然な圧縮を生成します。特に「Density」は、音の密度や厚みをコントロールする役割を果たします。
「Density」と「Drive」の相互作用によって、より精緻なサウンドシェイピングが可能になります。具体的には、「Density」が高く設定されると、音にコンプレッション感が強くなり、音のエッジがなくなって全体的に太くなるとされています。
この機能は、特にアナログハードウェアのような温かみや厚みをデジタル環境で再現したい場合に有用です。また、多様な音楽ジャンルやプロダクションステージでの使用が考慮されています。
「Density」と「Drive」のバランスが特に重要になるシナリオは、音楽のジャンルや目的によって異なります。例えば、エレクトロニック音楽では、ドラムやシンセサイザーの音を厚くしたい場合に「Density」を高く設定すると有用です。一方で、アコースティックな楽器やボーカルを自然に聞かせたい場合は、「Drive」を控えめにして「Density」を適度に調整すると良いでしょう。
「Density」が特に効果的なのは、本来「薄い」または「軽い」と感じられる音源です。例えば、細かいパーカッション、シンセのリード音、またはアコースティックギターなど。これらの音源に「Density」を適用することで、より豊かで厚みのある音に仕上げることができます。
AUTOGAINの補正について
SSL Fusion Vintage DriveのAUTO GAINはINPUT Trimの量に反応します。
例えばINPUT Trimの量は固定にしてDRIVEやDensityを変換させてもオートゲインはそこまで反応しません。
一方でINPUT TrimをMAXにした場合でオートゲインを適用させるとINPUT Trimで稼いだ数値をオートゲインがほぼほぼざっくりと補正してくれる形になります。
操作性
4.5
プリセットのクオリティが高い
SSL Fusion Vintage Driveは数少ないプリセットでありながら幅広いサウンドに適用できる応用性を持っています。
それらのプリセットをA/B比較ボタンで切り替えたり、AのプリセットをBにコピー(逆もまた可能)することでストレスのない操作性が約束されています。
UIの大きさ変更はできない
多くのプラグインで採用されているUIサイズの変更ですが、SSL Fusion Vintage Driveにはその機能がありません。ほどよい大きさのためそこまでサイズ気にする必要がないので必要がないと判断したと思われます。
また、各パラメーターはそのすべてがテンキーによる数値入力が可能なため、テンキーで細かく設定したい人にはオススメです。
安定性
4.5
オーディオトラックに一つだけSSL Fusion Vintage Driveを挿した状態のCPU負荷です。SSL Fusion Vintage DriveにはEco ModeというCPU負荷軽減モードがありそれと比較してみます。
Eco ModeをONにすることで5〜10%CPU負荷が抑えられる印象でした。
ただ、若干音質の違いを感じ取る人もいるかもしれません。その理由は
CPU負荷が軽減されている理由として考えられるのはオーバーサンプリングをOFFにしているためと思われます。
その結果が下記の画像です。赤がEco Mode OFFの状態で紫がONの状態です。
赤色の方が20kHzで切られているのが紫ではそのままになっています。デフォルトではオーバーサンプリングがONでそれをOFFにすることで負荷が軽減できるという見せ方はEco Modeのメリットを上手く見せている気がしますね。
ただ、結論として元々そこまでCPU負荷が高いわけではないので、神経質になる必要はないのかもしれません。
CPU負荷計測環境
パソコン Macmini2018
CPU Corei7(i7-8700B)6コア
HT使用時12コア 3.2GHz/ターボブースト(TB)使用時4.6GHz
メモリ 32GB
システム OS12.6.1 Monterey
Audio/IF Focusrite RED 8PRE
バッファー 256
DAW LogicPro10.7.7
48kHz/24bit
再生ストレージ SSD
価格
4.5
通常 | セール | |
価格 | 218.90ドル | 32.99ドル |
評価 | 2 | 4.5 |
SSL Fusion Vintage Driveと他のプラグインを比較しても、劣ることはなく十分なサチュレーション機能とサウンドを提供してくれます。
Waves J37 Tape: このプラグインは主にテープサチュレーションに特化しています。SSL Fusion Vintage Driveは、テープサチュレーションだけでなく、多機能性を持っているため、より広範な用途で使用できます。
FabFilter Saturn 2: Saturn 2は多機能ですが、操作がやや複雑で初心者には難しい場合があります。対照的に、SSL Fusion Vintage Driveは直感的なUIを持っており、初心者でも容易に使いこなせます。
Soundtoys Decapitator: このプラグインはサチュレーションの種類が限られています。SSL Fusion Vintage Driveは「Density」と「Drive」でより細かい調整が可能で、多様なサウンドを生成できます。
Softube Tape: Softubeのプラグインは高品質ですが、主にテープサチュレーションに限定されています。SSL Fusion Vintage Driveは、その他の多機能性と高度なサウンドシェイピング能力で一歩先を行っています。
Klanghelm SDRR: このプラグインは低価格ですが、プロフェッショナルなプリセットやブランドの信頼性ではSSL Fusion Vintage Driveに劣ります。
以上の比較からも、$32.99という価格でSSL Fusion Vintage Driveを手に入れることができれば、その多機能性、使いやすさ、そしてブランドの信頼性において非常に高いコストパフォーマンスが得られると言えます。
購入のポイント
SSL Fusion Vintage Driveオリジナルの価格が$199.99(税抜き)であることを考慮すると、32ドルは非常に大きな値下げです。価格面から考えても購入のタイミングとしては非常に良いと言えます。
多機能性: SSL Fusion Vintage Driveは、トラック、グループ、ミックス、マスターなど、多様な用途で使用できるプラグインです。この多機能性が32ドルで手に入るのは大きな魅力です。
プロフェッショナルのプリセット: このプラグインには、業界のプロフェッショナルから提供されたプリセットが含まれています。これにより、高度な設定も短時間で適用でき、作業効率が向上します。
アナログとデジタルの融合: このプラグインは、アナログの質感をデジタルで非常に高度に再現しています。特に「Density」と「Drive」の機能は、多くの音楽制作シーンで有用です。
14日間の無料トライアル: もしまだ試していない場合、14日間の無料トライアルを利用して、プラグインの機能や操作性を確認することができます。これにより、購入後のリスクを減らすことができます。
ブランドの信頼性: Solid State Logic(SSL)は、オーディオ機器とソフトウェアの分野で高い評価を受けているブランドです。その信頼性も購入の大きなポイントとなります。
Eco Modeの存在: トラッキングや録音においてCPU負荷を軽減するEco Modeがある点も、多くのユーザーにとっては魅力的です。
以上のポイントを考慮すると、32ドルでSSL Fusion Vintage Driveを購入することは、多くの面で非常に価値のある投資と言えるでしょう。
PluginBoutiqueで購入すると月替りプラグインが無料でもらえます。無料と行っても100ドル相当に売っているプラグインがもらえるのでかなりお得です。
12月の無料特典は
Antares Choir、Drum Synth、Dawesome LOVE、または Loopcloud 1 か月アーティスト プランの無料コピー
今月の購入で限定無料となるため、 対象となる購入のチェックアウト時に、 Antares の Choir または AIR Music Technology の Drum Synth または Tracktion の Dawesome LOVE またはLoopcloud 1 か月アーティスト プランの無料コピーを請求できます。
重要な注意点:
- Rent To Own プランは、無料トランザクション ギフトの対象外です。
- 2023 年 12 月 13 日に終了
- Plugin Boutique アカウントが登録されていることを確認してください。アカウントをお持ちでない場合は、 こちらから作成できます。
- 有料製品をバスケットに追加します (この特典は 無料製品には適用されません )。
- 無料ギフトを選択し、チェックアウトを完了してください。
- 取引の全額 に対してバーチャル キャッシュやクーポンを使用し ないでください。 (ただし、100% 未満の量でも問題ありません。)
重要な注意事項:
- このオファーの製品をすでに所有している場合、代替製品を提供することはできません。
- この製品のコピーを別の製品と交換することはできません。
- この製品のコピーを再販することはできません。
- このプロモーションでは、製品の 1 コピーを請求する資格があります。
- 1 回の取引につき 1 つの無料製品のみを請求できますが、複数の無料ギフトの場合は、すべての無料ギフトを取得するまで個別のトランザクションでこのオファーを引き換えることができます。
PluginBoutiqueでの具体的な購入方法はこちらの記事が参考になります!
まとめ
SSL Fusion Vintage Driveは非常に高品質なサチュレーションで実機であるFusionに搭載された機能をソフトウェア化したものです。
実機にはない機能として、パラレル処理やオートゲイン機能が搭載されているのは実機ユーザーからも魅力的に見えると思います。
このプラグインは、ヴィンテージサウンドを追求するロックやソウル、アコースティック楽器が多用されるジャズやクラシック、サンプリングが主体のヒップホップとR&B、そして電子音楽など、質感や温かみが重視される多様なジャンルやスタイルに特に適していると言えますが、とりあえず高品位なサチュレーションとはなにかを知る良いきっかけになると思います。
音質:中高域の密度が良く、ハードウェアティストが感じられる高級感のある音
機能性:「Density」と「Drive」による機能で想像以上の音色作りの幅がある
操作性:UIサイズの変更は不可、A/B比較ボタン有り、プリセットは少数精鋭の洗練されたものが多い
安定性:CPU負荷はそれほど高くない、Eco Modeはオーバーサンプリング機能を停止したものと思われる。
価格:セール価格は魅力的!とりあずこのサチュレーションを持っておけばサチュレーションの基準として今後の他社のサチュレーションプラグインと比較できるようになる。
思っている以上に音作りの幅が広いのが率直な感想です。必要最低限のパラメーターのため、操作性も問題なく、初心者でも扱うことはできます。ただ、使いこなすとなると中級者以上、また中級者になるため頑張っているミックス初心者のようなスキルが必要です。
SSL Fusion Vintage Driveを触りまくって思ったのは実機のFUSIONが欲しくなりました。
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