デジタル音源の「冷たさ」。アナログ機器が持つ温かみや厚み、ハーモニックの質感がデジタル環境ではなかなか再現できないのです。この問題に対する究極の解決策が、Solid State Logic(SSL)から登場した「SSL Fusion Vintage Drive」プラグインです。
SSL Fusion Vintage Driveは、アナログとデジタルの最良の特性を融合させ、音楽制作における新たなスタンダードを築きます。このプラグインが提供する高度なサウンドシェイピングと操作性の簡便さは、初心者からプロフェッショナルまで幅広いユーザーに対して、音楽制作の新たな可能性を広げることでしょう。
SSL Fusion Vintage Drive 概要
SSL Fusion Vintage Driveは、Solid State Logic(SSL)が開発したプラグインです。このプラグインは、SSLの高評価を受けたFusionハードウェアのVintage Driveプロセッサーをデジタルでエミュレートしています。主な特長としては、優れたDSP設計、非線形の飽和回路、そしてオリジナルのアナログ回路設計に基づいてモデリングされています。
CPU負荷も低いのでソフトシンセとの併用も問題ありません。
CPU負荷詳細
オーディオトラックに一つだけSSL Fusion Vintage Driveを挿した状態のCPU負荷です。SSL Fusion Vintage DriveにはEco ModeというCPU負荷軽減モードがありそれと比較してみます。
Eco ModeをONにすることで5〜10%CPU負荷が抑えられる印象でした。
CPU負荷が軽減されている理由として考えられるのはオーバーサンプリングをOFFにすることでプロが気づくかどうかのレベルの音質差が発生しますが、普通に使用する程度では問題はありません。
CPU負荷計測環境
パソコン Macmini2018
CPU Intel Corei7(i7-8700B)6コア
HT使用時12コア 3.2GHz/ターボブースト(TB)使用時4.6GHz
メモリ 32GB
システム OS12.6.1 Monterey
Audio/IF Focusrite RED 8PRE
バッファー 256
DAW LogicPro10.7.7
48kHz/24bit
再生ストレージ SSD
SSL Fusion Vintage Drive レビュー
SSL Fusion Vintage Driveを一言で言うならば上品なサチュレーションです。DRIVEをあげても派手に歪むようなタイプではなく、音の密度を保ちながら程よく飽和する印象でどことなくハードウェアの質感があり、さすがSSLクオリティといえます。
素材はボーカル、ギター、ベース、ドラムと素材を選ばない万能タイプですが、むやみに使うと飽和感が目立つので、ドライブを抑えめにするか特定のトラックだけに使うのが良いでしょう。
では実際のサンプルで確認してみましょう。
この曲のドラムをまとめたバス・トラックに使って効果を確認してみます。設定は画像の通りです。
全体的に天井が広がった印象があり、よりダイナミックスで迫力のあるサウンドになりました。
印象的にはKush AudioのOmega458Aと似た効果ですが、MODEL458Aは高域のプッシュ感が強く派手に聞こえますが、SSL Fusion Vintage Driveは中高域付近を上品にプッシュしてくるので、私にとってはこちらの方がまとまりやすく使い勝手が良いです。
SSL Fusion Vintage Driveでユニークなのは、各パラメーターの効果です。詳しくは後述しますが、DRIVEとINPUT TRIMの関係はかなり密接で、サチュレーションの幅は大きく異なるので、パラメーターの数以上の音作りが可能です。また、その中でDensityはMIN〜MAXまですが、想像以上に音が変わります。
トランジェントを強調したような音になり、調性になれるまでには多少時間を技術を必要とするパラメーターですが、ただのサチェレーションではないおもしろい効果です。
SSL Fusion Vintage Driveを使うと使用したトラックの画角を見やすくするような形になり。音像感もはっきりとします。ですが派手すぎることないためトラックの存在感を隠し味的にブラッシュアップするという使い方ができるようになります。
SSL Fusion Vintage Driveは、ヴィンテージサウンドの再現からマスタリング、アコースティック楽器の録音、ヒップホップとR&B、電子音楽制作、ライブ録音、ミックスダウン、そしてサウンドデザインまで、多様な音楽制作のシーンでアナログの温かみと質感をデジタル環境で忠実に再現します。
このプラグインは特に、質感や温かみが重要な要素とされるプロジェクトでその価値を発揮し、アナログとデジタルの最良の特性を融合させることで、音楽制作における新たな可能性を広げます。
機能性
4.5
「Density」と「Drive」による奥深い音作りが可能
SSL Fusion Vintage Driveプラグインには「Density」と「Drive」という二つの主要なコントロールがあります。これらは連携して働き、ハーモニクス、ソフトクリッピング、そして自然な圧縮を生成します。特に「Density」は、音の密度や厚みをコントロールする役割を果たします。
「Density」と「Drive」の相互作用によって、より精緻なサウンドシェイピングが可能になります。具体的には、「Density」が高く設定されると、音にコンプレッション感が強くなり、音のエッジがなくなって全体的に太くなるとされています。
この機能は、特にアナログハードウェアのような温かみや厚みをデジタル環境で再現したい場合に有用です。また、多様な音楽ジャンルやプロダクションステージでの使用が考慮されています。
「Density」と「Drive」のバランスが特に重要になるシナリオは、音楽のジャンルや目的によって異なります。例えば、エレクトロニック音楽では、ドラムやシンセサイザーの音を厚くしたい場合に「Density」を高く設定すると有用です。一方で、アコースティックな楽器やボーカルを自然に聞かせたい場合は、「Drive」を控えめにして「Density」を適度に調整すると良いでしょう。
「Density」が特に効果的なのは、本来「薄い」または「軽い」と感じられる音源です。例えば、細かいパーカッション、シンセのリード音、またはアコースティックギターなど。これらの音源に「Density」を適用することで、より豊かで厚みのある音に仕上げることができます。
AUTOGAINの補正について
SSL Fusion Vintage DriveのAUTO GAINはINPUT Trimの量に反応します。
例えばINPUT Trimの量は固定にしてDRIVEやDensityを変換させてもオートゲインはそこまで反応しません。
一方でINPUT TrimをMAXにした場合でオートゲインを適用させるとINPUT Trimで稼いだ数値をオートゲインがほぼほぼざっくりと補正してくれる形になります。
まとめ
メーカー | Solid states logic(SSL) |
製品名 | Fusion Vintage Drive |
特徴 | SSL Fusion Vintage Driveセクションをモデルを再現 ノンリニア・サチュレーション回路 DENSITY と DRIVE は相互作用して倍音、ソフトクリッピング オリジナル信号と並行してブレンド AUTO GAINによるゲインを自動調整 UNDO/REDO サポート |
システム | すべてのテーブルタイポグラフィはMサイズにする |
バージョン | v1.1.4(2023-09-27) |
認証方式 | iLok認証 |
認証数 | 2 |
容量 | 311.4MB |
マニュアル | 英語版のみ |
価格 | $218.90→$32.99 |
備考 | 体験版あり(14日間期間限定) |
SSL Fusion Vintage Driveは非常に高品質なサチュレーションで実機であるFusionに搭載された機能をソフトウェア化したものです。
実機にはない機能として、パラレル処理やオートゲイン機能が搭載されているのは実機ユーザーからも魅力的に見えると思います。
このプラグインは、ヴィンテージサウンドを追求するロックやソウル、アコースティック楽器が多用されるジャズやクラシック、サンプリングが主体のヒップホップとR&B、そして電子音楽など、質感や温かみが重視される多様なジャンルやスタイルに特に適していると言えますが、とりあえず高品位なサチュレーションとはなにかを知る良いきっかけになると思います。
SSL Fusion Vintage Driveを触りまくって思ったのは実機のFUSIONが欲しくなりました。