どうも!リバーブ大好きUG(@96bit_music )です。
最近のDAWにはクオリティの高いリバーブが入っているのでクオリティの面で悩むことはないかもしれません。
ですが、ジャンルによってはキレイすぎるリバーブはマッチしません。このあたりのリバーブチョイスを失敗すると作った曲の微妙さに悩むことになります。
シンセウェイブやLo-fiとかには確かにキレイなリバーブはちょっと
- DAWのリバーブは綺麗すぎる
- 綺麗な響きもいいけれど密度がある響きがほしい
- 昔の曲に使われている人工的なリバーブがほしい
そこでオススメしたいのがNomadFactoryの80s Spaces version2です。
80s Spaceは伝説のハードウェアのリバーブを再現しているので、リバーブサウンドで楽曲に存在感を与えたいなら文句なしにオススメです。そして個人的にはゲートリバーブサウンドが好きな人には強烈にオススメしたいプラグインです。
- 伝説のリバーブをIR技術で再現
- 17のリファレンス リバーブ モデル
- M1Montereyにネイティブ対応
- 620の使えるプリセット
- GUIのサイズが変更できない
80s Spaces version2 概要
メーカー | NomadFactory |
製品名 | 80s Spaces version2 |
特徴 | 250 のインパルス(IR) (v2 で +80) 12 のリファレンス リバーブ モデル (v2 では +5) 510 のプリセット (v2 では +110) インテリジェントな波形概要によるパラメータ表示 |
システム | マック macOS 10.9 以上 macOS 12 (ネイティブ M シリーズ シリコン チップ互換) Intel 64 ビットまたは Apple Silicon 64 ビット AU / VST / VST3 /AAX ウィンドウズ Windows: 7 以上、64 ビット CPU: Intel/AMD 64ビット 64 ビット VST / VST3 /AAX |
バージョン | v2.2.0(2023-09-19) |
認証方式 | シリアル認証 |
容量 | 372.3MB |
マニュアル | プラグイン内に英語版のみ |
価格 | $179(メーカー価格) |
備考 | Version1所有者は無償でアップデート可能 体験版あり 体験版の制限: プリセットを保存不可 セッションのリコールが無効 |
80s Spaces version2はNomad Factoryによって作られたリバーブプラグインで、名前の通り80年代のリバーブサウンドの再現を目指したエフェクトプラグインです。
80年代のリバーブは人工的な響きで近年のナチュラル的な響きとは対照的な音質ですが、近年のシンセウェイブブームもあり再評価されています。
バージョン1 | バージョン2 | |
インパルス(IR) | 250 | 330 |
リファレンス リバーブ モデル | 12 | 17 |
プリセット | 510 | 620 |
対応OS | macOS 10.9 以上 | macOS 12 (ネイティブ M シリーズ シリコン チップ互換) |
80s Spaces version2 レビュー
音質
4
80s Spaces version2は主張が強くナチュラルな響きというよりは「人工的な響き」が前面に出てきます。人工的がよい悪いというよりはその音の存在を求めるかどうかによって使用目的が異なりますが、特定のトラックに80s Spaces version2を使えば存在感を高めてくれることは間違いありません。
普通のドラムと80s Spaces version2を通したものを比較してみます。ドラムはLogic ProのDrum Kit Designerを使いました。
設定は画像の通りです。
かなり大げさにかけていますが、実に存在感がある音色に変化します。
Space DesignerとEnVerbを使って似たようなサウンドを作ってみました。
Space DesignerはIRリバーブで多くのデータがありますし、どこかでIRデータを手に入れることができたなら、80s Spaces version2に近い音は出せるかもしれません。
EnVerbに関してはリバーブの種類こそ選べませんが、エンベロープによるゲート感の演出はかなり細かいところまで追い込むことが可能です。
ですが私の場合80s Spaces version2の質感及び、簡単な操作性で得られるリバーブサウンドが魅力に感じています。
機能性
4
80s Spaces version2でエミュレーションしているリバーブは次の7つ、そして5つのリバーブバリエーションを選択することが可能です。
プリセット名 | 実機名 |
Iconic 20 | Lexicon 200 |
Iconic 24 | Lexicon 224 |
Iconic 48 | Lexicon 480L |
Iconic PCM | Lexicon PCM 60 or 70 |
Event 3000 | Eventide H3000 |
Retro MX16 | AMS RMX 16 |
Japanese 90 | Yamaha SPX 90 |
リバーブタイプは次の5つ
- Hall
- Room
- Plate
- Ambience
- Mics
バージョン1では「これはアルゴリズムなのか?それともコンボリューションなのか?」と海外フォーラムで議論になっていましたが2になって正式に「80s Spaces はコンボリューションリバーブです」と告知されています。
The new version of the 80’s Spaces plug-in offers even more convolution IRs and presets than ever before:
引用元:NomadFactory 80s Spacesより
使い方のポイントとしてはボーカル、ギター、ドラム、何にでも使うことは可能ですが、個人的にはゲートリバーブを使うことで80年代に流行った迫力のあるドラムサウンドをつくることが可能です。
ゲートリバーブについて後述していますが、いち早くしりたい人は先読みも可能です。
操作性
4
リバーブプラグインに限らずプラグインの操作性に求められるのは、操作がシンプルかどうかです。どんなに良い音であっても操作に時間がかかるようなインターフェイスだとクリエイティブな思考はストップしていまいます。
80s Spaces version2ではGUIは一つのウィンドウのみ、シンプルで各ノブの効果もわかりやすいため、想像のための時間を奪われません。
INPUT MIX OUTPUTを除いて考えても操作できるパラメーターは下記の8つ
- PRE DELAY
- ATTAK
- DELAY
- GATE
- LO CUT
- HI CUT
- CHORUS
- WIDTH
(8.12.24と書かれているのはフィルターのカーブです)
シンプルで必要最低限に押さえられていますが、それぞれのパラメータの音の効果が非常にわかりやすいので音作りも実感できます。
地味だけどすごく嬉しいのがアンインストーラーを搭載していること、買う前に一度はデモを試してみたいけど気に入らなかったら削除したい!でもそれがめんどくさい!という人にはアンインストーラーは重要です。
80s Spaces version2のアンインストーラーは
Library/Application Support/Nomad Factory/80s Spacesのフォルダの中にあります。
私にGUIのサイズ変更不可はそれほど大きいマイナスポイントになりませんが、やはり自分の好みのサイズで使いたい人には少し懸念するポイントになるかもしれません。
バージョン1からあった機能かを失念しましたが、2種類のスキンを選択できるようになっています。
スキンの変更は地味にモチベーションが上がるので変更できるのポイントが高いです。
安定性
4
1トラックだけに使った状態ですがほぼ負荷はありません。この負荷だとAUXではなくトラック単位で使用できます。
CPU負荷はほとんどありません。かなりCPU負荷が軽い部類のリバーブといえます。ちなみに13個80s Spaceを指してみたCPU負荷の結果は以下の画像になります。
最近はAUXではなくトラックにリバーブをさしてしまうケースも多くありますが、そでもこの程度の負荷であればあまり気にすることはないように思います。
CPU負荷計測環境
パソコン Macmini2018
CPU Corei7(i7-8700B)6コア
HT使用時12コア 3.2GHz/ターボブースト(TB)使用時4.6GHz
メモリ 32GB
システム OS12.4 Monterey
Audio/IF APOGEE Symphony Ensemble
バッファー 256
DAW LogicPro10.7.4
48kHz/24bit
再生ストレージ SSD
価格
4
$179(メーカー価格)
定価は$179近年リリースされているリバーブの中では決して安い部類ではありません。しかし、80s Spaces version2でしか得られないサウンドはある意味で唯一無二的な存在です。
なので、リバーブのバリエーションを増やす意味でも持っておいて損はありません。バージョン2のリリースセールとして
公式では$179→$39、Don’tCrackでは$179→$29と公式より$10安いです。
80s Spaces version2をリバーブゲートとしておすすめする理由
ゲートリバーブとは?
ゲートリバーブとは残響をノイズゲートというエフェクト(プラグイン)を使って強制的に遮断することで作られたサウンドのことです。
ヒュー・パジャム というエンジニアが1980年前後に多用して有名になったと言われています。冒頭のドラムがゲートリバーブサウンドです。
あまりにも多様されたため今ゲートリバーブを使うと「なんだか古臭い」という印象を受ける世代もあるかもしれませんが、新しい世代には新鮮に映る可能性もあります。
そんなに古臭いかな?
受け取り方は人それぞれだからね
ゲートリバーブの作り方
ゲートリバーブサウンドはDAW付属のエフェクトプラグインでもつくることは可能です。お気に入りのリバーブとノイズゲートを使えばいいだけの話です。
(Logic Proに付属しているリバーブとノイズゲート)
しかし、これはあまりオススメできません。理由は次の2つ
- プラグインを2つ使う必要がある
- ゲートが意図しない動き方をする
個人的にプラグインを使わなくてよいのならば必要以上に使わない方がよいと思っています。それは見た目の問題であったりどちらかの設定をかえればもう一つも変えなければ意図しないサウンドになりがちなだからです。
またゲートの開きはプラグインによって異なるので必ずしも意図した結果になるわけではありません。個人的にLogic Proのゲートの開き方は嫌いです
ちなみにLogic Proのリバーブはボリュームアンプという項目があります。それを短くすることで簡易的なリバーゲートサウンドをつくることが可能です(こちらの方がノイズゲートを使うよりよほどそれらしくなります)
もっとゲートはシャッ!と閉じてほしい
またLogic ProではリバーブをADSR制御すること可能なEnVerbというものがあります。これを使えばゲートリバーブサウンドを再現することが可能です。
上記で紹介している方法を使えば80s Spaces version2を必要ないという人もいるかもしれません。それでも80s Spaces version2をオススメするのいは3つの理由があります。
- EnVerbでは往年の名機といわれた80年代のリバーブサウンドの質感を再現できるわけではない
- 自然なリバーブゲートサウンドになりにくい
- 操作がかんたん
またEnVerbのほうがADSRの設定でより細かくゲート感を演出できますが、リバーブの質自体がどうしても不自然になります。
なので、上記の2つが問題ないのであれば、Logic ProユーザーはSpace DesignerかEnVerbを使う方がよいかもしれません。
EnVerbはパラメータを動かすと音が止まる
EnVerbを使っての比較になりますが、EnVerbはパラメーターを動かすと動かしている最中音に変化はありません。止まったところの設定値の音が反映されます。
確かにエンベロープを動かしている最中の音を確認する必要はあまりないのかもしれませんが、そこだけエフェクトがバイパスされたようになるのが個人的に扱いにくいです。
一度使いにくいと思うとその部分でイライラしちゃいますよね
コンボリューション(IR)リバーブとは
IRリバーブ(コンボリューションリバーブ)とは畳み込み演算方法で作られるリバーブのことであり、色々な場所の響きを録音したデータを元に響きを作り出すため、その場所の特性をほぼ100%再現できるのが特徴です。
家にいながら東京ドームの響きだって作り出せるよ!
コンボリューションリバーブの技術はギターアンプのキャビネットシミュレーターでも使われてますね
ただ、IRリバーブは演算処理にCPUパワーをものすごく消費するのが短所です。
80s Spaces version2がIRリバーブなのかアルゴリズムリバーブなのかはっきりとしていません。(マニュアルには詳しい記載はなし)海外サイトでは左の青いウィンドウにWAVと書かれていることから「IRリバーブではないのか?」という話です
これに関してマニュアルでは次のように明記されています。
Shows the reverb tail waveform. Original shown transparent, and current shown in black with applied attack / decay / gate values.
(リバーブテールの波形を表示します。オリジナルは透明で表示され、電流は適用されたアタック/ディケイ/ゲート値で黒で表示されます。)
しかし、この文言だけを見てレスポンスリバーブかどうかははっきりしないのでもう少し調べてみました。
80s Spaces version2をインストールするとアプリケーションサポートにフォルダが作られます。その中身を確認するとrev detaというファイルがありその容量が141.9 MBあります。
(ちなみにLogic ProのSpace Designerの容量は675MBです)
プラグインだけの容量は22MBなのでこの141.9MBは何に使われているのか?インターフェイスにしては容量が大きすぎますし…そうなるとやはりIRリバーブの可能性が高いように思えます。
しかし仮にIRリバーブであってもIRデータを読み込むことはできないのであくまでデフォルトのデータしか使用できません。
80s Spaces version2を3倍楽しく使う方法
wavesfactoryのCASSETTEをあわせて使う
80s Spaces version2は名前からして80年代のリバーブサウンドを再現するものです。ここで80s Spaces version2と一緒に使うことでより80年代のサウンドを満喫できるプラグインがこちら wavesfactoryのCASSETTEです。これはカセットテープサウンドをエミュレーションしたプラグインです。
使い方は使用したいトラックの一番上にさすだけです。そしてそれらをAUXで80s Spaces version2におくることでカセットMTRの環境を再現できます。
wavesfactoryのCASSETTEを使うことで荒々しく密度が濃いサウンドになり、そこに80s Spaces version2のリバーブを通せば、聞こえてくる音はまさに80年代です!
D16 Group Audio Softwareのdecimort2をあわせて使う
D16 Group Audio Softwareのdecimort2はビットクラッシャーと呼ばれるエフェクトプラグインですが、往年の名機と呼ばれたサンプラーやレコーダーのDA特性を再現できるのが特徴です。
使い方はリバーブの後ろにdecimort2を使うことでリバーブサウンドを良い意味で汚します。こうすることでより80年代のデジタル的なリバーブサウンドをエミュレーションできます。
まとめ
80s Spaces version2をゲートリバーブで使うことをオススメしていますが、もちろん普通のリバーブとして使うのは当然ながらアリです。コーラスをうまく使えばダブラー的な音にもなります。何度もも書いてしまいますたがRetro MX16の音は質感もよく、どんな素材に使っても美しい響きを作り出してくれます。
またそれほど存在感を出したくないけれど薄くかかってほしい場合などはSPX90を再現したJapanese 90がオススメです。
定価で買うのを迷っていた人でも今回のセールは納得の価格になっているように思います。