HIP-HOPやChill、シンセウェイブなどの質感が好きで色々とプラグインを試しているけれどいまいちを求める音にならない
こんな悩みを持っている人はカセットMTRを再現したRobotic BeanのPortatronを使ってみることをおすすめします。
「カセットMTRの再現?またサチュレーション系のエフェクトプラグインでしょ?」
と思うかもしれませんが、PortronはカセットMTRとサンプラーを一緒にしたユニークなソフトサンプラープラグインです。
この記事ではPortronの使用感やメリット・デメリットについてお話します。
- 4TRカセットMTRの質感を再現
- オリジナル波形を読み込みが出来る
- テープタイプを変更可能
- 再生ポイントを調整可能
- エフェクトプラグインではない
- Appleloopsは読み込めない※
- MTRピンポン録音はない
Robotic Bean Portatron 概要
メーカー | Robotic Bean |
製品名 | Portatron |
特徴 | ノイズ、ドロップアウト、ウォブル、 ノーマル/クローム設定のリアルなローファイテープサウンド サンプルのサイズ変更、移動、繰り返しを備えたテープエディタ 3ロケーター キーの自動RTZ 1、2、または4小節ごとの自動RTZ テープ速度0〜200% ディレイとリバーブセンドエフェクト |
システム | VST3、AUまたはAAXホスト 64ビットWindowsまたはMacシステム |
バージョン | v1.01(2022-04-12) |
認証方式 | シリアル認証 |
認証数 | 指定なし |
容量 | 613MB |
マニュアル | 英語版 |
価格 | メーカー価格¥17,816 |
備考 | 体験版 機能 20分間機能します。 ディスクからパッチを保存可能、ロードはできない |
Robotic Bean/Portatronは4トラックカセットマルチトラックレコーダー(通称MTR)の操作性及び音質とサンプラーを組み合わせた非常にユニークな創作ツールです。
最初から多くのプリセットが用意されていますが、オリジナルのオーディオファイルをを読み込ませることができるので、自分甩のローファイサンプラーととして組み上げることができます。
Robotic Bean Portatron レビュー
音質 | |
機能性(オリジナル性) | |
操作性(使いやすさ) | |
安定性(CPU負荷) | |
価格(セールバリュー) | |
総合評価 |
音質
テープサウンドということで比較参考にしたのが、wavesfactoryのCASSETTEです。
PortatronはMTR(1つのカセットに複数のトラックを録音できる)ものでwavesfactoryのCASSETTEとは異なりますが、テープメディアの音質を求めている部分は同じなので参考にしています。
音質に関してはPortatronの方が荒い印象があります。この「粗さ」にどの程度価値を置くのかによっても評価は変わると思いますが、Portatronのカセットテープ特有の解像度が低く中低域に膨らみがある音色はCASSETTEと比べても十分に個性的だと言えます。
あとは音質の「好き嫌い」による評価になってきますが、個人的な意見で言えばカセットとしての音質はwavesfactoryの方が好みです。
テープサウンドはノーマルとクロムタイプの2種類を選択可能です。音質の違いについては以下の2つになります。
NORMAL | 中低域に密度がある |
CHROME | 抜けのあるテープサウンド |
テープ特有の劣化具合やテープコンプレッション的なサウンドは心地よく特定のサウンドをループしているだけでもそれなりの雰囲気になってくれます。
テープ質感は2種類しかありませんが、カセットテープをクリックすると15のテープデザインを変更できます。音に影響はしませんが気分転換になるので個人的にこういう機能は好きです。ただ15パターンもいるかと言われると微妙ですがw
機能性
カセットMTRのインターフェイス(画面)にメロトロンを組みたわせたコンセプトは他の類をみないオリジナリティの高さがあります。
操作性に関しては多少のなれが必要な部分もありますが、複雑過ぎて使えないということありません。そのいくつかを紹介します。
オーディオファイルをかんたんに読み込み可能
オーディオファイルの読み込みはブラウザ画面から読み込む方法とPortatronに直接ドラッグアンドドロップする方法があります。また読み込みファイルはwavファイルだけではなく、mp3やFlac系も読み込ますことが可能です。
再生ポイントを自由にコントロール
サンプルのどの部分から再生するかをロケーターを使って最大で3つまで決めることが可能です。そしてそれらはMIDIキーボードのF#1 G#1 A#1にアサインされているので任意のタイミングで再生することが可能です。
操作性
Portronの再生ストップはDAWの再生に追従します。しかし、Portronに取り込まれたオーディオファイルは取り込んだときのテンポになります。オーディオファイルをタイムストレッチしてテンポをあわせるような機能はPortronにはありません。
ここでのPortronのテンポ調整は基本テープスピードで行うことになります。
Logicに付属しているAppleLoopsをPortatronに ドラッグアンドドロップで読み込ませることも、ブラウザから読み込ませることもできません。
しかし、Logicに読み込ませた後、オーディオファイルとして書き出すことでPortatronに読み込ませることができるようになります。少し手間がかかりますが、お気に入りのAppleLoopsがある場合はこの方法で読み込ませることが可能になります。
テープ速度や再生/停止、ロケーターのポイントはMIDIキーボードにアサインされています。つまりストリングスやギター音源でいうところのキースイッチの感覚です。
それほど複雑なキースイッチではないにしても、鍵盤を表示できるようなオプションがあればより使い勝手がよくなるように感じます。
安定性
単体でチェックしている限りですが特にDAWが不安定になるようなこともありませんし、Portatroが原因で落ちるということも経験はしていません。
CPU負荷は再生だけであれば、他のトラックを選択することで負荷を分散できるCPU負荷逃しが聞きますが、MIDI鍵盤で演奏のスタート・ストップをコントロールしようとすると当然ながらシングルへの負荷が上がります。
価格
メーカー価格¥17,816
これは主観でしかありませんが、¥¥17,816は安くない印象を受けます。しかし、他に類を見ないオリジナリティの高い製品で使いこなせば新しいムーブメントを作れる予感がする製品でもあります。
既存のもので出来る表現は必ず他の人がやっている可能性が大きいです。新しい音楽性は新しいツールから生まれます。
なので「自分にしかない表現方法」の武器としてPortatronを使うのはアリだと思います。
Portatronはどんな人におすすめ
PluginBoutiqueの人の話では韓国のクリエイターの間で密かに注目されているという話です。つまり今度、K-POPで使われる可能性が出てきています。
そのためK-POPより早くK-POPを作りたいサウンドクリエイターにとって使いこなすしておきたいツールと言えます。
もちろん、サウンドの傾向としてHi-Fiではないので、その質感を生かした、シンセウェイブやLo-FI Chillなど系にも相性は抜群です。
そして、何より、DAWに比べると良い意味で使い勝手が悪いので、勢いで作ってしまいたくなるのがPortatronの大きな魅力といえます。
4トラックで完結を目指すもいいですし、味付けで使うもよし、Portatronはかなりのポテンシャルを秘めたプラグインといます。
最近では有償の簡易版みたいなサンプルセットが無償になっていることも多いのでそういうところから素材を集めるのも楽しいです。ただ、そういう情報にずっと意識を傾けておくのはあまりクリエイティブな時間ではありません。
そういう人におすすめしたいのがLoopCloundです。
LoopCloudは世界中のトップクリエイターが用意したサンプルを一定の月額使用料を支払うことで自由に扱うことが可能です。
まとめ
音質 | |
機能性(オリジナル性) | |
操作性(使いやすさ) | |
安定性(CPU負荷) | |
価格(セールバリュー) | |
総合評価 |
個人的にはカセットの質感がよくテープスピード等の雰囲気もいいのでエフェクトプラグインとして使いたくなるプラグインですが、Portatronはあくまでソフト音源です。
なのでサチュレーション効果を求めるエフェクトプラグインのつもりで購入すると思ったように使えないので注意が必要です。
レイヤーサウンドの1つにPortatronを使うことで質感が異なり音に立体感を作る方法のとしても使えそうな感じがあります。
使い方はかなり幅広く自由なアイディアが試せるプラグインなので、人とは違ったアプローチ方法を模索しているDTMerはぜひ試してほしいです。