AIRMusic TechnologyのXpand!2は今でもどれくらい使えるものなのか?気になる人は多いです。そこでこの記事ではDAW付属の音源と比較しながらその良し悪しを徹底的に検証しています。
なのでしっかりとした Xpand!2の情報が知りたいという人は参考になると思います。
- 音色数が豊富
- 程よく馴染みやすい音質
- 三味線はかなり使える
- 価格崩壊で買い時が不明
- 音色お気に入りボタンがない
- オケヒは実はそんなに多くない
AIR Music Technology Xpand!2 概要
メーカー | AIR Music Technology |
製品名 | Xpand!2 |
特徴 | 19のカテゴリと2500以上のプリセット 4チャンネルマルチティンバー操作 パッチごとに最大4つのステレオ楽器パーツ パートあたり最大64ボイス。 モノラルまたはポリボイスモード スマートノブは直感的なサウンド編集を提供します Easy Edit Knobsは、パッチ全体を一度に制御します 2つのデジタルエフェクトプロセッサー。 50の編集可能なエフェクトタイプ 各パーツの個別のアルペジエーション制御。 複数のサウンド生成エンジン:減算方式シンセシスとFMシンセシス。 トーンホイール。 サンプルの再生。 |
システム | マック macOS 10.8.5-12 macOS Catalina、Big Sur&Monterey互換 M1 Mac対応 Core Duoプロセッサー(Core i5またはi7を推奨) PC Windows 10、8、またはWindows 7 Service Pack 1 (64ビットのみ) 最小デュアルコア2GHz(Intel Core i5またはi7を推奨) 最小RAM1GB(2 GB以上を推奨) フォーマット AUおよびVSTとのみ互換性があります。 Mac:VST64は、Cubase 6(64ビット) およびAbleton Live 9(64ビット)に対応しています。 AU64はLogicX(64ビット)に対応しています。 PC:VST64は、Cubase 6(64ビット) およびAbleton Live 9(64ビット)に対応しています。 ProToolsAAXおよびRTASバージョンは 利用できません。 |
バージョン | v2.2.7.2(2022-10-17) |
認証方式 | iLokアカウント(物理USBキー不要) |
容量 | 1.65GB |
マニュアル | 日本語マニュアルpdf (SSLで保護されていないので自己責任でお願います) |
価格 | ¥16,450(メーカー価格) Xpand!2 貸切プラン$8.34/月の 12 回の支払 |
備考 | 体験版 2週間使用可能 |
Xpand!2はAIR社が開発したマルチ音源でProtoolsに付属していた音源ですが、軽さと使いやすさが好評になり他のDAWでも使えるようになりました。
音質的には多少時代性を感じるものになりましたが、「揃わない音はない」「オケヒとして使える」など時代を超えて使い続けられているマルチ音源です。
手軽さが売りのソフトシンセであって操作性はシンプルでありながらもしっかりと音作りもできるので初めてのソフトシンセ購入の一本としても選ぶ人も多いです。
Xpand! 2に限らずAIR Music TechnologyのmacOS 12 Monterey及び、M1Macへの対応が明確にされていませんでしたが、
M1 Macへの対応について
更新日: 2022 年 7 月 22 日 (金) 午前 11:38に公式サイトにてM1 Macへの対応が提示されています。
これによりすべてのAIR Music Technologyの製品はM1 Macで使用することが可能です。ただ、Native動作かどうかは言及されていないのは注意が必要です。
関連動画
Omnisphere 2より優れているとまで豪語するAve Mcree氏の解説動画です。
シンセウェイブにも使えることを解説している動画です。
リリースしてから数十年は経っているので音色的には決して新しいものではないにも関わらず、使用ユーザーはその使いやすさとポテンシャルの高さを評価しているようです。
Air Xpand!2 レビュー
比較にあたってはLogiciに付属しているマルチ音源「Sampler」を使用します。
なぜならば、購入する目的の多くは「DAW付属のものと比べてどうなのか?」「購入する価値はあるのか?」というところが気になると判断したためです。
音質
Xpand! 2のいくつかの音質を実際聴いて確かめてみます。
ピアノ
音の輪郭やグランドピアノならではのダイナミックな音像という点において「生々しい雰囲気」を持っているのはLogic Yamaha Grand Pianoだと言えます。
なので、ピアノ主体の曲やバラードなどではLogic Sampler の方がしっくりときますが、程よく加工された感じのあるXpand!2の01Natural Grand Pianoはアニソンやアイドルソングの伴奏としてはうまく混ざってくれそうです。
音質を比較するときにありがちなのが「ハイファイ的」(音がくもらっておらず透き通るような印象)な音質を軸にしてしまうことです。
しかし、ジャンルによっては決して「ハイファイ的」な音が常に高く評価されるわけではありません。ヒップホップなCHILL系などはレトロ感が感じる音色が求められます。
そのような視点から見えれば、Xpand!2のピアノの音質は良い意味でデフォルメされた感があるので、そのような演出が望まれる曲ではマッチすると考えます。
エレクトリック・ピアノ
ローズ系の音で比較してみます。
samplerの方が音がはっきりとした傾向にあります。このあたりは最近のDAWの音質の特徴と言える気がしています。
またLogicにはエレクトリック・ピアノ専用音源が搭載されているので、あまりsamplerのエレピは使うことがありません。
シンセとレイヤーされたデジタルピアノ的なキラキラとした音色はsamplerにはあまりなく、逆にAir Xpand!2はそれなりの数が用意されています。
私自身もDTM(当時はハードシンセの時代でしたが…)を始めたころはいかにもリアルなエレピよりシンセとピアノが合わさったシンセピアノ的な音色を好んでよく使っていました。エレピは音が団子になるような印象があり、あまり好きにはなれなかったんです。
スティールギター
samplerの方が軽く乾いた感じがします。一方でXpand!2はしっとりと重い印象、少しアダルトな印象を受けます。
バンド系の中でジャカジャカ弾いているようなニュアンスが欲しい場合はsamplerの方が合いそうです。
しかし、マルチ音源のギターは正直なところ専用のギター音源と比べ、音質、操作性、の差が大きく、マルチ音源のギターでギターパートを打ち込もうとするとかなりの労力と時間を必要とします。しかし、そのかけた時間で出来上がるものは正直なところあまりクオリティの高いものにはなりにくい傾向があります。
それに比べて専用のギター音源も細かい調整は必要ですが、マルチ音源で打ち込み手間と比べると1/10程度の労力で10倍以上のクオリティを出すこともできます。
なのでギターの音色に関してはエレキギターかアコースティックギターはそれぞれ別々になりますが、専用の音源を購入することをおすすめします。
ただ、プロであっても一部にはマルチ音源のギターを使うこともあります。最高の曲を作るためには常にアンテナを広げマルチ音源であっても使える音を探すという気持ちは常に忘れないようにしたいですね。
エレキギター
Xpand!2には歪み系のギターがいくつか用意されています。中にはソロ(単音)で聞く分にはそれなりにいい線を言っている音色もあります。またミュートとロングトーンが1つの音色内に音域で分けられている音色もありますが、カラオケレベルのギターでしかないのが正直な印象です。
他の音色をレイヤーしていけばかっこいいサウンドもできないことはないのですが、プリセットのディストーションギター系に関してはどうしても弱い印象が拭いきれません。
ただこれはどのマルチ音源でも同じと似たようなレベルです。
ちなみにLogicではVintage Stratというプリセットがモジュレーションを上げるとミュートになり下げるとロングトーンになるタイプのプリセットがあります。これはギター音源でも使われている方式の1つです。
余談ですが、モジュレーションを上げると音が揺れてしまいます。それを解除するには
ギターのスライド音の有無について
ギターの定番的な音色として弦をスライドさせるノイジーな音色があります。
Logicのプリセットには通常の音域外にこのようなスライド音が入っているプリセットがありますが、Xpand!2にはそのようなスライド系の音はありません。
Xpand!2はコーラスと空間処理されたクリーンなギターは決してリアルではないものの、弾いていて心地良く思わず曲の中で使ってみたくなるような音があります。
リアルでなくても「ちょっと使ってみたいな!」と思わしてくれる1つでもあるとそれだけでラッキー!と思えるのがマルチ音源との正しい向き合い方かもしれません。(決してすべての音が使える(自分の意図)ものではないのですから)
ベース
ベースもギター同様にスライドや演奏上で生じる独特のノイズがグルーヴに繋がります。特に多くの人は「ドゥーン」といった音域が連続して変更するような音には興味がそそられると思います。
Samplerではいくつかのプリセットにはスライド系の音がギターと同じように通常使う音域ではないところにスライド等の音色が入っているプリセットがありますが、Xpand!2には弦をこするような音や弦に触れたときに生じるミュートノイズはありますが、そのようなスライド音はありません
ただ、これらのスライド音も最初は使ってみて「おー」と思うのですが、スライドの醍醐味は時間とともに音のベンド感(音程の変化)ですから、それをコントロールできないと段々と使用頻度は下がります。そうなるとギター音源と同様にベース音源にも手を出したくなるわけです。
音質の違いについて、Xpand!2は良い意味でノイジーな部分が多くそれが味となっています。
音の太さ等についてはそれなりの印象がありますが、良い意味でのノイジーさと音の粗さがあるので、曲に馴染みやすいのはXpand!2の方だと思っています。
ドラム
samplerに限らずDAW付属の音源ではエレクトリックなドラムからアコースティックなドラム音色にこまることはないと言えるほど充実しています。もしアコースティック系に対してsamplerやXpand!2の質感以上にこだわりたいのであれば、専用のドラム音源を購入する必要が出てくるでしょう。
ではドラムに関してはXpand!2に期待するものはないのか??と思うかもしれませんが、私がXpand!2にドラム音源として面白さを見出したのは、Loop機能でした。Xpand!2に様々なジャyンルに対応した149種類のドラムループがあります。これはDAWのテンポに追従するのでかなり柔軟性が聞くループ機能です。
このドラムループ時代を感じる音色やリズムも多々見受けられますが、「とりあえずスケッチ用にかっこいい感じのドラムループが欲しい」ときに役立ちます。
また、それらをフィルター等で簡単に音質を変化させることも可能、そのまま使うもよし、プロがよく使うリズムレイヤー的な使い方もできます。
K-POPなどは昔のループやボイスをうまくサンプリングして使用しています。案外このXpand!2のループはそういう用途としても使えるレベルです。
シンセ
Xpand!2で最も目を引くのはシンセパッドの多さです。サウンドトラック系などで雰囲気を出したいときにはこれだけあれば困ることはないでしょう。
SamplerにはなくてXpand!2にあるもの、それはアルペジエーターです。Xpand!2のアルペジエーターはいくつかパターンを選べるものの自分でプログラム等はできません。しかし、それなりにツボを抑えたリズムを演奏してくれます。
またマルチアルペジエーターになると4つの音色を使いコードを鳴らすだけでもちょっとした伴奏になります。
Xpand!2はシンセベルも充実しています。JPOPなどで聞かれるキラキラのベルから、グロッケンやチューブラーベル、など一通りのベルは揃えていますし、ベルというカテゴリ以外にもそれらしいキラキラしたベル系の音が見受けられます。アイドル系やアニソン系でシンセベルが欲しいという人には重宝すると思います。
オーケストラヒット
Xpand!2はオケヒ音源で良いじゃない?という巷の声があるほど、オケヒが充実しています。その数は47種類になります。これだけあればオケヒはもう困らない?と思うかもしれませんが、これはあくまで個人的な意見ですが、それだけあっても使えるオケヒは数種類もありません。
ここでいう「使える」というのはしっかりとしたインパクトがあるのは当然ですが、オケヒを鳴らすシーンは曲の中でインパクトをもたせたいところです。その中で埋もれるヒットは使いにくい印象を持ってしまいます。
上記のデモはいくつかのプリセットですが、リバーブが多くかかっていたり、アタック感が乏しいものがあり、そういう意味では数はあっても戦力になりうるかと聞かれたら私が使う意図の中では「ならない」という答えになります。
もしオケヒを充実させたいのであればローランドクラウドの中にあるJVやXVなどを使用することをおすすめします。パンチがあり埋もれにくい「これぞオケヒ!」が多数搭載れています。
エスニック系
私がXpand!2で一番推したいのは地味にこの三味線です。正直マルチ音源の中では一番クオリティが高く、かなり良い線がいっていて仕事でも使い倒しました。
専用の三味線音源には見劣りするものの、バチが当たった瞬間のノイズ感やピッチの不安定さ感が実に三味線らしさを表しています。私も三味線専用音源を買うまではこれで音楽のお仕事をしていたこともあります。
サンプルデモではすべてXpand!2だけで作っています。尺八はフレーズには使えませんが一発だけの雰囲気ならばなんとかなる質感を持っていますし、太鼓も響きすぎず良い意味で使いやすさがあります。
というわけで実はXpand!2は和風音色にも強いマルチ音源なので和風音源を探している人におすすめです。
機能性
4つの音色をABCDのパートにロードすることで1つの音色(プリセット)として使えるのは素早くレイヤーサウンドを作る上でかなり便利な機能です。しかし、それらを個別にマルチアウトすることはできないので、あくまでAir Xpand!2の中で音作りを完結しなければいけません。
エフェクターについて
Xpand!2ならではの特筆すべき機能というわけではありませんが、エフェクターの考え方が少し変わっていて、インサートエフェクト(歪み系)はそのパッチに紐付いている状態です。
使える使えないは別としてリリース当初「サクッと決めて使える音源」にするための方法だったのかもしれません。音作りはDAW側ですることが多いと思うのであまり有効な方法とは思えませんし、
なお、リバーブやモジュレーション系は2系統あり下部のウィンドウで選択すると自動的にFX1と2にアサインされます。
操作性
音作りようのパラメーターは上部のウィンドウにあるものだけなので、音作りの幅は広くありません。しかしそれを補うだけのプリセットがあるのであくまで「プレイバックサンプラー(音色を選ぶだけに特化した音源)」として使うのがよいでしょう。そのように割り切ると非常に使いやすいマルチ音源といえます。
ただ残念なのは2500もあるプリセットにお気に入りボタンがないため音色選びの点では操作性が良くないです。
安定性
CPU負荷はほぼなしと言っても過言ではないほど軽いです。
音色の読み込みも速く、とにかくストレスを感じさせないソフトシンセです。
CPU負荷計測環境
パソコン Macmini2018
CPU Corei7(i7-8700B)6コア HT使用時12コア 3.2GHz/ターボブースト(TB)使用時4.6GHz
メモリ 32GB
システム OS10.15.7 Catalina
Audio/IF APOGEE Symphony Ensemble
バッファー 256
DAW LogicPro10.6.3
48kHz/24bit
再生ストレージ HDD
10年前のマシンでも問題なく動いてたわけなので現在のPC環境ではなんの問題もなく動きます
価格(セール情報)
100円になったり、1000円になったり、無料で配られたりとソフト音源の中で一番価格崩壊が起きたことで有名です。
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Xpand!2の使い方のコツ
シンプルな操作性が売りなのでそれほど使い方に迷うことはないと思いますが、ここではこんな使い方もあるよ!的なお話をさせていただきます。
ドラムループの雰囲気を変更する3つのパラメーター
1つ目はXpand!2のドラムループの雰囲気をちょっとしたことで変更できる方法です。使うのは以下の3つです。
Decay
Release
Filter
これらを使うことでループの中で使われている音色(キックやスネア)などを短くすることができ、新しいループを作り出すことが可能です。
オーディオループだと絶対できない芸当の1つです。これを他のループと組み合わせることでオリジナルのループをつくることができます。
まとめ
音色も最新のソフト音源と比べると目劣りします。しかしちょっとした工夫で新しいループや音色も作れたりするので、大切なのは「これをどうしてやろうか?」という意欲のようにも思います。そういった意味ではXpand!2は私達のクリエイティブマインドを焚きつける魅力があるように思います。
振り返ってみれば、Xpand!2は私が今まで買った音源で一番の使用頻度となり、SERUMやAVENGERを持ちながらも気がつけば手を伸ばしている音源の1つです。