どうもテープエミュレーション大好きなUG(@96bit_music )です。
テープエミュレーションを使えばアナログ特有の暖かさを与えられ楽曲がより魅力的に聞こえる!という言葉に弱く気がつけば有償無償合わせると40以上のテープエミュを試してきました。
そんなにいらんでしょ?
あははは
実機の音を知っているのはごくわずかなので「実機の音を再現!」というテーマではなかなかお話できないのですが、どれもこれも好みな音で作曲のモチベーションに最高のテープサチュレーションを施してくれます。
今回紹介するのはTone Empire TM7000 コスパが高く音が良いメーカーであるTone Empireの最新テープエミュレーションです。
使うとすぐにわかるのですが、気持ちよく重心が下がりますが、それ以上にアタック感の整い方がキレイで個別のトラック及びミックスに使うのもありなテープエミュレーションプラグインです。
- 気品のテープマシンサウンドを再現
- 少ないパラメーターでも好みの音を作れる
- プリセット変更に伴う若干のバグ
Tone Empire TM700 概要
メーカー | Tone Empir |
製品名 | TM700 |
特徴 | ヴィンテージ・アメリカンの 2 トラック 1/4 インチ・テープ・マシンと SM9 テープ・フォーミュレーションをモデリングに使用 Tone Empireの独自の技術AI/Machine Learningによる本物のテープサウンドを再現 かんたんな操作性で最高の音質 |
システム | ウィンドウズ Windows 10 以降 ( 64 ビットのみ) Intel i3 / AMD Ryzen または同等品 VST3、または AAX 64 ビット ホスト 画面解像度:1024×768 2 GB RAM / 300 MB HD マック OSX 10.13 以降 (64 ビットのみ、Intel/Silicon 対応) Intel i3 / AMD Ryzen または同等品 VST3、AU、または AAX 64 ビット ホスト 画面解像度:1024×768 2 GB RAM / 300 MB HD |
バージョン | v1.1.0(2023-05-04) |
認証方式 | シリアル入力 |
認証数 | 3回 |
容量 | 154MB |
マニュアル | 英語版のみ |
価格 | 49ドル(メーカー価格) |
備考 | 体験版あり15日間期間限定 |
TM700はTone Empireというプラグイン開発会社が開発した、アナログテープマシンのウォームなトーンとサチュレーションを再現するテープエミュレータープラグインです。
TM700は、Tone Empire独自のMachine Learning Sampled and Modeled技術を使い、実機のテープマシンからAIによってその音響特性を解析しサンプリングとモデリング技術でよりリアルなテープマシンサウンドを作り上げています。
Tone Empire LVL-01に引き続きのAIはコンボリューションテクノロジーをベースにしたプラグインになります。
技術的には取り込んだ音を最適化するようなものではなく、あくまで取り込み時にAIを使用しているという点を理解しておく必要があります。
SonibleやizotopeのOZONEシリーズのようなボタンひとつで最適な設定を探すというタイプのプラグインではありません。
Tone Empire TM700 レビュー
それでは具体的なレビューをしていきたいと思います。レビュー内ででの帯の色には次のような意味合いがあるので参考にしてください。
- 青帯はメリット
- 赤帯はデメリット
- 緑帯はその中間
音質
4
エレガントな低音と透き通るアタック感が魅力
TM700 Tone Empireの音質の特徴は低域から高域までバランスがとれた質感をもち、ジャンルを選ばずに使用できます。
テープエミュレーションでは低音のふくよかさだけが取り上げられることが多いのですが、このプラグインは、音の厚みとクリアさを増幅させ、アーティストの音楽表現をより鮮明に映し出します。
TM700 Tone Empireでは、アタック感が心地よくミックス時においての馴染みに貢献してくれます。
ドラムにTM700 Tone Empireを試すと次のようになります。まずは何もかけていない状態
続いてプリセットをベースに若干微調整したものがこちら
非常に品のある音がします。
続いてBIASを2に切り替えます。
広域が伸び音像が明るくなります。
BIASを1にしてSPEEDをSにしてみます。
俗にいうローファイ感が出てきますが、汚れ方にすら気品があるように感じます。
ドラムのOHやROOMに使うのもありな音質に感じます。
全体的な音質としては低域がふくよか、高域が伸びるなどの他のテープエミュレーションで得られる一定の効果は感じられます。個人的には派手なGlue効果はありませんが、アタックの馴染み感が心地よいので、自然なまとまり感を得たい場合などに重宝できそうです。
機能性
TAPE INPUTとOUTPUTの使いこなしがポイント
それぞれのパラメーターは音質変化に重要な役割を果たしています。BIASやSPEED,2-TRACKパラメーターなどそれぞれに異なった音質要素を持っているので少ないパラメーターであっても音作りは十分に楽しめます。
しかし個人的に一番挑戦しちたいのはTAPE INPUTとOUTPUTです。これらの調整はTone Empire TM700の鍵と呼べるような存在でその匙加減が絶妙なトーンを作り出します。
どんなエフェクトプラグインであってもハードウェアプリアンプであってもTAPEINPUTとOUTPUTのバランスは優れたエンジニアスキルを必要とします。それほど繊細で重要なポジションです。
Tone Empire TM700の場合はジャンルや楽器に合わせたプリセットが多く用意され絶妙なTAPEINPUTとOUTPUTが設定されています。
しかし、その状態だとOUTPUTの大きさに満足できないケースもあります。
その場合は、出力調整で微調整が可能で、さらに自分のイメージする音に近づけます。
TAPE速度は高速 (15 ips) と低速 (7.5 ips) の 2種類があり。音質的に以下の特徴があります。
プラグインでの表記 | 速度 | 音質特徴 | |
FAST | F | (15 ips) | 明るく高解像度 |
SLOW | S | (7.5 ips) | 暗く低解像度 |
テープ速度と音質の関係について
テープレコーダーは、録音時に音声を磁気テープに記録するため、音声信号を磁気信号に変換します。磁気信号の周波数帯域は、テープの速度によって変化します。つまり、テープが速く回転すると、磁気信号の周波数帯域も広がり、より高音域の情報も記録されます。一方で、テープが遅く回転すると、周波数帯域が狭くなり、高音域の情報が欠落することになります。
なぜテープが高速で回転すると周波数帯域が広がるのか?
テープが高速で回転すると、同じ時間内に、より多くの音声信号が磁気ヘッドを通過することになりその結果、録音される音声信号の最高周波数がより高くなり、より多くの周波数成分が含まれます。このように、テープスピードが速くなると、音声信号の周波数帯域が広がることになります。
テープが遅く回転すると、同じ時間内に通過する音声信号の数が少なくなります。そのため、録音される音声信号の最高周波数が低くなり、周波数帯域が狭くなることになります。
テープスピードは磁気信号の周波数帯域に影響を与えるため、テープレコーダーでの録音や再生において、テープスピードの調整が重要になります。
オーバーサンプリングなし
LVL-01以降オーバーサンプリングは搭載されなくなりました。
オーバーサンプリングはエイリアシングの削減、信号品質の向上、デジタルフィルタリングの精度向上などのメリットがありますが、デメリットとしてCPU負荷が高くなってしまいます。
Tone Empire TM700ではAIによる解析とモデリング技術によって、従来のオーバーサンプリングを必要としない領域に入ったため搭載されなくなったのだと推測できます。
操作性
少ないパラメーターで直感的な音作りが可能
Tone Empire TM700はBIAS 、TAPEINPUT、OUTPUT、テープ速度、入力調整、出力調整、プリセットの項目で音作りを行います。
パラメーター類が少ないため音作りには不向なのでは?と思うかもしれませんが、それぞれのパラメーターの挙動によって変化するサウンドは実に音楽的であり、さじ加減一つで求めていたサウンドに到達できる要素を持っています。
パラメーターのダブルクリックに注意が必要
VSTプラグインの多くはパラメーター上でダブルクリックするとデフォルトの位置に戻ってくれるものがあります。
Tone Empire TM700ではTAPE INPUTとOUTPUTはデフォルトでは相互リンクしている状態(TAPE INPUTを小さくすればOUTPUTは大きくなる)です。
リンクを解除するとそれぞれ独立して動かせるわけですが、解除した状態でOUTPUTをダブルクリックするとmaxの位置になり爆音がでる可能性があるのでその注意が必要です。
ちなみにTAPE INPUTでダブルクリックするとminになります。
プリセットの選択不具合は改善されず
私の環境(Logic10.7.7)の環境では任意のプリセットを選択したとパラメーターを動かし、プリセット変更矢印ボタンでプリセットを変更するとプリセットが次に進まずにClean Tape(プリセットの先頭)に戻ってしまいます。
これはTone Empire TM700以前からあるバグらしきものと私は認識していますが、今回もその動作が見られ半ば仕様レベルと割り切って使っていますが、音質が良いだけにこのあたりの細かい仕様を改善してほしいと願うばかりです。
安定性
CPU負荷はマルチコア分散がうまく働く
オーディオファイルにTone Empire TM700を1つ使用した例です。
ソフトシンセ等をオーディオに書き出さずに使うとシングルコアに負荷が上がる可能性があるので、その場合はCPU負荷逃しを使ってマルチコアを有効に使うことをおすすめします。
音源が刺さっていないトラックを選択することでシングルCPUの負荷がマルチコアに分散されることを「CPU負荷逃し」と私が勝手に命名しています。
CPU負荷を効率化させより多くのプラグインを動作させる方法について詳しく知りたい方は以下の記事が参考になります。
CPU負荷計測環境
パソコン Macmini2018
CPU Corei7(i7-8700B)6コア
HT使用時12コア 3.2GHz/ターボブースト(TB)使用時4.6GHz
メモリ 32GB
システム OS12.6.1 Monterey
Audio/IF Focusrite RED 8PRE
バッファー 256
DAW LogicPro10.7.7
48kHz/24bit
再生ストレージ SSD
価格
49ドル(メーカー価格)
買って後悔しないリーズナブルな価格!
Tone Empireの製品はどれも安くそして音の変化がわかりやすいので触っていて楽しいものばかりです。それでいてクオリティもプロが認めるレベルなので安心して使えます。
今ならリリースセール価格で安くなっているので気になる人は迷わず買いですが、15日間のトライアル版もあるので試したい人もしっかりと試せますよ!
PluginBoutiqueで購入すると月替りプラグインが無料でもらえます。無料と行っても100ドル相当に売っているプラグインがもらえるのでかなりお得です。
9月の無料特典はAudiomodern Loopmix Lite または Mastering The Mix の How To Stem Master A Song eBook の無料版
- Plugin Boutique アカウントが登録されていることを確認してください。アカウントをお持ちでない場合は、 こちらから作成できます。
- 有料製品をバスケットに追加します (この特典は 無料製品には適用されません )。
- 無料ギフトを選択し、チェックアウトを完了してください。
- 取引の全額 に対してバーチャル キャッシュやクーポンを使用し ないでください。 (ただし、100% 未満の量でも問題ありません。)
重要な注意事項:
- このオファーの製品をすでに所有している場合、代替製品を提供することはできません。
- この製品のコピーを別の製品と交換することはできません。
- この製品のコピーを再販することはできません。
- このプロモーションでは、製品の 1 コピーを請求する資格があります。
- 1 回の取引につき 1 つの無料製品のみを請求できますが、複数の無料ギフトの場合は、すべての無料ギフトを取得するまで個別のトランザクションでこのオファーを引き換えることができます。
PluginBoutiqueでの具体的な購入方法はこちらの記事が参考になります!
Tone Empire Reelight PROとの違いについて
同社にはReellightというテープエミュレーションがあります。
機能面で比較すると次のようになります。
名前 | Tone Empire Reelight Pro | Tone Empire TM700 |
エミュレーション方式 | IR(インパルスレスポンス) | AI+モデリング |
テープエミュレーション数 | 6 | 1 |
エミュレーション元について | A)AMPEXATR 700 B)STUDER A812 C)STUDER A80 D)TEAC A2300SD E)AEG TELEFUNKEN M20 F)REVOXB77mk2 | 非公開 |
オーバーサンプリング | あり(2.4.8) | なし |
プリセット | 83 | 41 |
価格 | 49ドル | 49ドル |
Tone Empire Reelight PROはギターアンプやサンプリングリバーブで使用されるIR(インパルススレポンス)で作られているのに対してTM700はAI解析がベースになっています。
テープエミュレーションプラグインを使う上で重要なのは原音再生を目的としていない限りは完全に好みで選ぶべきだと思っています。
多くの人はエミュレーション元となる実機の音は知らない可能性が高いですし、音の善し悪しについては自分が求める音のイメージを持っているかどうかの方が重要です。
Tone Empire Reelight PROは6つのテープデッキを再現できるのが強みですが、低音のふくよかさやコンプレッション感はTone Empire TM700の方が圧倒的で気品すら感じる質感です。
なので、気品のあるサウンドがほしいのであればTTone Empire TM700、音のバリエーションがほしければというTone Empire Reelight PRO選び方も良いと思います。
Tone Empire TM700エミュレーション元について
Tone Empire TM700TM700はどの機種をベースにしたのか明らかにされていませんが、以下の説明からある程度推測してみます。
有名なヴィンテージ・アメリカンの 2 トラック 1/4 インチ・テープ・マシンと SM9 テープ・フォーミュレーションをモデリング
ヴィンテージアメリカンという言葉が示す時代は1970年〜1980年くらいとして、その時代の 2 トラック 1/4 インチ・テープ・マシンと言われると、Ampex ATR-102、MCI JH-110、Studer A80、Otari MTR-10、Scully 280あたりが有名です。
これらはすべて1970年〜80年代にリリースされた 2 トラック 1/4 インチ・テープ・マシンであり、多くのスタジオで使用されヒット作品に使われています。
ただ、プラグイン名に700と書かれているところから推測するとAmpex ATR-700という型番が一番濃厚な気がします。
ただ、ReellightのテープモードのAはAmpex ATR-700を再現しているので、TM700は1つのテープマシンだけではなくいろいろなテープマシンをモデリングしている可能性があります。
またSM9フォーミュレーションというテープ(Reel)ですが、こちらはおそらくSM900シリーズのことではないかと考えら得ます。(SM9というテープ型番は調べた限り出てきませんでした)
フォーミュレーションという言葉の意味は(計画などの)策定,概念化なのでSM900へのリスペクト的な意味合いかもしれません。
Tone Empire TM700に関するFAQ
ここではTone Empire TM700に関するFAQについていくつかまとめてみました。
- Tone Empire TM700のエミュレーション元はなんですか?
-
公式サイトにて公表はされいないので詳細はわかりません。ただ、TM700という名前からAMPEX ATR-700ではないかと考えていますが、ビンテージアメリカンのテープマシンを複合的に再現している可能性もあります。
- Machine Learning Sampled and Modeledとはなんですか?
-
AIによる機械学習をベースにした技術であり、より制度の高い解析を行うことでモデリング(アルゴリズム方式)より実機に近い挙動を再現できるものです。
- TM700 Tone Empireはデモ版がありますか?
-
販売代理店サイト及び公式サイトに15日間の期間限定のトライアル版があります。
まとめ
Tone Empire TM700およびテープエミュレーションプラグインを使えば混濁しているミックスにクリアで立体的な音像を生み出し、パンチや存在感に欠ける音色に対して、その特性を活かして音の厚みや迫力を増すことができます。
その結果、あなたの音楽制作が次のステップに移行し、さらに高みを目指していけるようになるでしょう。
多くのテープエミュレーションプラグインを使ってきましたが、しっかりとした重心と自然なアタック感で得られるTone Empire TM700は今後出番が増えそうな予感です!!