ボーカルの音量差が激しすぎて、トラックの中で浮いてしまう。コンプをかけるとコンプの質感が色濃く出てしまってイメージする音にならない。
そんなときはSonnox Oxford Vocaを使ってみるのが良いかもしれません。
Sonnox Oxford Vocaはオートボリューム機能を搭載しているため、ボーカルの音量差を自然に整えながら、コンプレッサーとサチュレーションで音作りをしていくボーカルに特化したプラグインです。
これ1つでボーカルトラックはプロレベル!とはなりませんが、プロレベルに限りなく近づけてくれるプラグインであり、ボーカルトラックの時短ツールとして効果的です。
この記事では音質や機能性、さらに類似プラグインであるUnited PluginsのAutoformerと比較しながら使いやすさ等を解説していきます。
- オートボリューム機能でボーカルのダイナミクスをスムーズに調性
- 往年のコンプ2つをミックスさせたコンプレッション機能
- 音の色艶だけではなく距離感までも作りだすサチュレーション
- プリセットはない
Sonnox Oxford Voca 概要
メーカー | Sonnox Oxford |
製品名 | Voca |
特徴 | 複雑なヴォーカルの強弱のトリートメントを直感的にコントロール 2種のコンプレッションを搭載 温かな歪みを付加するサチュレーション シビランスを抑えるソフテン搭載 オート・インプット・レベル機能搭載 |
システム | マックOS OS X 10.12以降 (Intel / M1 Apple Silicon対応)(64ビットのみ) フォーマット: AU、AAX ネイティブ、VST3 サポートされているホスト: Pro Tools 11 以降、または Audio Unit (AU) または VST3 プラグインをサポートするデスクトップ アプリケーション。 ウィンドウズ Windows 7以降。 フォーマット: AU、AAX ネイティブ、VST3。 サポートされているホスト: Pro Tools 11 以降、またはVST3 プラグインをサポートするデスクトップ アプリケーショ |
バージョン | v1.0.0(2023-09-04) |
認証方式 | iLokアカウント認証 |
認証数 | 2 |
容量 | 222.2MB |
マニュアル | サイト(Google Chromeで翻訳可能) |
価格 | 123.20ドル→99.00ドル |
備考 | 体験版あり(15日期間限定) |
Sonnox Oxford Vocaは、プロフェッショナルなボーカルプロダクションを短時間で実現するためのプラグインです。
複数のコンプレッサープラグインや複雑なコントロールを必要とせず、直感的なインターフェースで効率的なワークフローを提供します。Vocaは、1176 + LA-2Aなどのクラシックなコンプレッサーに触発され、Sonnox独自のテクノロジーでデジタルの自由を追求しています。
また、高度なサチュレーション機能でリッチで複雑なボーカルを、Softenコントロールでハーシュな音をスムーズに調整できます。Auto-Input Volume機能は、フレーズやセクションを通じて一定の音量を維持し、時間を節約しながらバランスの取れたボーカルを実現します。
このプラグインは、ボーカルの品質を妥協することなく、クリエイティビティを解放し、聴衆を魅了するプロフェッショナルなボーカルを迅速に作成することができます。
Sonnox Oxford Voca レビュー
それでは具体的なレビューをしていきたいと思います。レビュー内ででの帯の色には次のような意味合いがあるので参考にしてください。
- 青帯はメリット
- 赤帯はデメリット
- 緑帯はその中間
音質
4
自由度と音質を確保したコンプレッションとサチュレーション
Sonnox Oxford Vocaの音質はさすがSonnox Oxford というだけあってクリアな印象を持ちました。さらにそれらの音質を後押しする存在として往年の名機を再現コンプレッション、設定次第で距離感まで演出できるクオリティの高いサチュレーション、さらにシビランスを抑えるSoten機能も搭載しています。
では実際にどのような音質なのかを比較してみます。
設定は次の画像の通りです。
Outputを4.8dBほどブーストしています。コンプはそれほど深くかからないようにして、サチュレーションでは明瞭度を保つ程度に歪ませています。
使用前後でのダイナミクスの差は次のg像のようになりました。
瞬間的なアタックは抑えこめていないのがわかります。
では、詳しくは後述しますが、コンプの設定の1つSQUISHを90%近くにして使用したのが次の音声と画像になります。
ちょっとやりすぎな感じもありますが、アタックもしっかりと抑え込めました。
サチュレーションやコンプはX軸とY軸をブレンドする形で使用する形になり、最初は戸惑う部分もあるかもしれませんが、耳で聞いて違和感がない部分となると、画像のような配置で色々と試してみるのが良さそうです。
に関しては考え方としては、次のようになります。
コンプレッション | サチュレーション | |
X軸 | アタック感(SQUISH) | 鮮明の強度(FOCUS)) |
Y軸 | 圧縮度合い(STABILISE) | サチュレーションの強度(SATURATE) |
コンプレッションは1176とLA2Aをベースに制作され、光学式とFET式のハイブリッドサウンドが楽しめます。サチュレーションは整数倍音が心地よいオーソドックスなサチュレーションです。
では実際コンプレッションとサチュレーションのサウンドをサイン波使って調べてみます。
低いサイン波が再生されるので音量に注意してください。
コンプではまったく倍音が発生しません。1176とLA-2Aのハイブリッドなわけですが、ここではあくまで挙動だけをエミュレートしているため、実機の倍音成分は発生しません。
一方でサチュレーションは、歪みすぎない程度の使い方に限定されるので、多少派手にかけても音が崩壊しすぎるようなことはありません。(MAXにすると音痩せはします)
また、距離感を作り上げるとされるFOCUSを弱める(左)にしていくと、倍音と音量が変化しているのが動画からわかります。
個人的にコンプの音は他の楽器でも十分使えるレベルの音質だと感じました。では実際使ってみるとどうなるのか?
ドラムで試してみます。
ここではSoften(ディエッサー)も使ってみました。MAXにすると高域を抑え込みすぎてしまうので、必要用途を見出さない限り、50%程度で使うのが無難な気がしました。
音質面から見てもSonnox Oxford Vocaは使いやすい印象です。今まで、ボーカルトラックのダイナミクスと音色の質感に苦労していた人にとっては時短&クオリティアップにつながるとても魅力的なツールであるといえるでしょう。
機能性
4.5
オートボリュームが便利!
Sonnox Oxford Vocaはインプット(オートボリューム機能)アウトプット、1176とLA-2Aからインスパイアされたコンプ、そして音に密度を与える目的でサチュレーション、シビランス等を整えるSoftenの機能から成り立っているプラグインです。
これらの主な音作りはコンプとサチュレーションの2つの機能によって行いますが、積極的に音を変えるための音作りというよりは、マイクを選んで音作りをするような録音時の質感を調性するような印象があります。(もちろん深くかければ音質は大きく変化します)
また、シビランス(ディエッサー)等も搭載しているので、「耳に心地よいボーカルサウンド」をナチュラルに作りられます。
ですが、やはりいちばん気になるのはオートボリューム機能でしょう。
オートボリュームは公式サイトマニュアルで以下のように説明されています。
自動入力は、緩やかな音量ブーストと減衰を適用してボーカル音量を内部目標レベルに近づけることにより、フレーズや曲のセクション全体で一貫した音量を実現します。「最適化」をクリックすると、ボーカルに合わせてこの内部目標レベルが更新されます。
ボーカルの音量が一定であれば、後で適用するコンプレッションとサチュレーションは、特定の単語をあまり深く掘り下げることなく、曲全体を通して一貫した特徴を持つことになります。自動入力を有効にすると、DAW でプリエフェクトのボリューム オートメーションを手動で描画する必要がなくなり、Voca の出力ボリュームまたは DAW のトラック フェーダーを自動化することで、特定のセクションをより簡単に持ち上げることができます。
プリエフェクトのボリュームオートメーションやクリップゲインを使用してボリュームを平準化する必要はもうありません…
プリエフェクトのボリュームオートメーションやクリップゲインを使用してボリュームを平準化する必要はもうありません…
…代わりに、クリエイティブなセクションを強調表示するフェーダー オートメーションを簡単に実行できるようになります。
引用元:Sonnox Toolbox Help How to use Voca より
ボーカルなどダイナミクスの変更が大きい素材にはオートボリュームは非常にありがたい機能になります。
実際の音は先程の音質の項目で触れていますが、この項目で補足するならば、INPUTのオートボリュームはON/OFFが可能なのでSonnox Oxford Vocaをコンプ、サチュレーション、シビランスのエフェクトプラグインとして使用できます。
オートボリュームはオートメーションでボリュームを細かく描くようなタイプではなく、ある程度の音量差を整えるようなレベルなので、ボーカルのオートメーションを書く作業がこれで解放される!というわけには行きませんが、それでも自然なダイナミクス管理には一役買ってくれるレベルです。
似たようなプラグインでUnited PluginsのAutoformerというものがあります。
オートボリュームやコンプにサチュレーション(Autoformerではマイクプリとして機能)など類似した点が多いプラグインです。
それぞれの機能をON/OFFできるので、オートボリュームだけを使った状態で比較すると次のようになります。
なるべくピーク値を揃えるようにしましたが揃えきれませんでした。
一聴しただけではそこまで大きな違いはないと感じる人もいるかもしれません。上がSonnox Oxford Vocaで下がAutoformerです。両者の効果は設定を追い込むとわりと近いニュアンスにたどり着きます。
ではAutoformerをdefaultで設定すると(マイクプリとコンプはOFF)次のような違いが出てきます。
一番左が何もかけていない状態、中央がSonnox Oxford Voca、右がAutoformerです。
Autoformerはdefaultの設定ですが、音量差を抑え込んでいますが、音的には大げさな印象も受けます。
ですが、てっとり早く音量差を抑え込みたいのであれば、Autoformerはわかりやすいといえます。
AutoformerとSonnox Oxford Vocaを比較した場合大きく異なるのは次の3点です。
- オートボリュームのOptimize、
- レコーディングモード
- Soften機能
Optimize機能はクリックすると、ボーカルに合わせて自動入力ボリュームを微調整できる機能です。
再度マニュアルから引用します。
[最適化] ボタンは、固定ターゲットに合わせて全体のボーカル音量を調整するのではなく、ボーカルに合わせて自動入力のターゲット レベルを調整します。これにより、ミックス内のボーカルのバランスを大きく変えることなく、時間の経過とともに音量の一貫性を向上させることができます。
自動入力のデフォルトのターゲットレベルが適切であるため、ほとんどの場合、「最適化」をクリックする必要はありません。ただし、ボーカルをあまりにも静かに、または大音量で録音した場合、入力ボリュームノブの薄紫色のリングが極端なままになっていることに気づくかもしれません。これは、ターゲットレベルがボーカルにとって不適切であり、自動入力では音量の不一致を均一にすることができないことを意味します。
このような場合、「最適化」ボタンが点滅して、ボーカルに合わせてターゲットレベルを更新するためにクリックする必要があることを示します。
引用元:Sonnox Toolbox Help How to use Voca より
Optimize機能についてはまだ使い切れていない印象もありますが、Plugindoctor 2を使ってダイナミクスを計測すると次のような結果になりました。赤い線がAUTOモードONで紫がOFFの状態です。
オートモードをONにすると、INPUTの入力量(紫になっている部分)が増加しています。これは上記のPlugindoctor 2の画像を見てもわかると思います。
あるポイントでOptimizeボタンをクリックするとガクンと赤い線が下がっているのがわかります。そしてそれ以降はその下がったポイントがダイナミクスの基準になります。
Plugindoctor 2では一定の音であるため、実際のボーカルトラックとは大きくかけ離れているため、あまり参考にはなりませんが、Optimize(最適化)という意味合いを感じとることはできそうです。
レコーディングモードでは、レイテンシーがゼロになるという話ですがDAWのバッファを512に設定している状態で、録音時のレイテンシーがなくなるというものではありません。
ONとOFFの比較を何度か行いましたがそこまでの違いは私にはわかりませんでした。
操作性
3.5
すべてのパラメーターは数値入力が可能
Sonnox Oxford VocaではINPUT,OUTPUTの含むすべてのパラメーターを数値入力できます。
コンプレッションもサチュレーションも自由に動かせるのがメリットですが、あまりに自由度が高いため、数値的な当たりをつけたいという人にはありがたい機能です。
プリセットは無し
Sonnox Oxford Vocaにはプリセット的なものは一切ありません。プリセットで音の傾向を掴みたいという人にはネガティブな要因かもしれませし、自分がお気に入りの設定は残しておきたいと思うかもしれません。
Logic Proの場合は、電源ボタンのとなりのウィンドウ(手動)と書かれている部分をクリックするといくつか項目が表示され、その中に「別名で保存」を選択すると次回からプリセットとして呼び出すことが可能です。
安定性
4
オーディオトラックにSonnox Oxford Vocaを1つだけ挿した状態の負荷です。
それほど気にする必要はない負荷です。
ちなみにさきほど紹介した類似プラグインであるUnited Plugins Autoformerの負荷は次のようになりました。
United Plugins Autoformerの方が圧倒的に負荷は少ないです。
CPU負荷計測環境
パソコン Macmini2018
CPU Corei7(i7-8700B)6コア
HT使用時12コア 3.2GHz/ターボブースト(TB)使用時4.6GHz
メモリ 32GB
システム OS12.6.1 Monterey
Audio/IF Focusrite RED 8PRE
バッファー 256
DAW LogicPro10.7.7
48kHz/24bit
再生ストレージ SSD
価格
製品名 | Voca | Autoformer |
メーカー名 | Sonnox Oxford | United Plugins |
価格 | 123.20ドル→99.00ドル | 117.70ドル |
セール評価 | 4 | 4 |
Sonnox Oxford Vocaの価格は123.20ドルというのは絶妙な価格設定に感じます。機能面での違いは、次の3つなので
- オートボリュームのOptimize、
- レコーディングモード
- Soften機能
オートボリュームについては、Autoformerの方が設定次第ではガッツリとかかって若干不自然な印象もあるので、ガッツリとかからずにナチュラルな効果を求めるのであればSonnox Oxford Vocaだと思います。
またSoftenによるシビランスを抑えてその後のプラグイン処理をより効率化したいのであれば、Sonnox Oxford Vocaの方が便利だと言えます。
また、Optimize機能は使いこなせると有用な機能になる予感があるので、セールス価格を見ても、Autoformerを持っていないのであればオートボリュームプラグインとして持っておいても良いように思います。
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- この製品のコピーを再販することはできません。
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PluginBoutiqueでの具体的な購入方法はこちらの記事が参考になります!
Sonnox Oxford Vocaに関する動画
まとめ
使ってみた印象としては、そこまで大きく音量差を整えるものではなかったです。ただ、Autoformerと比べると自然な印象があり、コンプやサチュレーションも使いやすいレベルでした。
オートモードに関して思ったのは、単体で使うのではなく、コンプにうまく橋渡するための機能として考えるとよいのではないかと感じました。
改めて振り返ると
音質:比較的クリア。音量変化はナチュラルでコンプはFETタイプとオプトタイプのハイブリッド、ドラムに使ってもいい感じがする。サチュレーションは距離感を演出する際に倍音の出力の仕方も変化するのがユニーク
機能性:オートモードに関してはそこまで派手にかからない、
操作性:すべてのパラメーターは数値入力可能。プリセットやA/B比較ボタンはない
安定性:CPU負荷は低い
価格:Autoformerより若干高い(ブランド価格的な意味合い?)セール価格は99ドルなのでその点で比較するとSonnox Oxford Vocaの方がお得に見える。