EDM系の音ってワクワク感をくすぐりますよね。でも自分で作ってみようと思ってもどうしたら良いか変わらず適当にネットで情報集めてたら日が暮れてしまった「明日また頑張ろう」こんな経験してませんか?
Reveal Sound Spireを使えば上記の悩みはすべて解消できます。
今まで何百というソフトシンセを触ってきましたが人間工学に基づいて作られているのでは?と思うほどよくできたインターフェイスでストレスなく音作りが可能です。
Reveal Sound Spireとは
2009年にロシアでミュージシャンとプログラマーによって設立された会社です。ソフトウェアとハードウェアのシンセサイザーを最高の形で融合させソフトシンセのサウンドが素晴らしいことを証明する、それがSpireのコンセプトです。
SPIREはダンスミュージック界隈で多様されるMassive、Serum、Dune2、Sylenth1、と並んで人気があります。
ちなみにSpireの読み方は「スパイア」です。
SPIREの特徴と使い方
Spireは次のシステムで構成されています。
x4オシレーター(マルチモードポリ)最大で同時発音数16
モーフィングオシレーターClassic、Noise、FM、AMSync、SawPWM、HardFM、Vowel
各オシレーターに9のユニゾンボイスモード(オクターブ及びコードモード切り替え可能)
4xマクロ、4xエンベロープ、モーフィングシェイプを備えた4x LFO、
それぞれ2xソースと4xターゲットを備えた15xマトリックススロット
アナログおよびデジタルタイプのフィルタリングを備えた2xマルチモードフィルター
Perfecto、Infecto、Acido、Scorpio、Combo、Shaper
ハイクオリティかつCPU負荷が少ないな8つのエフェクターShaper/Decimator, Phaser/Vowel, Chorus/Flanger, Delay, Reverb
2xステッパー、アルペジエーター
複雑なアルペジオとベースシーケンス、
多彩なリード、爽快なパッド、プル、ドラム、FXを含む900以上のファクトリープリセット
では次に各機能を紹介していきます。
オシレーター
オシレーターは4xマルチモードポリ(最大同時発音数1~16)
オシレーターClassic、Noise、FM、AMSync、SawPWM、HardFM、Vowel
4オシレーター7エンジン49ウェーブテーブル、これらを駆使して音作りをします。
SpireはMASSIVEと似たようなモーフィングオシレーターシステムを採用しています。モーフィングオシレーターというのは2つの波形を任意の量で混ぜ合わせるというものです。
wt mixを左に回すと7つのエンジンにわりあてられている音色(Classic)ならSAW波形で右に回すとWAVEテーブルから選ばれた波形になります(初期設定ではSin波形になっています)
wt mixをEnv等にアサインすることでSAW波形からSIN波形へ時間とともに変化させることが可能です。もっともシンプルなウェーブテーブル変化とも言えます。
CtaA&Bは使用するオシレーターによって変わります。
ctrA | ctrB | |
Classic | ノコギリ波とパルス波間の信号をクロスフェード | パルス幅をコントロール |
Noise | フィルターのカットオフ周波数をコントロール 0~500 の値(ローパスフィルター) 501~1000 の値ではハイパスフィルター | フィルターのレゾナンス(共鳴)をコントロール |
FM | モジュレーションの強さを設定 | モジュレーション周波数を設定 |
AMSync | ノコギリ波とパルス波間の信号をクロスフェード | 変調の周波数を設定 |
SawPWM | 4 種類の異なる SawPW 波形を切り替え | パルス幅をコントロール |
HardFM | 変調の強さを設定 | モジュレータのノートの周波数を設定 |
Vowel | 母音 “A” – “E” – “I” – “O” – “U”モーフィングを調整 | フォルマントの周波数を超低域から超高域の範囲で調整 |
音作りの参考にするのであれば、次のようにオシレーターを選びましょう。
アナログシンセ的な音がほしいならClassic、SawPWM
アクの強いデジタルサウンドがほしいならば、FM、AMSyn,HardFM
機械的なコーラスサウンドがほしいのであればVowel
UNISON&MIX
detuneはボイスのデチューン度を設定します。ここを右に回せばピッチが狂った感じになるので動かせる範囲はせいぜい2時くらいまでと考える方が自然な揺れになります。
densityはデチューンをさらに複雑に揺らしたものといった感じです。SuperSawを作るときは右に回しきるとよりらしくなります。
Unisonモードはボイスの量です。最大で9ボイスまで重ねることができます。9ボイス重ねた音は「Hyper〇〇」と言われています。このときdensityは12時の位置に戻すのが良いです。
Unisonの下にはユニークなモードがあります。
1, 2, 3 Octaves(1,2,3 オクターブ); Major 3rd(長 3 和音); Minor 3rd(短 3 和音); Major 7th(メジャー7th); Dominant
7th(ドミナント 7th); Minor-Major 7th(マイナーメジャー7th); Minor 7th(マイナー7th); Minor 9th(マイナー9th);
Major 9th(メジャー9th); Dominant 9th(ドミナント 9th); Half-Diminished 7th(ハーフディミニッシュ 7th); Diminished7th(ディミニッシュ); Suspended 2(sus2); Suspended 4(sus4); Perfect 5th(完全 5 度); Perfect 4th(完全 4 度)
これはUnisonをどの音程で鳴らすかという他のソフトシンセでは見られない機能です。使い所にセンスが委ねられそうな機能です。
WideはUnisonをどれくらい広げるか。右に回せば大きく広がりますが思った以上にナチュラルな広がり方をするので思い切り広げてしまいたいところです。
panは文字通りオシレーター毎のパンニングを調整できます。
ANAはONにするとアナログシンセのようなフリーランニングになりOFFにするとオシレーターはランダムな発振の仕方になります。
これらはオシレーター1つだけではわかりません。2つのオシレーターを重ねた初めてわかります。
INVはオシレーターの出力を反転させるということですが、効果としてはいまいちわかりにくいパラメーターです。
KEYを有効にするとオシレータは押されたノートに応じたピッチのトラッキングを行います。オフにするとどの音を出してもC2が一緒に発音することになります。
Filter input はオシレーターを1と2に送る量を調整します。左に回しきれば1だけ右に回しきれば2だけ中央で50/50のバランスで1と2に送られます。
フィルター
6つのフィルターモードとカープタイプが用意されています。
Perfecto | アナログとデジタルフィルタータイプの 最高の特性を組み合せたユニークなアルゴリズム | LP4, BP4, HP4, Peak |
Acido | TB-303 サウンドのシミュレートに適している | LP1, LP2,LP3, LP4 |
Infecto | Virus TI シンセサイザーのフィルターサウンドをシミュレート | LP2, BP2, HP2, Notch |
Scorpio | Perfectoとは異なるタイプのアナログデジタルフィルター | RedLP2,RedLP4, BlackLP2, BlackLP4, BlackHP, BlackBP |
Combo | スパイクで構成されたフィルターで | Mono +,Mono -, Stereo +, Stereo – |
Shaper | フィルター + ディストーション/オーバーロード。 | Saturator, Foldback Cut 1, Cut 2 フィルターカットオフ周波数を調整。 カットオフ値が0から500ローパスフィルター 501から1000ではハイパスフィルターとして動 Res 1, Res 2 – 歪の強さを調整 |
どのフィルターも個性がありますが、Virus TlのSuperSawをシミュレートするときはInfectoがはまりそうです。
個人的に大事にしているパラメーターがあります。それはkeytrackです。右に回し切ると音が高くなるたびにフィルターが開き左に回しきると低い音がフィルターが開いて高い音のフィルターが閉じます。
上昇傾向のフレーズであればフレーズの音階が上がるたびにフィルターが開いていくイメージです。2オクターブの範囲で動くアルペジオの場合高域では耳が痛くなる場合がありそういうときは、このkeytrackで高域の場合のみフィルターを閉じる(左に回して調整)という設定にします。
エンベロープ
エンベロープは全部で4つ、通常は1がアンプに割り当てられていますが、オシレーターをそれぞれ個別に割り当てることも可能ですし、フィルターに割り当てることもできます。
触っていて便利だと感じたのはエンベロープのカーブをクリック一つで変更できること、これは音作りの時短につながる素晴らしい機能です。
アンプとの音量としてエンベロープを使う場合もそうですが、フィルターエンベロープとして使う場合はこのカーブ切り替えの効果がよりわかりやすくなるので、フィルターENVを使うときはぜひ使ってもらいたい機能です。
さらにエンベロープにはコピー&ペーストボタンがありすぐにそれぞれのカーブをコピペして使うことができるのもポイントが高いです。
右側のエンベロープにはAPRも搭載されています。
エフェクト
音作りに最低限のエフェクトが搭載されていますが、どのエフェクトも自然で特にリバーブのPlateは付属のリバーブとしてはよくできている印象です。SHAPERのHQは8倍のオーバーサンプリング機能なので必要と感じたらONにしておくのがよいでしょう。
Comp&イコライザーマスターセクション
詳しくは後述しますが、X-compが最強です。音の太さの60%はここで作られていると言ってもよいかもしれません。
システム要求
Mac (64bit only)
- macOS 10.8 or higher required (including macOS 11 Big Sur)
- Modern powerful CPU required
- Audio Units (AU)
PC (32 / 64bit)
- Windows 7/8 or 10 required
- Modern powerful CPU required
- VST
- AAX
Compatible Host Software:
- Steinberg Cubase
- Apple Logic Pro
- PreSonus Studio One
- Reaper, Ableton Live
- Bitwig
- Pro Tools 10 or higher
- Analog & Digital Superiority
Spireアクティベーション方式について
アクティベーションはシリアルコード方式です。煩わしいilokタイプではありません。またアクティベーション回数は
「1人のライセンス所有者に属する各コンピューターで使用」ということで制限はありません。
Spireのメリット
Spireのメリットはやはり「音作り」にあると思います。定番のアナログシンセ方式からウェーブテーブル方式まで幅広く網羅しているのはもちろんのこと、音作りに必要なパラメーターがシンプルにまとまっているのは地味にすごいことです。
4オシレーターの太さは伊達じゃない
Spireの最大の特徴といっても過言ではないのが芯のあるオシレータサウンドを4つ使えることです。それぞれのオシレーターをアナログシンセエンジン(Classic)やFMと使い分けることで太さと繊細さを兼ね備えた存在感のあるサウンドを構築できます。
音に圧倒的な存在感が求められるEDM系でSpireが重宝される理由の一つはこれです。
音が作りやすい
バランス良く配置されたパラメーターは動かせばどういう効果がでるのかはっきりしているので、「このパラメーターは何?」という音作りの迷子になるリスクが軽減されます。
イニシャライズボタンが押しやすい
初期設定(イニシャライズ)(フィルターもADSRも必要最低限の設定)は私がソフトシンセに求めるもっとも重要な部分です。音がまっさらな状態にすることでプリセットの音と比較し各パラメーターの音の変化をより深く知ることができるからです。
ソフトシンセの多くは階層が下(どこかしこのページをめくった先)にありますが、SPIREは画面の上部に設置されています。音作りをする人にとってはこの配置はとてもありがたいことです。
フィルターとENVの連携が便利!
フィルターはタイプが6種類がありそれぞれにカーブの異なったものを数種、選べます。定番のフィルターから変わり種まで用意されているので音作りの幅はかなり広いです。
そしてこのフィルターはENVとの連携が実にシンプルかつ効率的に作られているのがSPIREの魅力のひとつです。
というのもENV用のフィルターが割り当てられているは珍しいことではありませんが、アマウントとベロシティのノブが用意されているおかげで、自分で軽く演奏(2小節程度でも)できる人にとってはフィルターの開閉の気持ちよさを味わえますし、弾けない人でもピアノロール上でコードの特定の音だけをフィルターでこもらせるなどのエディットも簡単にできます。
ん?そんなのオートメーションでフィルター書いてやれば一発じゃないの?
確かにそれもよいでしょう。しかし、強弱によって音の明るさを変えられることで自然の楽器に近い音色変化が味わえます。無機質な音の中に有機的な変化を取り入れることでより存在感があるシンセトラックを作ることができます。
他のソフトシンセはベロシティやアマウントも自分で設定しなければいけないのでこの辺りのスピーディーな音作りへの配慮は素晴らしいというほかありません。
GUIのクオリティが高い
多くのソフトシンセが操作画面であるスキン(GUIグラフィルカルユーザー・インターフェイス)を変更できます。操作画面を切り替えることで気分が改められ創作意欲に貢献できるユーザーにとっては嬉しい機能です。
ちなみに私はNavy Glay themeを好んでよく使います。
公式サイトのプリセットが豊富
ソフトシンセと言えば有償無償に関わらず多くのフリープリセットが有志の手によって作られています。そして人気があるのはやはりフリープリセット!SPIREがすごいのは公式サイトでフリープリセットを公開している点にありますが
正直お金とっても良いのでは??と思うレベルのものばかりですが、ここにある22個のプリセットはすべて無料です。どんな音なのか気になる人ように視聴できる環境も整っているを見ると「フリーだから持っていけよ!」ではなく「こんなフリーあるよ?よかったらもっていってカッコいい曲作ってね!」というメーカーがユーザーとのWIN-WINとの関係を結びたい姿勢が見えて好印象です。
Reveal Soundではオーディオパックが販売されています。ジャンルもしっかりと分けられそれぞれに特化したクオリティの高いオーディオファイルを手に入れられますし、その中で使われているSPIREのプリセットも入っています。
多くのジャンルについて学びたい人にとっては絶好のサウンドですし、何よりも安いです。
負荷が軽い
Spire シンセ 重いという検索ワードがあるほど多くの人がSpireの重さを気にしていますが、私の環境では次のような負荷になっています。
SuperSawと呼ばれるサウンドが7ボイスに対して9ボイスはHyperSawと呼ばれています。SPIREは1つのオシレーターを最大で9ボイスにすることができるので、HyperSawを4オシレーター同時に使うことができます。しかしCPUに高い負荷をかけます。ですが、これはSPIREに限ったことではなくどのソフトシンセでも似たような負荷になります。
でもHyperSawを使いたい!という場合はCPU負荷逃しを使うことで驚くほどCPUの負荷を軽減できます。CPU逃しは再生時に何も刺さっていないトラック(オーディオトラック等)を選択することで負荷が分散できるというものです。
パソコン Macmini2018
CPU Corei7(i7-8700B)6コア HT使用時12コア 3.2GHz/ターボブースト(TB)使用時4.6GHz
メモリ 32GB
システム OS10.14.6 Mojave
Audio/IF APOGEE Symphony Ensemble
バッファー 256
DAW LogicPro10.6.1
48kHz/24bit
再生ストレージ HDD
動画録画に伴いLogicProのCPUがかなり高い負荷になっていますが、実際は25%程度になります。
エフェクター&X-Compのかかりかがヤバい!
Spireの音が良い理由はエフェクトの質にあります。密度の高いリバーブはPlateとしか選べませんが音が埋もれるような印象はありません。またCPU負荷が低いので使いやすいです。
そして個人的に推しなのがX-Compです。これを一度使ってしまったら元には戻れません。バツグンの音圧を得られます。実に体育会系的なマッチョな音です。
使い方としてはほんのちょっと(数値的には2とか4程度)上げるだけでもOKです。これとBoostをあわせて使えばやる気のないベースもリードもプラックも超ご機嫌になります!
SPIREのデメリット
SPIREを使っていて「???」となったこと「これはちょっと使いづらいな」と感じたことをまとめています。
パラメーターを数値入力できない
個人的にこの部分が使えないのはマイナス点です。他のソフトシンセであれば、例えばフィルターノブをクリックするとその部分を数値表示できテンキーを使ったりして数値入力できるのですが、Spireはそういう仕様にはなっていません。
マウス等を使ってパラメーターを動かしていく必要があります。
パラメーターの数値がジャストしにくい
フィルターに限らず、すべてのパラメーターを動かすと6とか8単位で動いてしまいます。ものすごくゆっくり回しても動く数値は2や4単位です。音が良ければ問題はないのですが、この辺りはA型の私には少しストレスです。
微妙なハイレゾ対応
デメリットというほどのことではありませんが、ClassicオシレーターでSaw波形を選びC1を発音させたときに何Hzまで伸びるかをチェックしてみると
21kHzで落ちた後に再び盛り上がり96kHzまで伸びています。これがマイナス面になるかどうかは制作環境次第ですが、SerumやUltra Analog VS3などと比べるとハイレゾ対応は少し弱いと言えてしまいます。
時々挙動が怪しい
これは私の環境だけかもしれません。Logic Pro10.6で動かしていると例えばEnv等のスイッチを推していなくてもその上を通り過ぎるだけで勝手にEnv1が2に切り替わることがあります。そしてたまに落ちます。
しかし、これはSpireに限らずどのソフトシンセでも起こりうる話なのでデメリットというほどのことではありません。しっかりとファイルの保存をしておけば問題はありません。
まとめ
Reveal Sound Spireを触ってみ思ったのはとにかく「音作りにストレスをかけない」ということです。エンベロープのコピペやENV3に最初からフィルターがアサインされていること、それぞれのパラメーターの配置、どれをとってみてもその結論に行き着きます。
音の善し悪しや好みは分かれるでしょう。それはどのシンセでも同じで感情で作らる音色に万能という二文字はありません。
だからこそ自分がこれは良いと思ったものはとことん使い込んでみることでよりそのソフトシンセの良さがわかります。Reveal Sound SPIREもとことん向かい合うことで音の作りの奥深さと楽しさを知ることができる素晴らしいソフトシンセだと思いました。