UG(@96bit_music )です。
楽曲にメロウな雰囲気を与えたい!そんなときに便利なのがローズエレピ音源です。音の温かさやスモーキーな楽曲にはローズ・ピアノがよくはまります。
しかし、ローズ・ピアノと言ってもサンプリング音源からモデリング音源まで様々なタイプがありどれを選ぶべきなのか迷ってしまいますよね?

自分の中のストライクなローズエレピ音源ってどれだろう?
そこで試してほしいのがElectra 88 Vintage Keyboard Studioです。DSPエフェクトでトップを走るUADが作り上げたローズエレピ音源は、サンプリング方式で作られローズ本物の鳴りにこだわり抜いた音源です。
またDTMの打ち込み音源としてだけではなく、エレピ奏者にも嬉しい設定項目があるので、ライブやリアルタイムでレコーディングする場合も存分にその魅力を発揮できます。
- 高品質なサンプリングによってRhodes 88 Suitcase Pianoを再現
- UADが誇るプロエフェクトを搭載
- プレイヤー視点でのカスタマイズが魅力
- 価格が割高な印象がある
299ドル→163.9ドル(5月31日まで)

Electra 88 Vintage Keyboard Studio 概要
メーカー | UAD |
製品名 | Electra 88 Vintage Keyboard Studio |
特徴 | Rhodes 88 Suitcase Pianoのサウンドをハイグレードなサンプリング方式で再現 UADが誇るプロクオリティのエフェクトを装備 演奏者のための演奏最適化ユーティリティを装備 |
システム | (Mac) macOS 10.15 Catalina、11 Big Sur、12 Monterey、または 13 Ventura (Windows) Windows 10 または Windows 11 (64 ビット版) Intel、AMD、または Apple シリコン プロセッサ ソフトウェアをダウンロードし、ネイティブ UAD プラグインを認証するためのインターネット接続 iLok Cloud または iLok USB (第 2 世代以降) を使用した無料の iLok アカウント ネイティブ UAD プラグインを管理するための無料の UA Connect アプリケーション |
バージョン | v1.0.0(2023-05-16) |
認証方式 | UA Connect認証 |
容量 | 8.4GB |
マニュアル | 公式サイトにて(Google Chromeで翻訳可能) |
価格 | 299ドル(メーカー価格) |
備考 | 体験版あり14日間の期間限定 |
Electra 88 Vintage Keyboard Studioは生半可なクオリティでは満足できないエレクトリック・ピアノ奏者および、作編曲家のために作られたエレクトリック・ピアノ音源です。
エフェクトプラグインで定評のあるUADはいままでにMoogのエミュレーションやピアノ音源、バーチャルアナログソフトシンセもリリースし再注目されています。
Electra 88 Vintage Keyboard Studioを使えばクリエイティビティの限界を超え、圧倒的な表現力を得ることができるでしょう。
音楽制作の現場では、時間と予算の制約がつきものです。しかし、この新たなエレクトリック・ピアノ音源は、その点でも優れており繊細でリアルなサウンドを実現し自分の理想とする音色を手にすることが可能です。
Electra 88 Vintage Keyboard Studioレビュー
それでは具体的なレビューをしていきたいと思います。レビュー内ででの帯の色には次のような意味合いがあるので参考にしてください。
- 青帯はメリット
- 赤帯はデメリット
- 緑帯はその中間
音質
4
野性味あふれる太く荒い音
Electra 88 Vintage Keyboard Studioの音は野太く存在感にあふれています。最近のエレピ音源はモデリング系が多かった中でElectra 88 Vintage Keyboard Studioは丁寧にサンプリングした結果その容量は8.4GBと大容量のエレクトリックピアノ音源といえます。
モデリング | サンプリング | |
メリット | 自由なカスタマイズ | 実機の挙動や音質をそのまま再現 |
デメリット | 機械的な印象 | 実機の状態に左右される 設計者の意図が色濃く反映される |
音は良い意味で荒く太さをしっかりと出てくる印象です。加工感のあるローズ・ピアノではなく状態の良い野生意味あふれるローズ・ピアノサウンドを出してくれます。
マルチ音源のプリセットで慣れている人には少しイメージと違うように感じるかもしれませんが、これぞローズ感がある素晴らしいエレクトリック・ピアノです。
まずはLogic Proに付属しているエレピ音源を聞いてください。
Logic Proのエレピ音源はモデリング音源で個人的にかなり品質は高いように思っています。
続いてElectra 88 Vintage Keyboard Studioです。
モデリングは無機質に音が張り付いているのに対してElectra 88 Vintage Keyboard Studioは空気感のある独特の距離感があり、エレピ自体の音質でいえば独特の丸みがあり、まさにRhodes 88 Suitcase Pianoそのままを弾いている印象です。
もう一つデモ聞いてみましょう。
今度はよりフレージングを感じられるエレピでPhaserをかけています。まずはLogic Pro付属のエレピから
続いてElektra 88 Vintage Keysです。
エフェクトかけたときの雰囲気などもElectra 88 Vintage Keyboard Studioの方が存在感があります。また独特の空間を感じられるのもElectra 88 Vintage Keyboard Studioの魅力にように思います。
機能性
4
音作りを加速させるエフェクトパラメーター
Electra 88 Vintage Keyboard Studioでは4つのセクションで音作りを行います。
メイン画面となるKEYBORD、ストンプペダルを選択できるPEDALS、スピーカーやアンプによる音作りが可能なAMPIFIRE、プロのエフェクトがランチボックス的にまとまったSTUDIO
これらがElectra 88 Vintage Keyboard Studioの音作りのためのセクションです。
KEYBORD | PEDALS | |
![]() | ![]() | |
AMPLIFIRE | STUDIO | |
![]() | ![]() |
どの画面セクションもシームレスに移動でき、音作りへのパッションを減衰させる暇なく理想の音色へのアプローチが可能なGUIは地味ながらによく考えられている印象です。
最適の音色を演奏できる専用パラメーター
私がElectra 88 Vintage Keyboard Studioで素晴らしいと思ったのがプレイヤーのためのカスタマイズができる点です。
OUTPUTの横にある鍵マークをクリックするとチューニングやペダルノイズのタイプや音量などが調整可能です。

そして中央にあるベロシティモードでは弾き手の強弱をカスタマイズできます。エレピは独特の打鍵感がありそれが音色に強く影響されます。DAWで使用する鍵盤に最適化することで、Electra 88 Vintage Keyboard Studioの持っているポテンシャルを最大限に発揮できるようになります。
また個人的にありがたいのは、KEYBORDとかかれた項目のNOISE FLOORが初期設定でゼロになっていることです。ぼうW会社のエフェクトなどはdefaultでこれが上がっている状態のため「不要なノイズが混入する」ストレスが発生します。Electra 88 Vintage Keyboard Studioではそれがないのがいいです。
操作性
4
テンションが上がるGUI(グラフィカルユーザーインターフェイス
UADの製品製品はElectra 88 Vintage Keyboard Studioに限らずGUIに力を入れていて、細かなグラフィック上の演出が音作りを楽しいものにしてくれます。
それぞれのイラストをクリックすればそれらの機能にダイレクトにアクセスできます

これらはそこまで目新しいものではありません。メイン画面と思われるKEYBORD上でも例えばレズリースピーカーをクリックするとAMPLIFIRE画面に切り替わりますし、ランチボックス的なエフェクトをイラストをクリックすればSTUDIOモードに切り替わります。
このようなシームレスなモードの切替はストレスなく音作りに没頭できる要因の一つなのでありがたいですね。


個人的にはレズリーが回ってるのが楽しい
豊富なプリセットから好みの音色を選ぶ
フェイバリットモードがあるので、好みのプリセットをチェックしてかんたんに呼び出せるのがいいですし、私としては大歓迎の初期状態の「default」プリセットも入っているのがありがたいです。
音が出るまでに時間かかる
近年のソフトシンセ(サンプリング音源)は立ち上げと同時に音色がでるイメージですがElectra 88 Vintage Keyboard Studioを私の環境Macmini2018 Corei7(i7-8700B)3.2GHz6コア メモリ 32GBで音源はSSD(2.5インチ速度550MB)の環境で立ち上げるとElectra 88 Vintage Keyboard Studioを立ち上げてから音がでるまでに10秒近くかかります。
これは同社のピアノ音源 UAD RAVEL GRAND PIANOも同じだったのでサンプリングの読み込みには改善の余地が見られます。しかし、プロジェクトを立ち上げている中で一度音源を外し、再度読み込ませるときにはキャッシュが聞いているので一度目の半分くらいの時間で立ち上がります。
エフェクトチェイン(順番は変更できない)
Electra 88 Vintage Keyboard Studioには同社のエフェクトプラグインが導入されておりそのクオリティの高さは音作りに大きく反映されます。

ランチボックス的な順番で配置されているエフェクトの信号は左から右(イコライザーからリバーブ)という流れであり順番等を変更するようにはできていません。
基本的な間違いのない音作りができる配置ですが、さらに音作りにこだわりたい場合はDAW上でのエフェクトチェイン(プラグインエフェクトをかける順番)を考えたほうがよい印象です。
ただ、さすがというかエフェクトの音の良さは素晴らしいものがあるので、この中で完結する方がよい気がしています。

安定性
CPU負荷は高め
Electra 88 Vintage Keyboard StudioのCPU負荷は平均で25〜30%以上を消費するのでCPU負荷がギリギリの環境では扱いに注意が必要です。
私はUADのDSPを所持していないのでわからないのですが、ひょっとしてDSPをベースに使うものなのかもしれません。
CPUの負荷は使用するエフェクトによって大きく異なります。一番負荷が大きいのはロータリーキャビネットをONにした状態のときです。非力なCPUではちょっと使うのが難しいレベルです。


一番軽いのはエレピのダイレクト・ボックスボタンをONにした状態です。


この他にもペダルセクションにあるフィルタープラグインを使うと負荷が上がるなどの傾向が見られました。
使用しない段階ではできるだけCPU負荷逃しをするのがおすすめです。

音源が刺さっていないトラックを選択することでシングルCPUの負荷がマルチコアに分散されることを「CPU負荷逃し」と私が勝手に命名しています。



CPU負荷を効率化させより多くのプラグインを動作させる方法について詳しく知りたい方は以下の記事が参考になります。
CPU負荷計測環境
パソコン Macmini2018
CPU Corei7(i7-8700B)6コア
HT使用時12コア 3.2GHz/ターボブースト(TB)使用時4.6GHz
メモリ 32GB
システム OS12.6.1 Monterey
Audio/IF Focusrite RED 8PRE
バッファー 256
DAW LogicPro10.7.7
48kHz/24bit
再生ストレージ SSD
価格
本物のメーカーが本物を極めに言った究極の高級エレクトリック・ピアノ音源としては高くない!
価格における価値は人それぞれですが、やはり力があるメーカーが作ったエレピ音源は品質が違います。当然そこに価値を与えるためにもメーカーが強気な価格を提示することに理解ができます。
Electra 88 Vintage Keyboard Studioの価格はメーカー価格が299ドルとかなり高いです。
本家であるRhodesと比較しても高いというのはかなり強気です。
Rhodes V8 Virtual Instrument | Electra 88 Vintage Keyboard Studio | |
199ドル(プロバージョンは329ドル) | 299ドル→163.9ドル(5月31日まで) | |
容量 | 約 60 GB ロスレス後22GB | 8.4GB |
サンプリングフォーマットや容量の側面から見るとRhodesの方がスペック的には上に見えますが、聞いた感じ、というか弾いた心地よさはElectra 88 Vintage Keyboard Studioの方が気持ち良い感じがします。
また、Rhodesはエレピ単体で60GB、ロスレス後でも22GBというのはストレージに余裕がないと厳しいと感じる人もいるでしょう。
PluginBoutiqueで購入すると月替りプラグインが無料でもらえます。無料と行っても100ドル相当に売っているプラグインがもらえるのでかなりお得です。
5月の無料特典はなんとMoogのCluster Flux

MF-108 Cluster Fluxは、単純なコーラス/フランジャー・ペダルを超える、究極のタイム・モジュレーション・ペダルです。緻密な揺らぎから完全なる狂気まで、Cluster Fluxは時間と空間の法則を無視します。この限定バージョンの100%アナログ構成のMoogerfoogerの特長は、振動と音色がにじみ出るディレイ・ラインをベースとしたBucket Brigade Chipを使用していることです。Cluster Fluxは全てのMoogerfooger同様、ずっと長く使えるように作られています。
PluginBoutiqueでの具体的な購入方法はこちらの記事が参考になります!

Rhodes 88 Suitcase Pianoについて
Electra 88 Vintage Keyboard StudioはRhodes 88 Suitcase Pianoを元に制作されています。
Rhodes 88 Suitcase Pianoは名前に「Fender」と名前が付くかどうかで製造された年が異なります
Fender Rhodes Mark I | 1969-1975年 |
Rhodes Mark I Piano | 1975-1979年 |
75年以降にローズがフェンダーより独立したためにFenderの文字が消えただけで基本中身は同じと言われていますが、ファンの間では72年の製造されたモデルの音が良いという話もあります。
Electra 88 Vintage Keyboard Studioはどちらのモデルからサンプリングしたのかはわかりませんが、下記のデモを聴く限り、ローズらしい丸くふくよかで愛らしい音色をしっかりと再現しているのは間違いなさそうです。
ちなみに日本で一番最初にローズ・ピアノを輸入した人は山下達郎さんです
Rhodesを使った名曲
スティービー・ワンダーの名曲とも言われるサンシャイン、甘みのあるRhodesサウンドを楽しめる一曲です。
名曲中の名曲!優しく奏でられるフレーズはこれぞエレピ!という印象があります。
Electra 88 Vintage Keyboard Studioに関するFAQ
- Electra 88 Vintage Keyboard Studioはサンプリング音源ですか?モデリング音源ですか?
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サンプリング音源です。容量は8.4GBなので、ストレージの空き容量に容量に注意してください。
- Electra 88 Vintage Keyboard Studioのインストールの方法は?
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公式サイトにてUA Connectというアプリを使ってインストールします。
- Electra 88 Vintage Keyboard Studioのマニュアルはありますか?
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公式サイトにつながるリンクがアプリ内にあります。公式サイトのマニュアルはChrome翻訳プラグインで日本語化できます。
まとめ
打ち込み音源としても優秀な音源であることに間違いはありませんが、その機能性から察するに演奏者のための音源のようにも思えます。実際弾いてみた感じでは、鍵盤との相性もありますがとても気持ちよく、Rhodesサウンドの気持ちよさに浸れました。
最近の音源でここまでサンプリングに力をいれた音源が少なかったのはエレピの発音方式はモデリングが得意とするためわざわざ時間とクオリティコントロールが難しいサンプリングという技術を使う必要性を見いだせなかったためだと思います。
しかし、ここで天下のUADがサンプリングでエレピ音源をリリースし実際のところそのクオリティは多くのエレピユーザーにとって驚きをもって迎え入れられそうな予感がします。
